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9話
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そんなヤバい妄想で頭の中がいっぱいになっていた俺に助け船というわけじゃなかろうが、対面に座ったこいつの言葉で俺はハッと我に返った。
「――もう二度と他の誰かに捕られたくない、だから今日しかないと思った」
「――え?」
「初めてのあの夜――そう思ってたってこと。結構必死だったんだぜ、これでも」
美味そうにベリーを喉に流し込みつつ微笑う視線がめちゃくちゃやさしげで、そしてほんの少しだけ恥ずかしそうに泳いでいて、俺は思わず心臓を鷲掴みされたように動けなくなった。
嬉しくて、幸せで、言葉にならない。
感無量というのはまさにこういう気持ちをいうのだろうか。
熱く激しい欲情も、穏やかであたたかい感激も、何もかもを包み満たしてくれるこの笑顔を失いたくない。離れたくない。ずっとずっと、この先も、互いにうっとうしくなるくらい――傍にいたい。
「なあ、五年後ってどうしてんだろうな?」
そう訊いた俺の言葉に、
「さあな、少しは歳食ってんだろ? お互いに。まあ、お前のエロさは爺さんになっても変わらなさそうだがな」
爺さんになっても――この言葉を聞いた瞬間に、目頭が痛いくらい熱くなるのを感じた。
冷やかしながらもまるで当たり前のように ”傍にいる” ということを前提にした台詞を返してくるこいつが好きで好きでたまらない。きっと俺たちは、飽きたり嫌いになったりすることなんてないのかも知れない。
「そろそろ戻るか」
「ん……、だな」
今夜は階下に部屋を取ってある。出会ってから五度目の記念日にふさわしい豪華なスイートルームだ。
「その前にもう一回乾杯するか?」
「……ああ、いいね」
俺は嬉しくて、堪えきれずに緩んだ涙腺を隠すように手元のワイングラスを傾け、掲げた。
今までの五年の歳月を懐かしみつつ、五年後への甘い夢を馳せながら――
- FIN -
「――もう二度と他の誰かに捕られたくない、だから今日しかないと思った」
「――え?」
「初めてのあの夜――そう思ってたってこと。結構必死だったんだぜ、これでも」
美味そうにベリーを喉に流し込みつつ微笑う視線がめちゃくちゃやさしげで、そしてほんの少しだけ恥ずかしそうに泳いでいて、俺は思わず心臓を鷲掴みされたように動けなくなった。
嬉しくて、幸せで、言葉にならない。
感無量というのはまさにこういう気持ちをいうのだろうか。
熱く激しい欲情も、穏やかであたたかい感激も、何もかもを包み満たしてくれるこの笑顔を失いたくない。離れたくない。ずっとずっと、この先も、互いにうっとうしくなるくらい――傍にいたい。
「なあ、五年後ってどうしてんだろうな?」
そう訊いた俺の言葉に、
「さあな、少しは歳食ってんだろ? お互いに。まあ、お前のエロさは爺さんになっても変わらなさそうだがな」
爺さんになっても――この言葉を聞いた瞬間に、目頭が痛いくらい熱くなるのを感じた。
冷やかしながらもまるで当たり前のように ”傍にいる” ということを前提にした台詞を返してくるこいつが好きで好きでたまらない。きっと俺たちは、飽きたり嫌いになったりすることなんてないのかも知れない。
「そろそろ戻るか」
「ん……、だな」
今夜は階下に部屋を取ってある。出会ってから五度目の記念日にふさわしい豪華なスイートルームだ。
「その前にもう一回乾杯するか?」
「……ああ、いいね」
俺は嬉しくて、堪えきれずに緩んだ涙腺を隠すように手元のワイングラスを傾け、掲げた。
今までの五年の歳月を懐かしみつつ、五年後への甘い夢を馳せながら――
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