18 / 110
極道恋浪漫 第一章
16
しおりを挟む
「方法ってのは? 俺にできることならどんなことでもするつもりだ」
「どんなことでも――ね?」
「ああ、どんなことでもだ!」
意志のある瞳で焔が身を乗り出す。察するに彼を助けたいというのは本心なのだろう。
「ならひとつ提案だ。如何に遊郭街の頭目といえど香港を仕切る周ファミリーの身内とあらば簡単に手は出せねえ。つまり雪吹冰って子を周家で養子にするなりすれば、頭目も諦めざるを得ねえかも」
「養子……だと?」
それは何とも目から鱗の話だ。
「まあこれは今思いついた俺の考えだから――? 養子にしたところで、それがあの子を助けたいが為の工作と受け取られねえとも限らねえ。ちょっとでも疑われれば頭目が素直に引き下がってくれるかどうかは分からねえが」
そこまで話し掛けて紫月はハタと瞳を見開いた。
「あー、けどもっと確実に足抜けさせるなら、実はあの子が皇帝様の婚約者だった――とかいうことになれば頭目でもぐうの音も出ねえかもな」
「婚約者ッ!?」
これには思わず焔と遼二の声が重なってしまった。
「そう、婚約者! 皇帝様の婚約者とは知らずに女衒が拉致してここに売っ飛ばしたとなりゃあ、頭目の方がやべえ立場に追い込まれる。一も二もなくすぐにあの子を返すだろうぜ。もちろん身請け金も必要なくなる」
というよりも、逆に粗相の詫びとして頭目の方から謝罪金が出るくらいの事案になるだろうよと紫月は言った。
突飛な発想ではあるが、確かに有効な手立てかも知れない。
「……ふむ、婚約者か。悪くねえ考えだが、あの息子は当然のことながら男だ。男の俺が男と結婚するはずだったと言って、頭目が信じてくれるかどうか」
「そんなことは心配いらねえ。どうとでも言い繕うのは簡単さ。例えば――皇帝様は元々男色だとでも言やあいいだけだろ?」
「……そりゃまあ、そうだが」
そう都合よく理解してもらえるかどうかは怪しいところだと焔は渋顔だ。
「世の中にゃ女を欲する野郎の方が圧倒的に多いんだ。俺が男色だと言ったところで、大概の人間はそれこそあのボウズを連れ帰る為の嘘だと疑るんじゃねえのか?」
「それなら心配はいらねえ。頭目は両刀使いだ。男が男を愛したところでおかしいとは思わねえさ」
「両刀だ? ったく……、遊郭王ともなればお盛んってわけか」
頭目の個人的な趣味については意見するつもりもないが、それにしても舌打ちのひとつもしたくなるというものだ。
それはともかく婚約者とはまた大胆な発想だ。正直なところ焔にも遼二にもそんな手立ては思いもつかなかったからだ。
紫月という男の発想には感心するところだが、仮に今はそうしてこの場を凌いだとしても、後々それが偽の婚約だったと知れた際には、また別の面倒事に発展しないとも限らない。当の紫月もそれを危惧していて、そこまでしてもあの息子を助けたいのかと訊いてきた。
「とはいえ、もしも偽りの婚約話をでっち上げてあの子を連れ帰ったなんてことがバレた日にゃ、おそらく頭目は黙っちゃいねえ。下手すりゃ遊郭街と周ファミリーが正面切っての戦になるくれえには発展するだろうぜ? この手を使うなら信憑性が必要不可欠だ」
ところで皇帝様は独身だったっけ? と、紫月は訊いた。
「どんなことでも――ね?」
「ああ、どんなことでもだ!」
意志のある瞳で焔が身を乗り出す。察するに彼を助けたいというのは本心なのだろう。
「ならひとつ提案だ。如何に遊郭街の頭目といえど香港を仕切る周ファミリーの身内とあらば簡単に手は出せねえ。つまり雪吹冰って子を周家で養子にするなりすれば、頭目も諦めざるを得ねえかも」
「養子……だと?」
それは何とも目から鱗の話だ。
「まあこれは今思いついた俺の考えだから――? 養子にしたところで、それがあの子を助けたいが為の工作と受け取られねえとも限らねえ。ちょっとでも疑われれば頭目が素直に引き下がってくれるかどうかは分からねえが」
そこまで話し掛けて紫月はハタと瞳を見開いた。
「あー、けどもっと確実に足抜けさせるなら、実はあの子が皇帝様の婚約者だった――とかいうことになれば頭目でもぐうの音も出ねえかもな」
「婚約者ッ!?」
これには思わず焔と遼二の声が重なってしまった。
「そう、婚約者! 皇帝様の婚約者とは知らずに女衒が拉致してここに売っ飛ばしたとなりゃあ、頭目の方がやべえ立場に追い込まれる。一も二もなくすぐにあの子を返すだろうぜ。もちろん身請け金も必要なくなる」
というよりも、逆に粗相の詫びとして頭目の方から謝罪金が出るくらいの事案になるだろうよと紫月は言った。
突飛な発想ではあるが、確かに有効な手立てかも知れない。
「……ふむ、婚約者か。悪くねえ考えだが、あの息子は当然のことながら男だ。男の俺が男と結婚するはずだったと言って、頭目が信じてくれるかどうか」
「そんなことは心配いらねえ。どうとでも言い繕うのは簡単さ。例えば――皇帝様は元々男色だとでも言やあいいだけだろ?」
「……そりゃまあ、そうだが」
そう都合よく理解してもらえるかどうかは怪しいところだと焔は渋顔だ。
「世の中にゃ女を欲する野郎の方が圧倒的に多いんだ。俺が男色だと言ったところで、大概の人間はそれこそあのボウズを連れ帰る為の嘘だと疑るんじゃねえのか?」
「それなら心配はいらねえ。頭目は両刀使いだ。男が男を愛したところでおかしいとは思わねえさ」
「両刀だ? ったく……、遊郭王ともなればお盛んってわけか」
頭目の個人的な趣味については意見するつもりもないが、それにしても舌打ちのひとつもしたくなるというものだ。
それはともかく婚約者とはまた大胆な発想だ。正直なところ焔にも遼二にもそんな手立ては思いもつかなかったからだ。
紫月という男の発想には感心するところだが、仮に今はそうしてこの場を凌いだとしても、後々それが偽の婚約だったと知れた際には、また別の面倒事に発展しないとも限らない。当の紫月もそれを危惧していて、そこまでしてもあの息子を助けたいのかと訊いてきた。
「とはいえ、もしも偽りの婚約話をでっち上げてあの子を連れ帰ったなんてことがバレた日にゃ、おそらく頭目は黙っちゃいねえ。下手すりゃ遊郭街と周ファミリーが正面切っての戦になるくれえには発展するだろうぜ? この手を使うなら信憑性が必要不可欠だ」
ところで皇帝様は独身だったっけ? と、紫月は訊いた。
17
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
短編エロ
黒弧 追兎
BL
ハードでもうらめぇ、ってなってる受けが大好きです。基本愛ゆえの鬼畜です。痛いのはしません。
前立腺責め、乳首責め、玩具責め、放置、耐久、触手、スライム、研究 治験、溺愛、機械姦、などなど気分に合わせて色々書いてます。リバは無いです。
挿入ありは.が付きます
よろしければどうぞ。
リクエスト募集中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる