【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

輝石玲

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都市伝説のララの町!

81.こう君の秘密(光流)

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 こう君が先に寝た後、僕とガルさんとメリストさんはリビングに集まった。理由は簡単、町に入る前に見た『あの子』についてだ。幼くて恐ろしい、こう君の中にいる『あの子』。

 椅子に座り、飲み物を用意して話す覚悟を決めた。この事は僕とやと君と父さんしか知らないこと、他の誰にも言ってはいけなかったこと。こう君自身も知らないこう君の秘密をあの精霊が暴いてしまった。

「ミツル、昼間に見たアレはなんだ?コウセイとは別人のように見えたぞ」
「アイツとは喋り方も表情も立ち振る舞いもどこか違った。何かあるならオレたちにも教えろ」

 隠せない。例え今隠しても、何かあった時またごまかす事は出来ない。





 僕はゆっくりと、こう君の中にいる『ヒカル君』の事を語った。



 最初に何かおかしいと思ったのは、こう君が小学生になったばかりの頃だ。
 学校で突然暴れ出し、その後に気絶した。その時はクラスメイトの幼稚なイジメで何人かの子供が泣いていたらしい。それを見たこう君もターゲットになりそうになった。そんな時、急に暴れ出したらしい。他にも自身や家族、友達に危害が加えられそうになると決まって暴れ、そして倒れて

 しばらくして分かったこと、それはこう君がいわゆる多重人格者だと言うことだ。父さんは別人格を区別するために『ヒカル』と名付けた。

 ヒカルは表に出てる時の記憶しか無く、言葉もほとんど分かっていない。そして誰かを傷付けたり殺したらいけないことも理解していなかった。こう君は、本当はヒカル君の時に人を殺したことがある。不運な事故だったとは言えヒカル君は何も悪気は無さそうにしていた。
 そんなヒカル君と何度か話すことが出来た。その時に知ったのは、ヒカル君はこう君が思っている『守りたい』という心だけを知ってるらしい。それ以外は、こう君の名前すら知らなかった。守りたい意思と守りたい人。それだけが『ヒカル』という人格を作っていた。


 ヒカル君が起こした事件は精神疾患として処分されていた。本人にヒカル君の話をしようとしたら、強制的に人格が切り替わった。呼ばれたら表に出られるらしい。つまり、本人にヒカル君の存在を伝える事は出来ない。

 それでもやっぱり体は同じで、この世界に来てすぐに人を殺す姿を見て、やっぱり同じ人なんだと思った。なんであの時ヒカル君が出なかったのかは分からないけど、それでも人を殺す、傷付ける感覚は覚えているんだと感じた。
 なんとなく、ヒカル君が出てくる条件が変わり始めてると思った。だってヒカル君は消えてたわけじゃない。森で警備隊を殺した時はこう君のままだったけど、宿



 春の大陸港町の宿に泊まった夜明け前、部屋から居なくなっていたこう君が戻った時、微かに血の匂いがした。浴衣は汚れてないし怪我も無い。
 声を掛けて帰って来た一声で分かった。

「わるいやつ、ころしてきたよ」

 そう言って笑い、ベッドに戻ったヒカル君は静かに物語を読み聞かせるように語った。
 大切な人を奪おうとした人を殺したと。こう君は苦しくて苦しくて眠ってしまったと。証拠は残さず、返り血を浴びないよう出血を抑えて殺したと。ヒカル君殺しの天才、なのだろうな。こう君はその体の感覚を覚えただけ。

 殺人の才能を持っているのはヒカル君だ。




 話を聞いたガルさんとメリストさんはポカンと口を開けて驚いていた。似た兄弟なだけあって、驚いた顔もそっくりだ。

「多重人格…実在したのか」
「オレは見たことあったが、記憶はともかく知識の共有もほとんどされないってのは見たこと無ぇな。それだけヒカルってやつはコウセイに存在をバレたく無かったのか」

 メリストさんの言う通りだ。ヒカル君はこう君のための人格、だからこそ自分の存在がこう君を苦しめると考えた。ヒカル君にも直接言われた。『自分の存在を隠して欲しい』と。

 でも、これは気がする程度だけど、ヒカル君はこう君と同化していってる気がする。こう君が僕らのために人を傷つける事を躊躇わなくなったから。
 それはヒカル君の影響でこう君が変わってるって意味じゃ無い。こう君が手を汚す事を受け入れ始めた事で、ヒカル君の存在意義が無くなっていってるってことだ。

 こう君の代わりに手を染めるのがヒカル君の存在の意味なら…。



 ヒカル君に消えて欲しいわけじゃ無い。こう君を守ってくれた事実も、僕にとってヒカル君が可愛い弟の一部であることも否定できない。でも、これ以上こう君の知らないところで人殺しが起きるのも良しとすることは出来ない。

「お願い、ガルさん、メリストさん。もしヒカル君がこの町で出て来て誰かを傷付けたら、こう君は何も知らないままこの町を追い出されちゃう。だから、ヒカル君に会ったら止めて欲しいんです」
「あぁ、分かった」
「もちろんだぜ」

 この二人がいてくれて本当に良かった。今までたくさん守ってくれた分、今度は僕がこう君を守りたい。でも僕に殺しや戦いは出来ない。だから、二人の助力がすごく心強い。


 この秘密は、こう君には何がなんでも隠し通さなきゃ。それが僕がこう君に出来ること。
 ごめん、ヒカル君。こう君のためならもう二度と起きないで。
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