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極道恋浪漫 第二章
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一方、リリーの方である。
まだ開店前、数々のクラブが入っている建物の裏路地で、リリーが同僚らしきホステスに相手に食ってかかっていた。どうやら遼二の調べてきた通り、白蘭という女で当たりのようだ。
「ちょっと! 酷いじゃないの! あなた、フレイがあの冰っていう子を邪魔に思っているだなんて、どうしてそんな嘘をついたの? お陰でアタシは赤っ恥だったのよ!」
先日、焔らがルーシュを訪れた際に聞いた話とはえらく食い違っているじゃないのと憤っている。
「アタシはあなたとフレイが愛し合ってて、でもあの冰って子がいるせいで結婚話も進みやしないっていうから協力したのよ! それなのにフタを開けてみればフレイはあの子が出て行って落ち込んでるっていうし。フレイだけじゃない、彼の友人たちも店に来てたその場でアタシは恥をかかされたんだもの。どうなってるのか聞かせてもらう権利くらいあると思うわ!」
リリーにとっても焔らの信頼を著しく落としてしまったともいえる死活問題なのだ。
「フレイは気にするなって言ってくれたけど、浅はかな女だって思われたはずよ! あなたのワインバーの名前、『白龍』だったわよね? あのお店だってフレイが出資して、彼の字をお店の名前に使っていいって言われたって――あなたそう言ってたから!」
だから本当に付き合っていると思って疑わなかったのに――とリリーは憤っている。
「まさかそれも嘘だったっていうの? あなた、いったい何がしたいのよ! 本当の目的はフレイじゃなくて、このアタシを陥れる為だったんじゃないかって疑いたくもなるわ!」
本当の目的を言いなさいよと詰め寄る。白蘭という女はすまなさそうにうつむいては、蚊の鳴くような声で謝罪を口にした。
「ごめんなさいリリーさん……。あなたを貶めようなんて……それは誤解よ。本当にそんなつもりはなくて……。それに……嘘じゃないのよ。あの人がなんて言ったか知らないけれど……私たち本当に……」
「本当に――何? 付き合ってた――とでもいうわけ?」
「……ええ」
リリーにしてみれば信憑性があるのは焔の方といえる。
「実は私……以前ある男にしつこくされていたことがあって……。あの人はそんな私を助けてくれたの。それ以来、その男の人はすっかり諦めてくれたようで、私は本当に助かったのよ。それであの人と私は……」
「付き合うことになったっていうわけ? だったら尚のことアタシには意味が分からないわね! フレイが大事にしている老黄とその養子の子なら、あなたにとっても大事にして当然の相手じゃなくて? それを邪魔にしようだなんておかしいじゃないの!」
「……そうね。あなたの言う通りかも知れない。でもあの冰っていう子は……単に同居人というよりも……あの人が自分に惚れて遊郭街から身請けしたと思い込んでいるようだったのは本当なのよ。我が侭放題で、ともすればあの人を尻に敷くような横柄な態度をとっていたらしいの。だから私……」
リリーにしてみればそれこそ怪しい言い訳である。焔もその友人の遼二も、冰のことは非常に慎ましい健気な少年だと言っていたからだ。
まだ開店前、数々のクラブが入っている建物の裏路地で、リリーが同僚らしきホステスに相手に食ってかかっていた。どうやら遼二の調べてきた通り、白蘭という女で当たりのようだ。
「ちょっと! 酷いじゃないの! あなた、フレイがあの冰っていう子を邪魔に思っているだなんて、どうしてそんな嘘をついたの? お陰でアタシは赤っ恥だったのよ!」
先日、焔らがルーシュを訪れた際に聞いた話とはえらく食い違っているじゃないのと憤っている。
「アタシはあなたとフレイが愛し合ってて、でもあの冰って子がいるせいで結婚話も進みやしないっていうから協力したのよ! それなのにフタを開けてみればフレイはあの子が出て行って落ち込んでるっていうし。フレイだけじゃない、彼の友人たちも店に来てたその場でアタシは恥をかかされたんだもの。どうなってるのか聞かせてもらう権利くらいあると思うわ!」
リリーにとっても焔らの信頼を著しく落としてしまったともいえる死活問題なのだ。
「フレイは気にするなって言ってくれたけど、浅はかな女だって思われたはずよ! あなたのワインバーの名前、『白龍』だったわよね? あのお店だってフレイが出資して、彼の字をお店の名前に使っていいって言われたって――あなたそう言ってたから!」
だから本当に付き合っていると思って疑わなかったのに――とリリーは憤っている。
「まさかそれも嘘だったっていうの? あなた、いったい何がしたいのよ! 本当の目的はフレイじゃなくて、このアタシを陥れる為だったんじゃないかって疑いたくもなるわ!」
本当の目的を言いなさいよと詰め寄る。白蘭という女はすまなさそうにうつむいては、蚊の鳴くような声で謝罪を口にした。
「ごめんなさいリリーさん……。あなたを貶めようなんて……それは誤解よ。本当にそんなつもりはなくて……。それに……嘘じゃないのよ。あの人がなんて言ったか知らないけれど……私たち本当に……」
「本当に――何? 付き合ってた――とでもいうわけ?」
「……ええ」
リリーにしてみれば信憑性があるのは焔の方といえる。
「実は私……以前ある男にしつこくされていたことがあって……。あの人はそんな私を助けてくれたの。それ以来、その男の人はすっかり諦めてくれたようで、私は本当に助かったのよ。それであの人と私は……」
「付き合うことになったっていうわけ? だったら尚のことアタシには意味が分からないわね! フレイが大事にしている老黄とその養子の子なら、あなたにとっても大事にして当然の相手じゃなくて? それを邪魔にしようだなんておかしいじゃないの!」
「……そうね。あなたの言う通りかも知れない。でもあの冰っていう子は……単に同居人というよりも……あの人が自分に惚れて遊郭街から身請けしたと思い込んでいるようだったのは本当なのよ。我が侭放題で、ともすればあの人を尻に敷くような横柄な態度をとっていたらしいの。だから私……」
リリーにしてみればそれこそ怪しい言い訳である。焔もその友人の遼二も、冰のことは非常に慎ましい健気な少年だと言っていたからだ。
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