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都市伝説のララの町!
79.色々といい性格の精霊
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目の前に現れた精霊は『来訪の目的と誠意を見せよ』と告げた。大丈夫、ここに来た理由は害のないとこであれば通るはず。
「ここに来たのは、この町を定住地にしたいからです」
“ほう?何故ここを選んだのだ?”
「……俺たちが、表の世界で生きられないからです」
“何故?”
精霊に俺たちに何があったのかを簡潔に話した。俺たちが加害者にも被害者にもなって来たこと。
メリストが己の不自由の中で取り返しのつかないことをしたこと。ガルさんが過去の被害のせいで他人に害を及ぼしたこと。みつ兄が理不尽な目から逃げられなかったこと。俺が最愛のために手を汚したこと。
精霊は大人しく話を聞いていた。でも、ここまで簡潔に説明したのは俺だ。精霊は必ず本人の口からの説明を求めてくるだろう。
話を聞いた精霊は、最初にみつ兄を指差した。
“汝、己の穢れをどう思う?”
「…今の僕を作る、ほんの一部です。自分でも汚れた自分が嫌いですけど、それを否定したら好きな人に愛されている自分がいなくなってしまいますから」
みつ兄…そんな風に思ってたんだ。強いな、そしてなんか嬉しいな。
“強がりだが…誠の思いであるな。では次は汝”
そう言って次に指を刺したのはガルさん。
“汝、己の過ちは何故起こったと思う?”
「俺含めた多数のせいだ。クーター、兄貴、俺、他にもいるだろう。だが誰のせいにしたところで俺のしたことは変わらない。何故起こったか、それはこの世に悪いヤツがいるからだろう。…俺含めてな」
自分も他人もみんな悪い、その通りだろう。だって、ガルさんひとりならガルさんが誰かに害を及ぼすことも無かったと思うから。
“なるほど、己を責めるでも無く、他に責任転嫁するでも無く、総てを悪とするか。では次は汝”
そう言って次に指を刺したのはメリスト。
“汝、悪き心を捨てられるか?”
「今更、簡単に捨てるなんて出来ねぇよ。でも封じることなら出来るぜ?大切な仲間のためなら、命を賭けたって構わねぇ」
メリスト…そんなに俺たちのことを大切に思ってくれてるんだ。でも命を賭けるのはやめて欲しいかな。死んでほしくないし。
“嘘では無いが、何か言葉を濁したな?包み隠さず答えよ。汝、誰の為に命を賭ける?”
「そ、れは………」
え………?メリスト?なんで俺を見て……
「っあぁ、クソッ!今は俺の命はコウセイのもんだ!」
「はぁっ!?なんでっ!?」
「なんでって…」
“答えよ”
「性格悪ぃぞ精霊とやら!」
顔を赤くして困惑するメリストと、頭を抱えるガルさん、なんかイラついてるみつ兄。状況が分かってないのって俺だけ?
メリストはしばらく吃ると、ヤケクソみたいに突然叫んだ。
「惚れてるからだ!これでいいだろもう!?」
「……え?」
惚れ…え?どういうこと?メリストが、俺に、惚れてる!?
しばらくぽかーんとしながらメリストを見ていた。いやだって俺に惚れる要素どこ?もしかして、優しくされたことが少ないから、俺が優しくしてそれで惚れたとか?だとしたら思い込みじゃ……
“…じ、汝、答えよ”
「え、あっ、俺!?」
“そうだ汝、二度と血で手を汚さぬと誓えるか?”
「それは無理です。大切な人に危害を加える人は殺します。でも、何も悪く無い人は殺したり傷付けたりしませんよ」
“ほう……ならばもう一人にも聞いてみよう”
え?もう、ひと…り………?
精霊が俺の頭に手をかざすと、段々と意識が遠のいて行った。
ーーーーーーーーーー
あれ?なんで、おきたんだろう。
“汝、我が問いに答えよ。汝、何故その手を血に染め続けた?”
「ん?えっと、むずかしいことば わからないよ」
“…お前はなぜ、人を殺す?”
なんで…そんなの、かんたん。『こーくん』と、こーくんの好きを まもるため。『ヒカル』はそのために たくさんちをみてきた。
「好きをまもるため!」
“ほう…汝は幼く純粋で、殺意に満ち溢れているな。だが、汝の『好き』とやらに害を加えられぬのであれば、汝が目覚める事は無い。そうだな?”
「んー?やっぱりことば、むずかしい!」
みたことない、ヒトじゃない『なにか』とはなすのってたいへん!ことばわからないんだもん。
なんでおこされたか、わからない。けど、あぶなくないなら、『ヒカル』はまたねむる。だって、このからだはこーくんの、だからね。
ーーーーーーーーーー
頭がクラクラする。足元が浮くような感覚で、しっかり立てない。
「こう君!こう君、大丈夫?」
「みつ、兄………」
フラフラで立つ俺をみつ兄が支えてくれた。今、倒れそうになってたのかな。普段はこんな事無いのに急にどうしたんだろう。俺、体調悪いのかな。でもそんな感じはしないし…。
“……審査は終わった。嘘偽り無い言葉、感じられぬ悪意、汝らは資格ありと判断した。さぁ、着いてくるが良い。汝らの新しき住処を与えよう”
よ、よかった…。なんかよく分からないけど、認められたんだ。これで悪い人は来れない町で安心して暮らすことが出来る。
精霊の案内について行って、大きな桜の木の中に入った。三人とも凄いビックリして口が開きっぱなしになっている。
俺は知ってたからそこまで驚かなかったけど、それでも木の中の光景は圧巻で、めちゃくちゃ感動する。光る木の実や蔦、白い木と白い煉瓦の家、様々な施設とそこら中に咲く花。凄く幻想的だ。
精霊の案内に着いていくと、立派で綺麗な家に連れてこられた。
“ここに住むと良い。その他の必要な物や金銭は自力で調達する事。そして町の外に出たい時は我に声をかけること”
「は、はいっ!ありがとうございます!」
まさかの家ゲット!?それは完全に想定外!
家の鍵は認証式らしく、家が持ち主を識別するらしい。
そんな家に入ると、既に最低限の家具は揃えられていた。テーブルと椅子、空の棚、ハンガーと物干し竿、洗濯桶、ベッド……。揃える物は皿とか衣類とか食事とか、そんな程度だろう。
想像以上の歓迎と新しい生活に、凄く興奮してきた。これからこんな素敵な場所で暮らすんだって、不自由な身であることを忘れるくらいには期待に溢れていた。
それにしても、さっきの目眩はなんだったんだろう?疲れてるのかな、今日は早く休もう。
「ここに来たのは、この町を定住地にしたいからです」
“ほう?何故ここを選んだのだ?”
「……俺たちが、表の世界で生きられないからです」
“何故?”
精霊に俺たちに何があったのかを簡潔に話した。俺たちが加害者にも被害者にもなって来たこと。
メリストが己の不自由の中で取り返しのつかないことをしたこと。ガルさんが過去の被害のせいで他人に害を及ぼしたこと。みつ兄が理不尽な目から逃げられなかったこと。俺が最愛のために手を汚したこと。
精霊は大人しく話を聞いていた。でも、ここまで簡潔に説明したのは俺だ。精霊は必ず本人の口からの説明を求めてくるだろう。
話を聞いた精霊は、最初にみつ兄を指差した。
“汝、己の穢れをどう思う?”
「…今の僕を作る、ほんの一部です。自分でも汚れた自分が嫌いですけど、それを否定したら好きな人に愛されている自分がいなくなってしまいますから」
みつ兄…そんな風に思ってたんだ。強いな、そしてなんか嬉しいな。
“強がりだが…誠の思いであるな。では次は汝”
そう言って次に指を刺したのはガルさん。
“汝、己の過ちは何故起こったと思う?”
「俺含めた多数のせいだ。クーター、兄貴、俺、他にもいるだろう。だが誰のせいにしたところで俺のしたことは変わらない。何故起こったか、それはこの世に悪いヤツがいるからだろう。…俺含めてな」
自分も他人もみんな悪い、その通りだろう。だって、ガルさんひとりならガルさんが誰かに害を及ぼすことも無かったと思うから。
“なるほど、己を責めるでも無く、他に責任転嫁するでも無く、総てを悪とするか。では次は汝”
そう言って次に指を刺したのはメリスト。
“汝、悪き心を捨てられるか?”
「今更、簡単に捨てるなんて出来ねぇよ。でも封じることなら出来るぜ?大切な仲間のためなら、命を賭けたって構わねぇ」
メリスト…そんなに俺たちのことを大切に思ってくれてるんだ。でも命を賭けるのはやめて欲しいかな。死んでほしくないし。
“嘘では無いが、何か言葉を濁したな?包み隠さず答えよ。汝、誰の為に命を賭ける?”
「そ、れは………」
え………?メリスト?なんで俺を見て……
「っあぁ、クソッ!今は俺の命はコウセイのもんだ!」
「はぁっ!?なんでっ!?」
「なんでって…」
“答えよ”
「性格悪ぃぞ精霊とやら!」
顔を赤くして困惑するメリストと、頭を抱えるガルさん、なんかイラついてるみつ兄。状況が分かってないのって俺だけ?
メリストはしばらく吃ると、ヤケクソみたいに突然叫んだ。
「惚れてるからだ!これでいいだろもう!?」
「……え?」
惚れ…え?どういうこと?メリストが、俺に、惚れてる!?
しばらくぽかーんとしながらメリストを見ていた。いやだって俺に惚れる要素どこ?もしかして、優しくされたことが少ないから、俺が優しくしてそれで惚れたとか?だとしたら思い込みじゃ……
“…じ、汝、答えよ”
「え、あっ、俺!?」
“そうだ汝、二度と血で手を汚さぬと誓えるか?”
「それは無理です。大切な人に危害を加える人は殺します。でも、何も悪く無い人は殺したり傷付けたりしませんよ」
“ほう……ならばもう一人にも聞いてみよう”
え?もう、ひと…り………?
精霊が俺の頭に手をかざすと、段々と意識が遠のいて行った。
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あれ?なんで、おきたんだろう。
“汝、我が問いに答えよ。汝、何故その手を血に染め続けた?”
「ん?えっと、むずかしいことば わからないよ」
“…お前はなぜ、人を殺す?”
なんで…そんなの、かんたん。『こーくん』と、こーくんの好きを まもるため。『ヒカル』はそのために たくさんちをみてきた。
「好きをまもるため!」
“ほう…汝は幼く純粋で、殺意に満ち溢れているな。だが、汝の『好き』とやらに害を加えられぬのであれば、汝が目覚める事は無い。そうだな?”
「んー?やっぱりことば、むずかしい!」
みたことない、ヒトじゃない『なにか』とはなすのってたいへん!ことばわからないんだもん。
なんでおこされたか、わからない。けど、あぶなくないなら、『ヒカル』はまたねむる。だって、このからだはこーくんの、だからね。
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頭がクラクラする。足元が浮くような感覚で、しっかり立てない。
「こう君!こう君、大丈夫?」
「みつ、兄………」
フラフラで立つ俺をみつ兄が支えてくれた。今、倒れそうになってたのかな。普段はこんな事無いのに急にどうしたんだろう。俺、体調悪いのかな。でもそんな感じはしないし…。
“……審査は終わった。嘘偽り無い言葉、感じられぬ悪意、汝らは資格ありと判断した。さぁ、着いてくるが良い。汝らの新しき住処を与えよう”
よ、よかった…。なんかよく分からないけど、認められたんだ。これで悪い人は来れない町で安心して暮らすことが出来る。
精霊の案内について行って、大きな桜の木の中に入った。三人とも凄いビックリして口が開きっぱなしになっている。
俺は知ってたからそこまで驚かなかったけど、それでも木の中の光景は圧巻で、めちゃくちゃ感動する。光る木の実や蔦、白い木と白い煉瓦の家、様々な施設とそこら中に咲く花。凄く幻想的だ。
精霊の案内に着いていくと、立派で綺麗な家に連れてこられた。
“ここに住むと良い。その他の必要な物や金銭は自力で調達する事。そして町の外に出たい時は我に声をかけること”
「は、はいっ!ありがとうございます!」
まさかの家ゲット!?それは完全に想定外!
家の鍵は認証式らしく、家が持ち主を識別するらしい。
そんな家に入ると、既に最低限の家具は揃えられていた。テーブルと椅子、空の棚、ハンガーと物干し竿、洗濯桶、ベッド……。揃える物は皿とか衣類とか食事とか、そんな程度だろう。
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