極道恋浪漫

一園木蓮

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極道恋浪漫 第二章

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焔老板イェンラァオバン、失礼いたします。僭越ながら私どももリーさんの意見と同様です」
鄧海デェン ハァイ鄧浩デェン ハァオ――!」
老板ラァオバン、実は私どももリーさんに頼まれて少々彼女にについて調査をさせていただきました。彼女は話して分かり合える人間ではない――というのが医者としての見解です」
「どういうことだ――?」
「言葉が悪いやも知れませんが、彼女には精神的な面で治療が必要と思われます」
「それは――病という意味か?」
「残念ながらその通りかと。彼女は自分の欲しいものがあれば、それが決して手に入らないと分かってはいても諦めるという感情が働かない――というよりも、諦める必要がないと思い込む人間です。かつての自殺未遂の際もそうです。彼女が好意を寄せた男性教師には奥方がいらしたにもかかわらず自分のものにしようとしています」
「つまり、自分が正義であって、それが叶わない場合は他人が悪であると本気で思い込み、攻撃の対象と見なし、それを排除することこそが彼女の中での正義となる。まともな成人としての感情が欠落しているということです」
 デェン兄弟が交互にそう言った。
老板ラァオバンがお会いになれば、十中八九厄介な方向に事態が動くと断言できます。ここはリーさんの言うように決してかかわらず、防御を手厚くする方がお互いに傷が広がらずに済むでしょう」
「ふむ、そうか。では早速に冰の警護を手配しよう。シンフーでどうだろう」
「適任と存じます。シンフーも体術に長けておりますし、信頼がおける二人です。彼らも喜んでお役目を全うしてくれるでしょう」
「では俺が二人に頼むとしよう」
 冰の送り迎えには車を使い、シンフーに護衛を任せることで決まった。
「むろん、俺の手が空いている時は俺自身で冰を迎えに行く」
 シンフーには補助として助力してもらいたいと言うイェンの言葉からは、冰に対する思いの深さが窺える。
「それでイェン、女の方はどうする。このまま知らぬ存ぜぬで様子を見るしかないか?」
 遼二が問うと、そちらの方も心配はないでしょうとリーは言った。
「女のことは放り置いたままでよろしいかと。こちらが動かずとも数日の内に彼女はこの地下街を去らざるを得ないかと思われます。リリーさんが彼女に都合よく使われたことは既に噂として近隣のクラブ内に伝わりつつあります。白蘭バイランという女を抱えているクラブのオーナーとて、立場上黙って見過ごすわけにはいかないでしょうから」
 要は黙っていても内輪で制裁が下されるだろうということだ。
「そこに我々が首を突っ込めば、話はより厄介になります。このまま静観がご賢明かと」
 なるほど、さすがは精鋭のリーだ。既にこの後のことまで見通しているというわけだ。イェンも遼二も自分たちの陰で迅速に動いてくれるリーデェン兄弟の存在を、心から有り難く思うのだった。
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