極道恋浪漫

一園木蓮

文字の大きさ
上 下
97 / 136
極道恋浪漫 第二章

95

しおりを挟む
老板ラァオバン、遼二殿、あの女性に会われるのはおやめください。彼女は少々厄介な女です」
リー――! お前さん、どうしてここに?」
老板ラァオバンがルーシュへお出掛けになったとうかがって、後を追って参りました。実は遼二殿の調査と合わせて私の方でもあの白蘭バイランという女について調べを進めましたところ、素性を含めた思惑が分かって参りました」
 ご説明しますので、とにかく一旦お邸へお戻りを――と言われて、二人は李と共に帰宅することにした。

 イェン邸――。
老板ラァオバン、あの白蘭バイランですが――老板ラァオバンの通っていらした高等学校の後輩だということが判明いたしました」
「後輩だと?」
「はい。私も同じ高等学校の出ですので、以前の学友や後輩に当たって少し調べを進めておりました。あの女の本名は何梓晴ファー ズーチン老板ラァオバンの二学年下の後輩でした。当時の同級生らを当たったところ、どうやら白蘭バイラン老板ラァオバンに尋常ならぬ想いを抱いていたようです」
 尋常ならぬ想い――とは、つまり恋情ということか。
「どうもただの恋情ではないようなのです。そもそも彼女が老板ラァオバンに想いを寄せるようになったきっかけは、学内で老板ラァオバンがあの女をお助けになったことが発端のようです」
「助けた? 俺が――か?」
 イェンに心当たりは無いようである。
老板ラァオバンにとっては些細な出来事だったのかも知れませんが、当時あの女は上級生の男からしつこく追い回されていたことがあったようです。男は再三に渡って交際を申し込んでいたようですが、女にその気はなく、学内でも執拗に追い回されて苦労していたようです」
 ところがある日の放課後、いつものように男から逃げる途中で階段から足を踏み外し、そこへ偶然通り掛かったイェンが彼女の落下を受け止めたというのだ。
「追い掛け回していた男の方も老板ラァオバンが女を抱きとめた現場を目の当たりにして、相手がこの香港の権力者・周焔ジォウ イェン殿であることを悟ったようです。それ以来、男は彼女を諦め、結果的に女は救われたということになったわけです」
 そこまでなら普通に有り得ることだ。女は救ってくれたイェンに感謝しただけで終わっただろう。
「ところが女の方ではそれをきっかけに老板ラァオバンに恋心を抱き始めたようなのですが……」
 それが次第に想いを募らせていき、挙句はイェンが自分に好意を持ってくれているから男に圧力を掛けてくれたのだと思い込むようになっていったらしい。
「彼女が勘違いをするきっかけとなったのは、周りから囃し立てられたのも大きな原因だったようです。彼女を追い掛け回していた男がすぐに手を引いたこともあり、老板ラァオバンと彼女の間には何か特別な関係があるのではないかとの噂が立ったというのも大きいのではないかと――」
 その気になった女は、以来イェンへの想いを募らせていったようだというのだ。
 確かにイェンは見た目からして男前であったし、香港マフィア頭領ボスの息子だということで立場的にも非常に目立つ大きな存在といえる。女が好意を寄せる自体は有り得ないことではなかっただろう。
「問題は女の感情が常軌を逸した方向にいってしまったということです」
 リーはその後の彼女の様子について更に説明を続けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)

藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!? 手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

処理中です...