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都市伝説のララの町!
88.ちょっと不思議な戦いの練習
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家に帰ってお土産を置き、早速メリストに戦い方を教えてと頼んだ。急なお願いでビックリしてたけど、元々教えてもらう約束だったからすぐに教えてもらえることになった。仕事は明日からだから急ぎで教えてもらうことになる。でもノープランでいきなり行くよりはいいだろう。
みつ兄とガルさんが夕飯の準備をしてくれている間に、外で教えてもらうことになった。ただ、庭も無いし家の前だと近所迷惑になる。仕方ないから少し離れたところにある空き地で教えてもらうことになった。
もちろん空き地の隣に住む人…精霊に許可は取った。
「んじゃ、始めるか。つっても簡単なものだけ軽くな。明日、筋肉痛になって動けなくなったら意味がねぇからな」
「あぁ、それでいい。よろしく」
流石に本物のナイフを使って怪我でもしたら大変だから、削る前の鰹節みたいな木でできた短剣を使って教わることになった。いつの間にこんなものまで用意してたんだ。っていうか、これこそ紙袋に入れておけばよかったのに自分で持ってたのか!?
本当にメリストってどこか抜けてるっていうか、ちょっとズレてるよな。っていうか今更だけどメリストって呪術師だよな?なんでナイフを構える姿がサマになってんだ?絶対使い慣れてるよな。まぁ人に教えられるくらいには使えるってことではあるんだろうけど。
「おい、聞いてるか?」
「え?」
「さっさと言ったとおりに構えろ。やる気が無いならやめるか?」
「えっ、あっ、ごめん、見惚れてた」
「……そう言えば許されると思ってんのか?まぁいいが」
別にそんなつもりで言ってないんだけどな。っていうか『まぁいい』のかよ!許してるじゃんそれ!
気を取り直して言われたとおりに構えた。背筋は伸ばして、足に力を入れて、重心は真ん中に、力がは入りやすいように肘は引いて……
「そのまま一回振ってみろ」
「わ、分かった。はっ…!」
おりゃっ!…ん?け、結構難しいな。この世界に来たばっかりの時にラヴェットを狩った感覚ってどんなだっけ?いや、それよりも人を殺した時の感覚を思い出すべきか。本物の剣じゃないから命を奪うつもりで行ってもいい。
……やってみるか?
「筋はいいが力の入れ方が甘いな。もっと、こう…ぶんっ!って感じで……」
「教えるの下手か?……まぁ、やってみるけど」
力の入れ方が甘い、だっけ?えっと、もっと腕に力を入れて……
(違う、肘の力は抜いて手首を固定して…)
そうか、肘まで固定したら動きが鈍って可動域が狭くなるのか。……ん?今の、メリストか?
あれぇ…?ま、いっか。とりあえず今の言葉の通りにやってみよう。
肘の力を抜いて、手首を固定して、目線をまっすぐに、相手の獲物を捉え、どこを切るか標準を定める。
なんでだろう、なんでこんなに分かる…知ってるんだ?まるで慣れてるみたいに……
「ぅおっ!急に動けるじゃねぇか!…って、急所を的確に狙ってきてるじゃねぇか!オレを殺す気か!?」
「殺す気でやらないと上達しないだろ!」
メリストは驚き防戦一方になった。とはいえそれは一時的なものだ。条件反射か、メリストは突然俺に反撃をした。いってて…、短剣を押し返されて後ろに転んだから尻が痛い…。
「ヤッベ!大丈夫か!?」
「大丈夫。力を弾かれただけなら、今の俺に力は無いから軽く済んでるし…」
って、本当になんでこんなに分かるんだろうな。なんだろう、この違和感。俺の知らないはずのことを経験したかのように理解している。特に戦い…それも殺しのことは特に。
っ……!な、なんだ?一瞬、目の前が真っ赤になった…。
「おい、大丈夫か?」
「大丈夫。もう一回お願い」
それから何度か教えてもらった。いや、教わるというより模擬戦で経験を積んだというべきか。ほんの数回手合わせして、メリストの行動が読めるようになってきて練習にならなくなってきた。力じゃ敵わないけど、技術でほぼ互角までくるのに時間は掛からなかった…のがおかしいんだって!
