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極道恋浪漫 第一章
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翌朝、太陽が高くなる頃になって遼二は焔の声で起こされることとなった。
「……ん、焔か。今、何時だ……?」
「朝の九時だ」
「九時……?」
ハタと瞳を開けてガバリと半身を起こす。
「おいおい、どうした。まさか枕が変わると寝られねえってタチでもねえだろうに」
焔は半ば呆れながらも、しようのねえヤツだと苦笑している。
「紫月が朝飯を用意してくれた。そろそろ起きてくれ。俺の方も冰っていうボウズとの間で話がまとまったのでな」
そう言われてようやくと現実に引き戻される気がしていた。
顔を洗い、服を整えて寝所を出れば、ダイニングでは既に着席して皆が待っていた。焔の隣には冰という少年が遠慮がちな表情でちょこんと座っている。その対面には紫月がいて、下男の菫が甲斐甲斐しく皆の朝食を並べているところだった。
「ああ、遼。昨夜はよく眠れたか?」
にこやかな紫月の笑顔に迎えられて、一瞬視線が泳いでしまう。
「あ、ああ……。お陰様で。遅くなってすまない……」
どことなくソワソワとした遼二の様子に、焔は首を傾げながらも冷やかし気味で苦笑だ。
「どうした、まだ寝ぼけてんのか?」
「あ、いや……すまん」
席は紫月の隣のようだ。菫に椅子を引かれておずおず、腰を落ち着けた。
「どうも……昨夜は世話になった」
隣の紫月に向かって軽く会釈すると、和やかなハスキーがかったテノールで『どういたしまして』と微笑まれ、染まり掛けた頬の熱に思わず額を抑えてごまかした。
「ところでな、カネ。お陰様でこのボウズが俺と共に暮らすことを承諾してくれたのだ」
「え――?」
少々誇らしげに口角を上げている対面の焔を、思わずパチクリと凝視してしまった。
彼によると、昨夜一晩二人でじっくりと話し合った結果、冰という少年が焔に輿入れすることに同意したというのだ。
「じゃあおめえらは……」
「ああ。婚姻を交わす。親父にも報告して早急に事を進めるつもりだ」
「――そうか!」
ひとまずは幸先が見えてきたことに安堵する。今日中にも城外のファミリーの元へ行き、段取りに取り掛かりたいという焔に、遼二もまた、出来ることは精一杯手伝わせてもらうと言って話は決まったのだった。
紫月は紫月で遊郭街を仕切る頭目に事の次第を上げると言ってくれた。
「それじゃ俺の方は頭目に話を通す。冰君のことはもうしばらく俺の元で預からせてもらうが、なるべく早く皇帝様にお返しできるようにするから」
「世話を掛ける。紫月、お前さんには心から感謝している」
冰と共に丁寧に頭を下げた焔に、紫月は恐縮しつつも上手くやるぜと言って微笑んだのだった。
◇ ◇ ◇
「……ん、焔か。今、何時だ……?」
「朝の九時だ」
「九時……?」
ハタと瞳を開けてガバリと半身を起こす。
「おいおい、どうした。まさか枕が変わると寝られねえってタチでもねえだろうに」
焔は半ば呆れながらも、しようのねえヤツだと苦笑している。
「紫月が朝飯を用意してくれた。そろそろ起きてくれ。俺の方も冰っていうボウズとの間で話がまとまったのでな」
そう言われてようやくと現実に引き戻される気がしていた。
顔を洗い、服を整えて寝所を出れば、ダイニングでは既に着席して皆が待っていた。焔の隣には冰という少年が遠慮がちな表情でちょこんと座っている。その対面には紫月がいて、下男の菫が甲斐甲斐しく皆の朝食を並べているところだった。
「ああ、遼。昨夜はよく眠れたか?」
にこやかな紫月の笑顔に迎えられて、一瞬視線が泳いでしまう。
「あ、ああ……。お陰様で。遅くなってすまない……」
どことなくソワソワとした遼二の様子に、焔は首を傾げながらも冷やかし気味で苦笑だ。
「どうした、まだ寝ぼけてんのか?」
「あ、いや……すまん」
席は紫月の隣のようだ。菫に椅子を引かれておずおず、腰を落ち着けた。
「どうも……昨夜は世話になった」
隣の紫月に向かって軽く会釈すると、和やかなハスキーがかったテノールで『どういたしまして』と微笑まれ、染まり掛けた頬の熱に思わず額を抑えてごまかした。
「ところでな、カネ。お陰様でこのボウズが俺と共に暮らすことを承諾してくれたのだ」
「え――?」
少々誇らしげに口角を上げている対面の焔を、思わずパチクリと凝視してしまった。
彼によると、昨夜一晩二人でじっくりと話し合った結果、冰という少年が焔に輿入れすることに同意したというのだ。
「じゃあおめえらは……」
「ああ。婚姻を交わす。親父にも報告して早急に事を進めるつもりだ」
「――そうか!」
ひとまずは幸先が見えてきたことに安堵する。今日中にも城外のファミリーの元へ行き、段取りに取り掛かりたいという焔に、遼二もまた、出来ることは精一杯手伝わせてもらうと言って話は決まったのだった。
紫月は紫月で遊郭街を仕切る頭目に事の次第を上げると言ってくれた。
「それじゃ俺の方は頭目に話を通す。冰君のことはもうしばらく俺の元で預からせてもらうが、なるべく早く皇帝様にお返しできるようにするから」
「世話を掛ける。紫月、お前さんには心から感謝している」
冰と共に丁寧に頭を下げた焔に、紫月は恐縮しつつも上手くやるぜと言って微笑んだのだった。
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