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過去からの招待状
12話
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高瀬が続ける。
「そんな男とキミは今、恋仲だっていうじゃないか。僕にとってはこの上ない侮辱だし、腸が煮えくり返る思いだよ」
これまではのんべんだらりんとしていた口調が、一気に鋭さを増す。眉間に立ち上った青筋といい、逆上寸前の高瀬の様子に、冰は生きた心地がしなかった。
「ねえ波濤――、キミは騙されているんじゃないのかい? それともあの男に脅迫でもされていて、仕方なく付き合っているんだろう? 思いやりのあるキミのことだ。嫌と言えなくてあんな男と一緒にいるんだったら、僕が助けてあげるよ」
高瀬は弄り続けていた起爆スイッチを近くのテーブルの上に置くと、冰の隣へと腰を下ろし、両手で肩を抱き包むようにして互いの距離を詰めた。
「どうなんだ? 本当のことを言えよ――。あの男に脅迫されているんだろう?」
「……きょ、脅迫だなんて……そんなこと……。それに……龍とは単に仕事上の付き合いで……アンタが考えているような仲じゃな……」
「嘘を付くな――!」
豹変したように怒鳴り上げたと思ったら、一気にソファの上で組み敷かれて、冰は蒼白となった。少しでもこの男の気を反らそうとついた嘘が、かえって男を逆上させてしまったのだ。
「ちゃんと調べは付いているんだ。キミがあの龍と一緒に店を出るところや、同じ車に乗って帰るところを何度も目撃してる! どうせあの野郎にも……この身体を好きにさせてるんだろうが!」
「……なッ!? そんなこと……ッ」
覆い被さってくる身体を押し退けようと身を捩った瞬間に、喉元を両の掌で押さえ込まれて、呼吸もままならない。声さえ思うように発せずもがく内に、ビッ――と勢いよくシャツを引き裂かれてしまった。
「……ッ、放せ……! 高瀬……さ……!」
「誰が放すものか! キミだってこうされることが分かってて此処へ来た。そうだろうがッ!」
「……んな……わけ無……ッ」
――――ッ!?
突如、脇腹に走った衝撃に、冰はギョッとしたように硬直してしまった。
言いようのないくらいの熱さ――とでもいおうか、あるいは冷たさなのか。今、自身の腹に当てられているモノが何なのか想像も付かない。
「心配するな。ペットボトルを凍らせただけの物だよ。キミが暴れるからちょっとしたお仕置きだ」
高瀬は気味の悪い笑みを浮かべると、腹に押し当てていたそれを冰の目の前へと掲げてみせた。
確かに見たことのある天然水のペットボトルが凍って膨張したものに相違ない。害は少なかろうと、こんな意表をつくやり方を繰り出してくる高瀬に、背筋が凍る思いだった。
「さあ、じゃあそろそろお楽しみを始めさせてもらおうかね? 本当はこうせっかちになるのは情緒がなくて好きじゃないんだけれどね」
言葉に反してソワソワと逸るような笑顔が心底気味悪い。焦燥感を拭えない冰が目にしたのは、高瀬がどこからか取り出してきた荷造り用の太い麻紐だった。
「そんな男とキミは今、恋仲だっていうじゃないか。僕にとってはこの上ない侮辱だし、腸が煮えくり返る思いだよ」
これまではのんべんだらりんとしていた口調が、一気に鋭さを増す。眉間に立ち上った青筋といい、逆上寸前の高瀬の様子に、冰は生きた心地がしなかった。
「ねえ波濤――、キミは騙されているんじゃないのかい? それともあの男に脅迫でもされていて、仕方なく付き合っているんだろう? 思いやりのあるキミのことだ。嫌と言えなくてあんな男と一緒にいるんだったら、僕が助けてあげるよ」
高瀬は弄り続けていた起爆スイッチを近くのテーブルの上に置くと、冰の隣へと腰を下ろし、両手で肩を抱き包むようにして互いの距離を詰めた。
「どうなんだ? 本当のことを言えよ――。あの男に脅迫されているんだろう?」
「……きょ、脅迫だなんて……そんなこと……。それに……龍とは単に仕事上の付き合いで……アンタが考えているような仲じゃな……」
「嘘を付くな――!」
豹変したように怒鳴り上げたと思ったら、一気にソファの上で組み敷かれて、冰は蒼白となった。少しでもこの男の気を反らそうとついた嘘が、かえって男を逆上させてしまったのだ。
「ちゃんと調べは付いているんだ。キミがあの龍と一緒に店を出るところや、同じ車に乗って帰るところを何度も目撃してる! どうせあの野郎にも……この身体を好きにさせてるんだろうが!」
「……なッ!? そんなこと……ッ」
覆い被さってくる身体を押し退けようと身を捩った瞬間に、喉元を両の掌で押さえ込まれて、呼吸もままならない。声さえ思うように発せずもがく内に、ビッ――と勢いよくシャツを引き裂かれてしまった。
「……ッ、放せ……! 高瀬……さ……!」
「誰が放すものか! キミだってこうされることが分かってて此処へ来た。そうだろうがッ!」
「……んな……わけ無……ッ」
――――ッ!?
突如、脇腹に走った衝撃に、冰はギョッとしたように硬直してしまった。
言いようのないくらいの熱さ――とでもいおうか、あるいは冷たさなのか。今、自身の腹に当てられているモノが何なのか想像も付かない。
「心配するな。ペットボトルを凍らせただけの物だよ。キミが暴れるからちょっとしたお仕置きだ」
高瀬は気味の悪い笑みを浮かべると、腹に押し当てていたそれを冰の目の前へと掲げてみせた。
確かに見たことのある天然水のペットボトルが凍って膨張したものに相違ない。害は少なかろうと、こんな意表をつくやり方を繰り出してくる高瀬に、背筋が凍る思いだった。
「さあ、じゃあそろそろお楽しみを始めさせてもらおうかね? 本当はこうせっかちになるのは情緒がなくて好きじゃないんだけれどね」
言葉に反してソワソワと逸るような笑顔が心底気味悪い。焦燥感を拭えない冰が目にしたのは、高瀬がどこからか取り出してきた荷造り用の太い麻紐だった。
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