極道恋浪漫

一園木蓮

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極道恋浪漫 第三章

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ひょう――!」

イェンさん。鐘崎かねさきの兄様、紫月ズィユエ兄様も! お邪魔いたします。あの、真田さなださんがこれを兄様たちにと」
 手にしていた重箱を開ければ、そこには焼き立てのパンケーキが詰められていて、甘い物好きの紫月ズィユエは思わず感嘆の声を上げてしまった。
「うわーお! めっちゃ美味そう!」
「はい、きっと紫月ズィユエ兄様がいらしてるはずだからと真田さなださんが」
 イェン遼二りょうじ邸に向かった直後に真田さなだが用意してくれたそうだ。きっと真田さなだには結婚式の翌日だから遼二りょうじらも休みでゆっくりとしていて、紫月ズィユエが遊びに来ているだろうことも察していたのかも知れない。さすがは年の功か。
 イェンは突然のひょうのお出ましに嬉しそうでいて、つい今し方までの憎まれ口もすっかりとなりを潜めたわけか、ご機嫌そのものだ。ついでといってはナンだが、この際ちょっと仕返しでもしてやろうと思いついたようだ。
「ところで――カネ!」
 突如姿勢を正して、手にしていた扇子でピシッとテーブルを叩いて気合いの入った態度を見せる。
「あ?」
 遼二りょうじはキョトンとし、紫月ズィユエも然りだ。
「ウ、ウォッホン! 紫月ズィユエもだ。二人とも、他人ひとの世話も結構なことだが、てめえらもそろそろ身を固めてはどうだ?」
 互いに好きなヤツはいねえのか? と、反撃開始だ。
「身を固めるったって……なぁ。俺ァまだそういう相手も……」
 急にモジモジとし出した遼二りょうじに、
「どうだ。この際、てめえら二人一緒になったらいいんじゃねえか?」
 遼二りょうじ紫月ズィユエを交互に見やりながら人の悪い笑みを浮かべてみせる。
「や……イェン、ちょい待ち……俺ァ……」
「なんだ。てめえらなら似合いだと思うがな」
 未だ紫月ズィユエに告白すらできないでいる遼二りょうじはアタフタと大慌てで視線を泳がせている。
 ――と、そこで″純朴は罪″を地でいくひょうがひと言ポツリ――。
鐘崎かねさきの兄様と紫月ズィユエ兄様ならとてもお似合いだと思います」
 ニコニコと天真爛漫な笑顔でパンケーキを切り分けている様は、まさに罪か――。

「あ……そう?」

 遼二りょうじはもう挙動不審というくらいに口をパクパクさせながらも、その頬を真っ赤に染めている。そんな様子に紫月ズィユエの方も満更ではないのか、照れたように視線を泳がせる。慌てる二人を目の前にしてイェンはご機嫌そのものだ。

(うむ、ひょう。よく言った!)

 イェンは心の中でそう叫びながらも、これで昨夜の仕返しができたとばかりに溜飲を下げたようだ。ニヤニヤとしながらも二人の慌てる様子をお茶けに、ご満悦のティータイムを楽しんだ、そんな午後のひと時だった。

 それはともかく、昨夜の初夜にイェンが愛するひょうからどんなことをしてもらったのか――それは新婚夫夫ふうふ二人の秘密である。

式明けて翌日の初々しい二人 - おしまい -
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