極道恋浪漫

一園木蓮

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極道恋浪漫 第二章

90 企みの全容

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 それから二日ばかりが経った頃、遼二がイェンの元に情報を持ってやって来た。例のリリーを使って冰を追い出そうとした張本人の目処がついたからだ。
「ご苦労だったな、カネ。任せっきりにしちまってすまない」
「構わん。お前さんは地下街全体に目を配らにゃならんのだからな。それに、こういうことは俺の役目だ」
 気にするなと言って遼二は懐から資料を取り出し、卓の上に広げた。
「少し調べたところ案外容易に割れたぞ。おそらくだが、この地下街のクラブでホステスをしている白蘭バイランという女だ」
 心当たりはないかと焔に訊く。
白蘭バイラン? 覚えはねえな……」
 イェンは気難しげに眉根を寄せた。どうやらすぐには思い当たらないようだ。
「店の名はジュエルだ。リリーの所と規模的には同じくらいだからお前さんも知っているだろう?」
「もちろんジュエルなら知っている。だが、白蘭バイランなんていうホステスがいたかどうかは覚えがねえ」
 自分のテーブルについたことがないだけかも知れないがとイェンは首を傾げている。
「まあ知らなくても当然といえばそうかも知れん。なにせその女が『白蘭バイラン』という源氏名に変えたのがつい最近だそうだ。女はジュエルに勤める傍ら、遊興街の路地裏に小さなワインバーを開いているようでな。カウンター席だけの本当にこぢんまりとした店だが、そこで名乗っていた『白蘭バイラン』の名をホステスとしても使うことにしたんだとか」
「源氏名を変える前は何といったんだ?」
「トパーズだそうだ。店の名がジュエルということから、ホステスたちの源氏名は大概が宝石の名にちなんでつけられているそうだが」
「ああ、そうだったな。あの店じゃ全員がエメラルドやらサファイヤというんで、誰が誰やらという印象があったが。しかしトパーズなんて名のホステスがいたのか……」
 そう聞いても心当たりがないということは、イェンとは口すら聞いたことのない女かも知れない。だが、そうであるならなぜリリーを使ってまで冰を追い出そうとしたのかが分からないところだ。

「実はな、イェン――。ちょっと気になることがあるんだ」

「気になることとは?」

「そのワインバーの店の名だがな、『白龍バイロン』というそうだ」

白龍バイロン――?」

 白龍バイロンといえばイェンあざなと同じだ。
「な? 引っ掛かるだろう? それに――トパーズといえば十一月の誕生石だそうじゃねえか」
 十一月はイェンの誕生月でもある。トパーズも白蘭バイランもどちらもイェンを連想させると言えなくもない。
「お前さんの名にちなんで――というならほむらの色からルビーあたりだが、ルビーってのは古参のホステスでナンバーワンを争う位置付けにいる売れっ子らしいからな」
「ルビーなら知っているぞ。ママと共に俺のテーブルにつく女だ」
 つまり、ルビーという名は別のホステスに使われているから源氏名にはできない。だからトパーズとしたというわけか。
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