なんで、こんな戦い慣れてるみたいな動きが出来るんだ?最初は部活でやってたテニスと剣を振る感覚が似てるからだと思っていたけど、こんな動きは無いはずだ。やっぱりおかしい。
それに、たまに頭に浮かぶ言葉が正確なアドバイスになってる。その言葉と体の感覚で簡単とまではいかなくても動ける。
「さて、今日はここまでだな。またやりたくなったら今度は手加減無しでやってやるよ」
「分かった、ありがとう」
よかった、流石に手加減はしてたよな。これで全力だったって言われても信じられないし…。メリストに、俺に合わせるよりキツめにしてほしいって言っておこう。
家に帰るとすぐにシチューのいい匂いがしてきた。それと焼きたてのパンの匂いまで?
「よぉ、遅かったな。飯はそろそろ出来るがその前に風呂入ってこい。あぁ、二人別々でな」
「はーい」
「うす…」
さすがはガルさん、メリストがやらかす前に対策してる。え?やらかしは俺も?……人のせいにするなってことか。へーへー、俺もやらかさないように、ですねー…。って、誰と話してるんだ俺は。
メリストの後に風呂にゆっくりと入った。
疲れと緊張がほぐれるなぁ……。このミルク系の入浴剤も甘いいい匂いで安らぐし…って、そういえば今日の夕飯もミルクシチューだよな。これってもしかして…ガルさんって花の匂いとかはキツイけどミルクとか石鹸の匂いは結構好きなのかも。少なくともこういう匂いはツンとしないし。あるいはみつ兄がガルさんの鼻を労りたかったのか。
でもまぁ俺もリラックスできるし何の問題も無し!
風呂から上がってリビングに移り、リラックスしてうつらうつらとしてる俺に気付いたみつ兄が俺の頭を拭いてくれた。
「こら、ちゃんと乾かしてこないと風邪ひいちゃうよ」
「ん、ごめん…」
絶妙な力加減で頭をわしゃわしゃと拭かれて、なんか撫でられてるみたいで余計に眠気が襲う。
「あっ、こら!こんなとこで寝ないの!」
「ひゃっ!?わ、ははっ!やめてみつ兄…あはっ!」
みつ兄は俺を起こそうと急に脇をこちょこちょしてきた。おかげでバッチリ目は覚めたけど、結構強引な起こし方をするんだなぁ。
髪を拭いてもらった後、シチューと焼きたてのパンを食べた。パンを家で焼いたのは、キッチンにオーブンが付いてたから焼いてみたくなったとか。…ガルさんが。ガルさんって実は料理とか好きなんじゃないかな?
焼きたてってこともあってすごく美味しい。シチューももちろん美味しいし、何より出来立てであったかいから疲れた体に沁み渡る。
お腹いっぱいになったところで、みつ兄の部屋で一緒に寝ることになった。明日は初出勤。しっかり休んで頑張らないとな。
「おやすみ、みつ兄」
「おやすみ、こう君」
結局自分の部屋はほとんど使ってないけど、みつ兄の隣はすごく落ち着いてよく眠れるからずっとここにいたいな。
みつ兄とガルさんが夕飯の準備をしてくれている間に、外で教えてもらうことになった。ただ、庭も無いし家の前だと近所迷惑になる。仕方ないから少し離れたところにある空き地で教えてもらうことになった。
もちろん空き地の隣に住む人…精霊に許可は取った。
「んじゃ、始めるか。つっても簡単なものだけ軽くな。明日、筋肉痛になって動けなくなったら意味がねぇからな」
「あぁ、それでいい。よろしく」
流石に本物のナイフを使って怪我でもしたら大変だから、削る前の鰹節みたいな木でできた短剣を使って教わることになった。いつの間にこんなものまで用意してたんだ。っていうか、これこそ紙袋に入れておけばよかったのに自分で持ってたのか!?
本当にメリストってどこか抜けてるっていうか、ちょっとズレてるよな。っていうか今更だけどメリストって呪術師だよな?なんでナイフを構える姿がサマになってんだ?絶対使い慣れてるよな。まぁ人に教えられるくらいには使えるってことではあるんだろうけど。
「おい、聞いてるか?」
「え?」
「さっさと言ったとおりに構えろ。やる気が無いならやめるか?」
「えっ、あっ、ごめん、見惚れてた」
「……そう言えば許されると思ってんのか?まぁいいが」
別にそんなつもりで言ってないんだけどな。っていうか『まぁいい』のかよ!許してるじゃんそれ!
気を取り直して言われたとおりに構えた。背筋は伸ばして、足に力を入れて、重心は真ん中に、力がは入りやすいように肘は引いて……
「そのまま一回振ってみろ」
「わ、分かった。はっ…!」
おりゃっ!…ん?け、結構難しいな。この世界に来たばっかりの時にラヴェットを狩った感覚ってどんなだっけ?いや、それよりも人を殺した時の感覚を思い出すべきか。本物の剣じゃないから命を奪うつもりで行ってもいい。
……やってみるか?
