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極道恋浪漫 第一章
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「貴様のような輩にここを牛耳らせておくわけにはいかんのでな。最後の温情だ。命をとるとまでは言わん。早急にここを立ち退くがいい」
そう言った隼に、男は気味の悪い笑みを浮かべると、
「やれやれ――。お噂通りの甘ちゃんですな、ここ香港裏社会のトップ様は」
嘲笑と共に軽く脚を組み直す。と同時に、隼らを目掛けて周囲一八〇度から武装した連中が取り囲んだ。
「私なら――温情云々以前に即刻手打ちにしていよう。巷の者がそちらさんを何と言っているかご存知ないか? 香港マフィアのトップ、周隼は人情ごっこがお好きな甘ちゃん頭領――とね?」
羅辰の皮肉に乗ずるように武装連中たちはこぞって小馬鹿にしたように隼らを見つめて嘲笑し合う。彼らは皆、この頭目・羅辰の側近連中のようだ。各々の手にはヌンチャクや鉄製の棒といった武器が握られている。
「甘ちゃん――とな。耳の痛いことだ」
当然か、隼らも黙ってはいない。すぐ後ろにいた鐘崎父子や息子の焔らが懐に忍ばせていた銃を構えては対峙の姿勢を取った。
相手はヌンチャクなどに対してこちらは飛び道具だ。優劣は一目瞭然――。だが、羅辰は焦りもせずにせせら笑った。
「およしなさいな。そんな物騒な物をどうやって持ち込んだんだか――。これでは検閲所を厳しく訊さねばなりませんな。まあ、それはともかくとして丸腰同然の者に対して飛び道具とはお情けない。それに――そんなものをぶっ放せば、困るのはあなた方ですよ」
笑いながらチラリと自らの頭上に視線をくれた。
「ご覧なさい。ここの天井にはとある仕掛けが組み込んでありましてね。一発でも銃弾なんぞをぶっ放せば、その衝撃波で爆発物が反応することになっているのですよ」
「なに――ッ!?」
「ご存知の通りここは地下街です。天井に風穴が開けば、ここは崩れてあなた方はお陀仏ですよ。もちろん、私どもも無事では済みませんがね。ただし――この地下街に生きる何百という遊女男娼らも無事では済まない。下手をすれば地上の――あなた様が治める香港の街とて多少なりと被害が出るのは必然。せっかく情が厚いとお噂の頭領殿だ。堅気を巻き込んで見殺しにしては、いささか不人情ではありませんかな?」
それでもいいならどうぞ撃ちなされ――と、勝ち誇ったように笑みを浮かべる羅辰に、一同はギリリと唇を噛み締めた。
つまり、この男は、これまでもそうして自らの身を守ってきたというわけか。これでは如何に射撃の腕が良かろうと宝の持ち腐れだ。まさか発砲の衝撃波に反応する爆発物が仕掛けられていたなどとは、この場の誰一人、そう――男遊郭を仕切る紫月でさえも知る由もなかったということだ。
打つ手を失い眉根を寄せる隼らを横目に羅辰は言った。
「お役目!」
呼ばれて姿を現したのは飛燕であった。その腰には先日会った時と同様、二振りの日本刀が据えられている。
そう言った隼に、男は気味の悪い笑みを浮かべると、
「やれやれ――。お噂通りの甘ちゃんですな、ここ香港裏社会のトップ様は」
嘲笑と共に軽く脚を組み直す。と同時に、隼らを目掛けて周囲一八〇度から武装した連中が取り囲んだ。
「私なら――温情云々以前に即刻手打ちにしていよう。巷の者がそちらさんを何と言っているかご存知ないか? 香港マフィアのトップ、周隼は人情ごっこがお好きな甘ちゃん頭領――とね?」
羅辰の皮肉に乗ずるように武装連中たちはこぞって小馬鹿にしたように隼らを見つめて嘲笑し合う。彼らは皆、この頭目・羅辰の側近連中のようだ。各々の手にはヌンチャクや鉄製の棒といった武器が握られている。
「甘ちゃん――とな。耳の痛いことだ」
当然か、隼らも黙ってはいない。すぐ後ろにいた鐘崎父子や息子の焔らが懐に忍ばせていた銃を構えては対峙の姿勢を取った。
相手はヌンチャクなどに対してこちらは飛び道具だ。優劣は一目瞭然――。だが、羅辰は焦りもせずにせせら笑った。
「およしなさいな。そんな物騒な物をどうやって持ち込んだんだか――。これでは検閲所を厳しく訊さねばなりませんな。まあ、それはともかくとして丸腰同然の者に対して飛び道具とはお情けない。それに――そんなものをぶっ放せば、困るのはあなた方ですよ」
笑いながらチラリと自らの頭上に視線をくれた。
「ご覧なさい。ここの天井にはとある仕掛けが組み込んでありましてね。一発でも銃弾なんぞをぶっ放せば、その衝撃波で爆発物が反応することになっているのですよ」
「なに――ッ!?」
「ご存知の通りここは地下街です。天井に風穴が開けば、ここは崩れてあなた方はお陀仏ですよ。もちろん、私どもも無事では済みませんがね。ただし――この地下街に生きる何百という遊女男娼らも無事では済まない。下手をすれば地上の――あなた様が治める香港の街とて多少なりと被害が出るのは必然。せっかく情が厚いとお噂の頭領殿だ。堅気を巻き込んで見殺しにしては、いささか不人情ではありませんかな?」
それでもいいならどうぞ撃ちなされ――と、勝ち誇ったように笑みを浮かべる羅辰に、一同はギリリと唇を噛み締めた。
つまり、この男は、これまでもそうして自らの身を守ってきたというわけか。これでは如何に射撃の腕が良かろうと宝の持ち腐れだ。まさか発砲の衝撃波に反応する爆発物が仕掛けられていたなどとは、この場の誰一人、そう――男遊郭を仕切る紫月でさえも知る由もなかったということだ。
打つ手を失い眉根を寄せる隼らを横目に羅辰は言った。
「お役目!」
呼ばれて姿を現したのは飛燕であった。その腰には先日会った時と同様、二振りの日本刀が据えられている。
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