【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

輝石玲

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都市伝説のララの町!

80.ララの町、初日はぐったり

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 ララの町に来て荷物を置き、ガルさんが一人で町を見て回ることになった。それまで俺たちは新しい家で待機だ。



 待機、なんだけど……気まずいなぁ、なんか。いやまぁ理由は分かってるよ?メリストが俺とみつ兄から距離取ってるし、みつ兄は俺に抱きついて離れないし。

 精霊の尋問のせいで、メリストが俺に惚れてるって知っちゃったからなぁ…。

 たぶんメリストは隠そうとしてた。俺にみつ兄がいるから、困惑させたり関係が変わるのが嫌だから。だと思う…
 気を使わせたんだと思うけど、俺もどうすれば良いか分からないのは事実。だって分かんないんだもん。好かれてるのは嬉しいけど気持ちに応えられない、かと言ってフれば元の関係に戻れるか分からない、でもこのまま何も言わないのも何も進展しない、最悪話すことすら難しくなる。

「こう君、顔に全部出てる」
「え?」
「過度な心配するより先に踏み込んでみたら?何もしないことが一番ダメでしょ?」

 それは、分かってるけど。でもなんて言うのが正解か分からないし…。


「……なぁ、コウセイ」
「えっ!?な、何……?」
「あー、気ぃ使わせて悪ぃな。だがオレは別に今まで通りでいいんだ。どの道オレは好いたやつと付き合うって…トラウマがあるからな。ガレアンの母親とは一応、恋愛結婚だったからな」

 そっ……かぁ………。そんなこと言われると何も返せないな。
 婚約者をまぁ、言い方悪いけど寝取られてるわけだもんな。いくら当時とは状況が違うとは言えトラウマになってもおかしくは無いか。

「分かった、じゃあ今まで通りで」
「あぁでも、前言ったのはもう無理だな」
「え?」
「いつかお前を抱くっつったが、行為の意味が変わってくるからな。ただの性欲じゃあ片付けられなくなる」

 えぇ…それはそれで違くない?いやでもメリストからしたら苦しい行為になるのか?片思い相手と体を重ねるって、想像もできないけど…。

「メリストが嫌ならそれでもいいよ」
「は?オレが嫌なわけ無ぇだろ!ただ、お前はいいのかよ。一方的に感情を押し付けられるようなことになるんだぞ?」
「そうなのか?でも俺、確かにメリストの気持ちに応えられないけど、受け止めることは出来るぞ?お前の欲を受け止めるだけならルール違反にならないし」

 って、なんか俺が必死になってるみたいだな。実は結構メリストに抱かれるのを期待してたり…するんだよな。
 捕まってた時の馬鹿みたいな煽り合いとか、ただ気持ちいいことだけに支配される感覚とか、みつ兄とのいちゃいちゃえっちじゃ味わえないものがある。

 だから……

「メリストが我慢する必要は無い」
「……お前、相当クズだな。パートナーの目の前でそんなこと言うか?普通」
「僕?構いませんよ?淫らなこう君も好きですし♡」

 あーもーこの全肯定兄はーー!そりゃあ嫉妬なんてしないだろうな!したい事をしてる俺が好きみたいに言われたら嫉妬して欲しいなんて見当違いな事思えないよ!

「あ、こう君、顔真っ赤♡」
「誰のせいだと…!」

「……オレ、別の部屋にいるわ」

 メリストは冷めた笑顔で部屋を移した。まぁ目の前でイチャつかれていい気はしないか、流石に。





 しばらくしてガルさんが帰って来た。かなり時間が掛かってたな。

「ただいま。色々分かった事があるからリビングに集合しよう」

 丸いテーブルを囲んでそれぞれが席に着いた。ガルさんがテーブルの上に並べたのは、見た事ない硬貨とララの町の地図…が三枚。

「この町が三層になってるなんて聞いて無えぞコウセイ」
「サプラーイズ。木の中にあることすらサプライズだったのに『この町、三回建てだよ』なんて言えないもんな」
「はぁ…イタズラ小僧が」

 あ、ちょっと怒ってる。
 とりあえず地図を四人で見た。一番上の階、今俺たちがいる階は居住区だ。家がたくさん並んでいる。真ん中の階は商店街、買い物は地下二階で大体揃う。一番下の階はその他の施設、病院や娯楽施設の他、儀式的な場所もあるらしい。
 一層で町一つ分の規模なのにそれが三層もある。都市伝説上の秘境と言えど大都市だ。それもそのはずだが。だってここに住むのは人間より精霊が多いからな。

 そしてもう一つ、俺以外は見たことのない硬貨。そう、ゲームだと通常の通貨と違って特別なアイテムと交換するための硬貨だ。この町でしか使えないお金。
 この町で買い物をする時はこの花の模様の硬貨を使う必要がある。今持ってる世界共通の硬貨は大切に取っておかないとだ。もしこの町にない何かを買う時はこの残ってる通貨を使うことになるだろうから。



 ガルさんはこの町を回ってる間に職を見つけて来たらしい。はやっ!
 なんでもララの町と外を繋いで物資を運ぶ人間が不足してるらしい。その体力や筋力でぜひ働いてくれとスカウトされたとか。凄いなぁ…。まぁでもこの町の人からしたら、この町に入ってこれてる時点で信用していい人ってことだもんな。



 初日で家を手に入れマップを把握し仕事を見つけた。こんな順調に進むなんて思ってもなかったけど、これでしばらくの不安は無さそうだ。

 今日はやけに疲れたから早く休もう。食事を取った後、一人一部屋あるから自室に行ってぐっすり眠った。
 一人部屋、なんだか慣れないな。今は疲れてるから嫌でも眠りそうだけど、これから一人で眠れるかな。なんて幼い事を考えて一日が終わった。
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