【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

輝石玲

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都市伝説のララの町!

87.ようやくララの町の観光!

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 昼寝して夕食を食べてみつ兄と眠って、ぐーたらしてたらあっという間に次の日の朝になっていた。
 しっかり休んだおかげで体も回復したし、今日こそ町を見て回りたい!ガルさんとメリストは既に町に行ったけど、俺とみつ兄はまだ町に出ていない。

 メリストに留守を任せて、ガルさんにガイドしてもらって、みつ兄とララの町探索だ!




 家から出てすぐに一度ビックリ。ゲームでもこの町に来た時も見た光景だけど、やっぱり凄いものは凄い。ツリーハウスみたいな住宅街。高低差のある土地に家が不規則に並んでいる。
 太陽の代わりに町を照らす大きな 向日葵ひまわり、街灯として道の端に吊られた鬼灯ほおずき、蛍のように浮かぶ蒲公英たんぽぽの綿毛。花壇はくり抜かれた切り株、点在する藤棚のトンネル、雪のように降る桜、区画ごとに植えられた香りの強い花。

 香りの強い花?

 ふとガルさんの方を見ると、いつの間にか匂いを遮断する黒マスクを着けていた。まぁ、だよな。
 植えられてる見える範囲の花は分かるものでラベンダー、カモミール、金木犀がある。確かに全部匂い強いな。一番外に出たらいけない人ってガルさんなんじゃないか?

「えっと、ガルさん、花の匂い…」
「マスクがあれば抑えられる。少しずつ鼻を慣らさないといつまで経ってもこのままだしな」
「匂いで気持ち悪くなっちゃったら無理せず言ってくださいね?」
「心配すんな、そこまで酷いわけじゃ無い」

 心配するに決まってるよ。春の大陸に来てすぐ匂いキツくて具合悪くしてたんだから。



 大丈夫、大丈夫と何度も言うガルさんの言葉をとりあえず信用して、地下二階に行く事にした。今いる住宅街の一つ下の層、商店街だ。

 居住区を道なりに下って、白いワープホールみたいな場所に立った。足元からゾワワって感じがしたと思うと、あっという間に二層に到着していた。ララの町限定の移動手段、本当に不思議すぎる。
 普通なら空間に干渉するのは強い魔力と才能が必要で複雑な魔法の式がうんたらかんたら…って感じで出来ないはずのワープ。それをこんな簡単に、しかも魔力の無い人でさえワープ出来るなんて精霊って凄いなぁ…。




 商店街はザ・和風。木造の屋台のような店が町の中央に向かうように並んでいる。地図で見ると花火のような形だ。
 自分の店の中に家がある人もいるから、住宅街に住んでる人が全員じゃ無い。そう考えると、いくら種族混合だからって結構な人数が暮らしている。半数以上が精霊だから納得できるけど。精霊はこの町以外にいないし。



 光る鬼灯が提灯のように下げられた町並みを三人で歩いていく。
 俺たちが降りた場所はスイーツや硝子細工なんかが売られているちょっとおしゃれなとこだ。甘い匂いが漂い、色々なものが光を反射してキラキラしている。星が売られてるみたいにキラキラしている。

「「わぁ……!」」

 っと、ゲームで見たことあるのに初見のみつ兄と同じ反応になっちゃった。でもそれだけこの場所は現実離れしている。


「おや、見ない顔ですね。よければこちらをどうぞ」

 急に声をかけられ、声のした方を見ると黄色い精霊がいた。精霊が差し出す手にはおしゃれなキャンディポットに入れられた色とりどりの金平糖。あっ、ゲームにも金平糖くれる精霊いた!この人(?)だ!

「ありがとうございます!」

 金平糖の入ったポットを受け取ると、精霊は俺の頭を撫でた。な、何これ…。なんかすっごい、ほわわぁってなる。体がポカポカになって疲れが何も無くなった。これ、回復してくれたのか?

「ほうほう、なるほど。貴方は他の世界で私たちを知っているようですね」

 え、記憶読み取れるのは聞いてない。ま、待って、精霊ってもしかして人間の常識と結構かけ離れてる?流石に記憶を読まれるのは色々と恥ずかしいよ!?

「えーっとですね、精霊さん。人間は記憶を覗かれるのって恥ずかしいって感じてですね……」
「ふむ、そうだったのですか。それは失礼いたしました。なにせ私は誕生して百年も経っていないので、人間のことに疎いのです」

 ひゃく…?ま、まぁ、精霊だもんな。人間もこの町にいるやつとしか交流が無いだろうし疎いのも分かる。これっきりで記憶を覗かなくなればいいか。




 精霊にお礼を言って離れてから、貰った金平糖をみつ兄と一つずつ食べた。ガルさんにも分けたかったけど、外でマスクを外すと大変なことになるだろうから家に帰ってからにしよう。メリストにも分けたいし。


 桜のアイスティーを買って、二層の中心にある大きな花畑に囲まれた公園のベンチに座った。ここに来るまで結構距離があって、なかなかいい散歩になった。まぁ、みつ兄はちょっと疲れてるけど。やっぱり体力無さすぎない?

「コウセイはここを物語で見たことあるんだよな。初めて見たミツルは…見て分かるが、楽しいか?」
「はい!とっても!」
「ガルさん、いくら見たことあるって言っても来るのは初めてなんだから俺だってウッキウキだよ?」
「そうか。ま、二人とも楽しそうでなによりだ」

 不満があるとすれば、この桜のアイスティーがそこまで美味しくないってことくらいだ。香りは桜のいい匂いなんだけど、俺が紅茶をあんま飲んだこと無いからかイマイチ味が美味しいとは思えない。オトナの味ってやつなのかな。
 なんか俺がお子様舌みたいでちょっと癪だけど。


 休憩を終えて、仕事を登録しに三層に行った。人手の足りない『町の警備』に俺を登録してもらって、これで明日から俺も働くことになる。帰ったらメリストに戦い方をしっかりと教えてもらおう。


 お土産に花が入ったクッキーを買って家に帰った。本当はもっと回りたかったけど、町は広くて徒歩じゃ何時間も掛かりそうだから途中で帰るしか無かった。本当に広すぎて、この町が木の中にあるってことを忘れそうだ。

 でも楽しかった!ゲームだ画面越しに見てた光景が目の前に広がって、実際に触れたり食べたりすることもできた。それになにより楽しそうなみつ兄を見れたことが一番楽しかったな。

 ゲームで知った綺麗な景色がこの町にはまだたくさん残ってる。また一緒に見に来ようっと。
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