一園木蓮

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焔(続編)

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「いや、俺はちょっと源さんに報告だけしてくっから。先入ってくれ。下着は――まだ開けてない新品のがあったはずだから。俺のじゃ少しでけえかも知れねえが」
 タンスを引っ掻き回してパッケージに包まれたままの下着を差し出すと、それを受け取りながら紫月はクスッと笑った。
「XL……? デカッ! おめえ体格いいもんなぁ」
「やはりデカいか。まあ小さくて穿けんよりはいいだろう。それで我慢してくれ」
 パジャマなんて洒落たモンは無いから、割合新しめのTシャツとスウェットパンツを見繕う。それを持って紫月はバスルームへと向かった。少しすると風呂の壁に反響した鼻歌まじりの声が聞こえてきて、自然と頬がゆるむ。
 いつもは味わえない感覚だった。
 誰かと共に暮らすということのあたたかさが身に染みる。いつもの――殺風景な部屋の壁さえ心を躍らせる、そんな不思議な気分だった。

 源さんに報告をした後、部屋に帰るとちょうど紫月が風呂から上がったところだったようだ。俺の大きな服に身を包んだ華奢な身体が、まるで小さな子供を連想させるようだ。
「やはり大きかったな」
「うん、見てくれ、ダボダボ!」
 両手を広げて笑う仕草にギュッと心臓が摘まれる気がした。
「似合ってるぜ。可愛いわ――」
「マジ? イケてる?」
「ああ。お前、普段はMサイズか?」
「うん、だいたいそう。んでも、まあまあタッパはあるからL着る時もあるよ」
 お前の匂いがすると言って、袖口をクンクンと嗅いでいる様子が愛らしい仔犬のようだ。
「よし、湯冷めしねえ内に寝るか。俺はシャワー浴びてくっから、お前先に布団入っててくれ」
「ん――、そんじゃお言葉に甘えっか」
「退屈だったらテレビでもつけて観ててな」
「うん、さんきゅ! ゆっくりあったまってこいよー」
 ヒラヒラと白魚のような手を振って微笑む顔を見ただけで、湯になど浸からずとも身体の芯から温まる気がしていた。

 風呂を上がると紫月はベッドで布団に包まりながら半身を起こして携帯を弄っていた。
「今さ、冰からメッセ届いたから返事打ってた」
「――そうか」
「もうすぐ離陸だって。空港からみてえ。なんかすっげえ豪華なプライベートジェットだって!」
 おそらくは周焔の家の物だろう。
「助けに来てくれた人らがさ、めっちゃいい男だって。一人はやさしくて話しやすいみたいけど、もう一人はすっげ強面で緊張するとか書いてある。けど超絶男前だって! 俺が見たらぜってー気に入る――だってさ!」
 俺は何だか可笑しくなってしまい、自然と口元に笑みが浮かんでしまった。話しやすいのは当然倫周だろう。強面の男前は――周焔のことか。
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