club-xuanwu extra

一園木蓮

文字の大きさ
上 下
12 / 43
過去からの招待状

12話

しおりを挟む
 高瀬が続ける。
「そんな男とキミは今、恋仲だっていうじゃないか。僕にとってはこの上ない侮辱だし、腸が煮えくり返る思いだよ」
 これまではのんべんだらりんとしていた口調が、一気に鋭さを増す。眉間に立ち上った青筋といい、逆上寸前の高瀬の様子に、冰は生きた心地がしなかった。
「ねえ波濤――、キミは騙されているんじゃないのかい? それともあの男に脅迫でもされていて、仕方なく付き合っているんだろう? 思いやりのあるキミのことだ。嫌と言えなくてあんな男と一緒にいるんだったら、僕が助けてあげるよ」
 高瀬は弄り続けていた起爆スイッチを近くのテーブルの上に置くと、冰の隣へと腰を下ろし、両手で肩を抱き包むようにして互いの距離を詰めた。
「どうなんだ? 本当のことを言えよ――。あの男に脅迫されているんだろう?」
「……きょ、脅迫だなんて……そんなこと……。それに……龍とは単に仕事上の付き合いで……アンタが考えているような仲じゃな……」
「嘘を付くな――!」
 豹変したように怒鳴り上げたと思ったら、一気にソファの上で組み敷かれて、冰は蒼白となった。少しでもこの男の気を反らそうとついた嘘が、かえって男を逆上させてしまったのだ。
「ちゃんと調べは付いているんだ。キミがあの龍と一緒に店を出るところや、同じ車に乗って帰るところを何度も目撃してる! どうせあの野郎にも……この身体を好きにさせてるんだろうが!」
「……なッ!? そんなこと……ッ」
 覆い被さってくる身体を押し退けようと身を捩った瞬間に、喉元を両の掌で押さえ込まれて、呼吸もままならない。声さえ思うように発せずもがく内に、ビッ――と勢いよくシャツを引き裂かれてしまった。
「……ッ、放せ……! 高瀬……さ……!」
「誰が放すものか! キミだってこうされることが分かってて此処へ来た。そうだろうがッ!」
「……んな……わけ無……ッ」

――――ッ!?

 突如、脇腹に走った衝撃に、冰はギョッとしたように硬直してしまった。
 言いようのないくらいの熱さ――とでもいおうか、あるいは冷たさなのか。今、自身の腹に当てられているモノが何なのか想像も付かない。
「心配するな。ペットボトルを凍らせただけの物だよ。キミが暴れるからちょっとしたお仕置きだ」
 高瀬は気味の悪い笑みを浮かべると、腹に押し当てていたそれを冰の目の前へと掲げてみせた。
 確かに見たことのある天然水のペットボトルが凍って膨張したものに相違ない。害は少なかろうと、こんな意表をつくやり方を繰り出してくる高瀬に、背筋が凍る思いだった。
「さあ、じゃあそろそろお楽しみを始めさせてもらおうかね? 本当はこうせっかちになるのは情緒がなくて好きじゃないんだけれどね」
 言葉に反してソワソワと逸るような笑顔が心底気味悪い。焦燥感を拭えない冰が目にしたのは、高瀬がどこからか取り出してきた荷造り用の太い麻紐だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

愛する者の腕に抱かれ、獣は甘い声を上げる

すいかちゃん
BL
獣の血を受け継ぐ一族。人間のままでいるためには・・・。 第一章 「優しい兄達の腕に抱かれ、弟は初めての発情期を迎える」 一族の中でも獣の血が濃く残ってしまった颯真。一族から疎まれる存在でしかなかった弟を、兄の亜蘭と玖蘭は密かに連れ出し育てる。3人だけで暮らすなか、颯真は初めての発情期を迎える。亜蘭と玖蘭は、颯真が獣にならないようにその身体を抱き締め支配する。 2人のイケメン兄達が、とにかく弟を可愛がるという話です。 第二章「孤独に育った獣は、愛する男の腕に抱かれ甘く啼く」 獣の血が濃い護は、幼い頃から家族から離されて暮らしていた。世話係りをしていた柳沢が引退する事となり、代わりに彼の孫である誠司がやってくる。真面目で優しい誠司に、護は次第に心を開いていく。やがて、2人は恋人同士となったが・・・。 第三章「獣と化した幼馴染みに、青年は変わらぬ愛を注ぎ続ける」 幼馴染み同士の凛と夏陽。成長しても、ずっと一緒だった。凛に片思いしている事に気が付き、夏陽は思い切って告白。凛も同じ気持ちだと言ってくれた。 だが、成人式の数日前。夏陽は、凛から別れを告げられる。そして、凛の兄である靖から彼の中に獣の血が流れている事を知らされる。発情期を迎えた凛の元に向かえば、靖がいきなり夏陽を羽交い締めにする。 獣が攻めとなる話です。また、時代もかなり現代に近くなっています。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

恋愛騎士物語1~孤独な騎士の婚活日誌~

凪瀬夜霧
BL
「綺麗な息子が欲しい」という実母の無茶な要求で、ランバートは女人禁制、男性結婚可の騎士団に入団する。 そこで出会った騎兵府団長ファウストと、部下より少し深く、けれども恋人ではない微妙な距離感での心地よい関係を築いていく。 友人とも違う、部下としては近い、けれど恋人ほど踏み込めない。そんなもどかしい二人が、沢山の事件を通してゆっくりと信頼と気持ちを育て、やがて恋人になるまでの物語。 メインCP以外にも、個性的で楽しい仲間や上司達の複数CPの物語もあります。活き活きと生きるキャラ達も一緒に楽しんで頂けると嬉しいです。 ー!注意!ー *複数のCPがおります。メインCPだけを追いたい方には不向きな作品かと思います。

【完結】あなたに撫でられたい~イケメンDomと初めてのPLAY~

金色葵
BL
創作BL Dom/Subユニバース 自分がSubなことを受けれられない受け入れたくない受けが、イケメンDomに出会い甘やかされてメロメロになる話 短編 約13,000字予定 人物設定が「好きになったイケメンは、とてつもなくハイスペックでとんでもなくドジっ子でした」と同じですが、全く違う時間軸なのでこちらだけで読めます。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

『 ゆりかご 』 

設樂理沙
ライト文芸
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

処理中です...