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極道恋浪漫 第三章
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とにかくも、駆飛の情報から決行は今日の放課後、冰が学園を出たタイミングで襲われることが判明している。既に猶予はない。
「焔、いかにお前さんが出向くといっても、狙われると分かっていて冰を車に乗せるのは危険だ。身代わりを用意すべきだろう」
遼二は駆飛を冰に化けさせて、当の冰は裏手から密かに連れ出そうと提案した。駆飛の体格は冰と遜色ないし、年齢的にも一番近い。学生服は冰の洗い替えを着せればいいだろう。仮に予期せぬトラブルが発生しても、駆飛ならば尋常ならぬ身の軽さで対処することが可能だというのだ。
「すまねえ、カネ、小川。恩にきる――!」
もうすぐ授業が終わる。李と劉を筆頭に幾人かの側近たちが冰を教室で保護し、身代わりの駆飛が昇降口から出て来て迎えの車に乗るという作戦でいくことに決まった。
◇ ◇ ◇
ホテル・エドモンド、正面玄関――。
「焔老板、ロナルドが動きました。たった今、女共々チェックアウトを済ませ、駐車場へ向かっています。女はツバの広い帽子とサングラスを着けていて、顔ははっきりしません。我々はこのまま追跡を続けます」
ホテルに張り付いていた見張りから連絡が入る。焔と遼二は冰の学園が見渡せる喫茶ルーム前に車を停めて、トランシーバーからの報告を受け取った。
「カネ、あとのことを頼んだぞ。俺はロナルドを押さえる」
「分かった。こっちは万全だ。女の車は俺が必ず押さえるから心配するな」
「すまない。頼む――」
ロナルドを拾うことになっている女の車には既に遼二の部下である清水と橘、徳永が焔の側近たちと合流して張り付いてくれている。焔は杏と胡と共にロナルドを拘束、李らは冰を護衛、遼二らは女を足留めるという万全の体制が敷かれた。
◇ ◇ ◇
学園前――。
「老板、ロナルドが女の車を降りて徒歩で杏たちの車に向かいました」
「了解した」
焔もまた、車を降りてロナルドを迎え打つ為、動き出した。
李の手配によって冰のクラスメイトらにも協力してもらい、身代わりとして化けた駆飛を『雪吹』と呼んでくれるように頼んだ。
駆飛と共にクラスメイトらの一団が校門に差し掛かる。
「じゃあな、雪吹!」
「また明日なー」
「うん、バイバーイ!」
杏が後部座席を開けて冰に扮した駆飛を出迎える。
「冰さん、お帰りなさいませ」
「杏さん、いつもすみません。お世話になります」
後部座席のドアを閉め、杏が自らも助手席に乗り込もうとしたタイミングでロナルドが動いた。
さすがに殺し屋というだけあってか、その動きには無駄がなく、手にしていた催眠剤を車内へと投げ込もうとした時だった。どこから現れたのか、気配すら感じさせない焔によって殺し屋ロナルドは身体の急所に拳を打ち込まれて身悶えた。
「焔、いかにお前さんが出向くといっても、狙われると分かっていて冰を車に乗せるのは危険だ。身代わりを用意すべきだろう」
遼二は駆飛を冰に化けさせて、当の冰は裏手から密かに連れ出そうと提案した。駆飛の体格は冰と遜色ないし、年齢的にも一番近い。学生服は冰の洗い替えを着せればいいだろう。仮に予期せぬトラブルが発生しても、駆飛ならば尋常ならぬ身の軽さで対処することが可能だというのだ。
「すまねえ、カネ、小川。恩にきる――!」
もうすぐ授業が終わる。李と劉を筆頭に幾人かの側近たちが冰を教室で保護し、身代わりの駆飛が昇降口から出て来て迎えの車に乗るという作戦でいくことに決まった。
◇ ◇ ◇
ホテル・エドモンド、正面玄関――。
「焔老板、ロナルドが動きました。たった今、女共々チェックアウトを済ませ、駐車場へ向かっています。女はツバの広い帽子とサングラスを着けていて、顔ははっきりしません。我々はこのまま追跡を続けます」
ホテルに張り付いていた見張りから連絡が入る。焔と遼二は冰の学園が見渡せる喫茶ルーム前に車を停めて、トランシーバーからの報告を受け取った。
「カネ、あとのことを頼んだぞ。俺はロナルドを押さえる」
「分かった。こっちは万全だ。女の車は俺が必ず押さえるから心配するな」
「すまない。頼む――」
ロナルドを拾うことになっている女の車には既に遼二の部下である清水と橘、徳永が焔の側近たちと合流して張り付いてくれている。焔は杏と胡と共にロナルドを拘束、李らは冰を護衛、遼二らは女を足留めるという万全の体制が敷かれた。
◇ ◇ ◇
学園前――。
「老板、ロナルドが女の車を降りて徒歩で杏たちの車に向かいました」
「了解した」
焔もまた、車を降りてロナルドを迎え打つ為、動き出した。
李の手配によって冰のクラスメイトらにも協力してもらい、身代わりとして化けた駆飛を『雪吹』と呼んでくれるように頼んだ。
駆飛と共にクラスメイトらの一団が校門に差し掛かる。
「じゃあな、雪吹!」
「また明日なー」
「うん、バイバーイ!」
杏が後部座席を開けて冰に扮した駆飛を出迎える。
「冰さん、お帰りなさいませ」
「杏さん、いつもすみません。お世話になります」
後部座席のドアを閉め、杏が自らも助手席に乗り込もうとしたタイミングでロナルドが動いた。
さすがに殺し屋というだけあってか、その動きには無駄がなく、手にしていた催眠剤を車内へと投げ込もうとした時だった。どこから現れたのか、気配すら感じさせない焔によって殺し屋ロナルドは身体の急所に拳を打ち込まれて身悶えた。
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