極道恋浪漫

一園木蓮

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極道恋浪漫 第三章

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 これまでは言葉に出しての意思表示を聞いたことすらなかったわけだが、自分が想うのと同じようにひょうもまた自分に好意を寄せていてくれたのだということがはっきりと分かったからだ。やはり勇気を出して伝えて良かったと、心からそう思う。
 そんな気持ちのままコツリと額を合わせ、クイと色白の顎先に手を添えて――互いの顔がぼやけるくらいに近付いていく瞳を見つめ合う。
イェン……さ……ん」
「ん――」
 ほんのわずか、触れるだけの口づけ――それは出逢ってから初めて交わす、魅かれる者同士としての愛情の証だった。
ひょう――誓いのキスだ。この俺の持てるすべてで生涯大切にすると誓う。共に――お前とウォンの爺さんと三人、本当の家族となって睦まじく暮らしてゆこうぞ」
「イ……あの……そのイェ、イェンさん、は、はは……はい! あの……僕などがそのようにおっしゃっていただけるなど……とても信じられないくらいで夢を見ているようで……その……」
 初めての口づけに挙動不審というくらい真っ赤に染まった頬が熟れて落ちそうだ。イェンにとって、このうぶ過ぎる様も可愛くて愛しくてどうしようもないのだった。
「夢などではない! 俺の方こそ夢のようなのだ」
「イ、イェンさん……ありがとう……ございます。あの……イェンさんのお足を引っ張らないように心掛けながらついて参ります。至らないところだらけのこんな僕ですが――どうぞよろしくお願いいたします!」
 ガバリと深々、頭を下げてしどろもどろでいる。今し方の突然の口づけでそうなっている様子も可愛くて仕方がない。
ひょうー! もちろんだ! 俺の方こそよろしく頼む!」
 イェンはもう少年に戻ったようにしてはしゃぎながら、目の前の華奢な身体をヒョイと軽々抱き上げては、天高く彼を持ち上げて満面の笑みを見せた。抑え切れない高揚の行き場をどうしたものかというくらいに喜び勇んで、ひょうを抱き上げたまま部屋中をクルクルと踊るように回っては飛び跳ねる勢いで喜びをあらわにする。
「そうだ、ひょう! 真田さなだやカネにも報告せねばならんな!」
 共に参ろう! トンと抱き上げていた身体を下ろすと、早速にその腕を引っ張っては真田さなだの元へと飛んで行った。
真田さなだ! 真田さなだー!」
「イ、イェンさん……! ま……待っ……」
 ひょうはもう引きずられる勢いながらも、イェンがこんなにも喜んでくれることが信じられないくらいに嬉しくて、早足で踏む床の一歩一歩さえ夢か現実かというくらい。まるで雲の上を歩いているような感覚だった。

 その後、遼二りょうじにも邸に来てもらい、ひょうと生涯を共にできることになったことを報告した。遼二りょうじはやっとえたか――と、我がことのように喜んでくれた。
イェン紫月ズィユエにも伝えていいか?」
「もちろんだ! 紫月ズィユエと親父さんの飛燕ひえん殿にも報告したい!」
「じゃあそっちは俺から伝えよう。その前にお前さんは親父さんたちに報告せにゃならんだろうが」
「そうだった! 親父とお継母ふくろ、兄貴夫婦にも言わにゃならんかったな!」
 てんやわんやと喜ぶイェンはすっかり少年に戻ったような高揚ぶりだ。彼がどれほど嬉しいのか、その様を見ているだけで遼二りょうじ真田さなだも思わず笑みがこぼれてしまうのだった。
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