「筋はいいが力の入れ方が甘いな。もっと、こう…ぶんっ!って感じで……」
「教えるの下手か?……まぁ、やってみるけど」
力の入れ方が甘い、だっけ?えっと、もっと腕に力を入れて……
(違う、肘の力は抜いて手首を固定して…)
そうか、肘まで固定したら動きが鈍って可動域が狭くなるのか。……ん?今の、メリストか?
あれぇ…?ま、いっか。とりあえず今の言葉の通りにやってみよう。
肘の力を抜いて、手首を固定して、目線をまっすぐに、相手の獲物を捉え、どこを切るか標準を定める。
なんでだろう、なんでこんなに分かる…知ってるんだ?まるで慣れてるみたいに……
「ぅおっ!急に動けるじゃねぇか!…って、急所を的確に狙ってきてるじゃねぇか!オレを殺す気か!?」
「殺す気でやらないと上達しないだろ!」
メリストは驚き防戦一方になった。とはいえそれは一時的なものだ。条件反射か、メリストは突然俺に反撃をした。いってて…、短剣を押し返されて後ろに転んだから尻が痛い…。
「ヤッベ!大丈夫か!?」
「大丈夫。力を弾かれただけなら、今の俺に力は無いから軽く済んでるし…」
って、本当になんでこんなに分かるんだろうな。なんだろう、この違和感。俺の知らないはずのことを経験したかのように理解している。特に戦い…それも殺しのことは特に。
っ……!な、なんだ?一瞬、目の前が真っ赤になった…。
「おい、大丈夫か?」
「大丈夫。もう一回お願い」
それから何度か教えてもらった。いや、教わるというより模擬戦で経験を積んだというべきか。ほんの数回手合わせして、メリストの行動が読めるようになってきて練習にならなくなってきた。力じゃ敵わないけど、技術でほぼ互角までくるのに時間は掛からなかった…のがおかしいんだって!
なんで、こんな戦い慣れてるみたいな動きが出来るんだ?最初は部活でやってたテニスと剣を振る感覚が似てるからだと思っていたけど、こんな動きは無いはずだ。やっぱりおかしい。
それに、たまに頭に浮かぶ言葉が正確なアドバイスになってる。その言葉と体の感覚で簡単とまではいかなくても動ける。
「さて、今日はここまでだな。またやりたくなったら今度は手加減無しでやってやるよ」
「分かった、ありがとう」
よかった、流石に手加減はしてたよな。これで全力だったって言われても信じられないし…。メリストに、俺に合わせるよりキツめにしてほしいって言っておこう。
家に帰るとすぐにシチューのいい匂いがしてきた。それと焼きたてのパンの匂いまで?
「よぉ、遅かったな。飯はそろそろ出来るがその前に風呂入ってこい。あぁ、二人別々でな」
「はーい」
「うす…」
さすがはガルさん、メリストがやらかす前に対策してる。え?やらかしは俺も?……人のせいにするなってことか。へーへー、俺もやらかさないように、ですねー…。って、誰と話してるんだ俺は。
メリストの後に風呂にゆっくりと入った。
疲れと緊張がほぐれるなぁ……。このミルク系の入浴剤も甘いいい匂いで安らぐし…って、そういえば今日の夕飯もミルクシチューだよな。これってもしかして…ガルさんって花の匂いとかはキツイけどミルクとか石鹸の匂いは結構好きなのかも。少なくともこういう匂いはツンとしないし。あるいはみつ兄がガルさんの鼻を労りたかったのか。
でもまぁ俺もリラックスできるし何の問題も無し!
風呂から上がってリビングに移り、リラックスしてうつらうつらとしてる俺に気付いたみつ兄が俺の頭を拭いてくれた。
「こら、ちゃんと乾かしてこないと風邪ひいちゃうよ」
「ん、ごめん…」
絶妙な力加減で頭をわしゃわしゃと拭かれて、なんか撫でられてるみたいで余計に眠気が襲う。
「あっ、こら!こんなとこで寝ないの!」
「ひゃっ!?わ、ははっ!やめてみつ兄…あはっ!」
みつ兄は俺を起こそうと急に脇をこちょこちょしてきた。おかげでバッチリ目は覚めたけど、結構強引な起こし方をするんだなぁ。
髪を拭いてもらった後、シチューと焼きたてのパンを食べた。パンを家で焼いたのは、キッチンにオーブンが付いてたから焼いてみたくなったとか。…ガルさんが。ガルさんって実は料理とか好きなんじゃないかな?
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