極道恋浪漫

一園木蓮

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極道恋浪漫 第三章

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「そうだ、ひょう君! そういうことなら俺よかもっといい先生がいるぜ!」
「――! 本当ですか? 兄様よりもすごい先生が?」
「うんうん、いるいる! りょうだ」
りょう……? えっと、鐘崎かねさきの兄様のことですか?」
「うん、そう! りょうなら皇帝様の親友だし、案外皇帝様の好きな体位とか感じるポイントとか知ってかも知れねえべ! なんせあの二人は昔っからの大親友だしさ。野郎同士でエロ話くれえは当然したことあるべよ!」
 男同士のことだ。長い付き合いの中では下ネタを話題にしたことくらいあるはず――と、紫月ズィユエは期待顔だ。
「待ってろ、今りょうを呼んでやっから! そんでもって詳しく聞けばいいわ」
「はぁ、鐘崎かねさきの兄様にまでお手間を取らせて恐縮ではありますが……でも紫月ズィユエ兄様とお二人にご教示いただけるのでしたら鬼に金棒です! 是非とも詳しくレクチャーをお願いいたします!」
 ひょうは大喜びでやる気満々のようだ。
「だべ? 俺もちっと興味あるしさ! やっぱ男遊郭にいる以上、知識は少しでも多いに越したことはねえしな」
 男遊郭の頭を張っているわりには男性相手に抱くことも抱かれることも経験の無い――いわば耳年増を地でいく紫月ズィユエは、ごくごく一般的な興味からか乗り気になっている。

 悪気のなく――というよりも案外真面目な興味に浮き足立つ二人に、遼二りょうじが呆れ返ってうなだれることになったのは、それから半刻後のこと。紫月ズィユエからの呼び出しとあって喜び勇んで出掛けて来たものの、蓋を開けてみればまさか初夜のレクチャーをしてくれ――とは、さすがに何をどう教えればいいのだと、鯉のように口をパクパクとさせてしまうわけだった。もちろん後にこの話を聞かされることになるイェンとて同様に違いない。

(うーむむむ……純朴ってのは案外罪だったりしてな)

 とはいえ、頼られて何も役に立たないでは男が廃るというものだ。とにかくは頑張って手解きすることになったのだが――。頭を抱えた遼二りょうじがどんなレクチャーをしたのかは紫月ズィユエひょう以外誰も知らない。

(っていうか――誤解されるような締め括りにすんなってのよ! レクチャーったって、俺ァなにも実践で教えたわけじゃねえからな? あくまで――イェンの――ってよりも野郎なら誰でもぜってー嬉しいだろうなっていうアレとかソレとかを″口頭″で教鞭しただけだから!)

 そんな言い訳を脳裏に巡らせつつ、遼二りょうじがトボトボと紫月ズィユエ邸を後にしたのはその日の日暮れだったそうな。
 とにもかくにもイェンひょうの二人にとって美しい思い出となる初夜を迎えられるよう祈る遼二りょうじ紫月ズィユエであった。

三日夜餅 - おしまい -

※次、初夜の翌日の小話。焔、冰、遼二、紫月のコメディふうほのぼの話です。
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