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一園木蓮

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未来への招待状

15話

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「なあ、僚一、飛燕――。遼二も紫月もめちゃくちゃいいヤツで、俺は本当に幸せ者だぜ。まさかこんな縁があるとは思ってもみなかったから、未だに信じられないくらいだ」
 氷川がそう言えば、遼二と紫月の父親たちも嬉しそうに頷いた。
「こうしていると、周大人ジォウ ターレンと出会った頃のことを思い出す。あの頃、俺たちはまだ駆け出しの若造だったが、大人はそんな俺たちを温かく迎えてくれたもんだ。焔もまだこーんな小さなガキだった」
 僚一が身振り手振りで幼少の頃の氷川を懐かしめば、
「あれからもう三十年も経つのか。本当に――早いもんだな」
 紫月の父親である飛燕もそう言って、二人揃って感慨深げに瞳を細めてみせるのだった。
「しかし――うちのボウズらがアルバイトの為に駆け込んだのが、焔の店だったって聞いた時には驚かされたぜ」
「そうだな。何せ全くの偶然だったってんだから、尚更だ」
 父親たちが言うように、遼二と紫月が氷川の店で働くことにしたのは、xuanwuが氷川の息の掛かった店だからということを知っていたわけではなく、本当に偶然だったようだ。まさに奇跡ともいえる縁である。
 面接に行った段階で氷川の持つ雰囲気に思うところがあった遼二が、帰ってから独自に調べた結果、彼が香港マフィアの周隼の次男坊だということをつきとめたというのだ。
 遼二の行動力にも感心させられるところだが、まだ若い彼が、たった一人で氷川の正体に辿り着けたということが、これまたさすがと言わざるを得ない。やはり彼はその世界で右に出る者はないと言われる鐘崎僚一の血を引いているというわけだ。氷川にとっては、そんなところも心躍る気持ちにさせられる一因だった。
 と、そこへ通話中で席を外していた冰が戻って来た。
「おお、冰。ちょうど良かった」
 氷川はすぐさま彼を遼二らの父親たちに紹介した。
「これは雪吹冰、俺の大事なヤツです」
 自らにとって大切な相手だということを堂々と告げる。まあ、彼らの息子である遼二と紫月も同性同士で愛し合っている仲なわけだから、そう紹介したとて今更驚かれることでもなかろうが、微塵も憚らずの堂々ぶりが実に氷川らしいところである。
「冰、こちらは鐘崎僚一氏と一之宮飛燕氏、遼二と紫月の親父さん方だ」
 話には聞いていたものの、冰にとっては初対面である。
 二人共に長身の男前という印象に驚かされたものの、どちらがどちらの父親なのかは一目見てすぐに分かる程だった。
 先日、氷川が言っていた通り、鐘崎僚一の方は本当に遼二によく似ていた。
 父親というからには年齢もそれ相応なのだろうが、見るからに若々しくて、何より滅法男前だ。体型も引き締まっているし、独身でも通りそうなくらいで、確かに格好いい。顔付きも遼二を渋くした感じで、聞かずとも親子だと分かるようだった。
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