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春の大陸の最奥へ!
77.目的地手前、カノンの村
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木漏れ日が差して目が覚めた。野宿だから当たり前だけど寝心地は良くない。それでもぐっすり眠れたから昨日より体が軽く感じる。
携帯食を朝食に食べて町に向かった。
それからは予定通りの順調な旅をした。馬車で町から町へ移動しては一泊休む。そうやって移動して、半月くらいでカノンの村に到着した。
小さな秘境、カノンの村。他の町とは遠く離れた確率した村だ。独特の風習があって、あまり人はここに来ない。そんな村の更に森の奥、興味本位で踏み込めば命の保証は無く、どんな目に遭うかも分からない。
村の入り口にある苔むした石の煉瓦のアーチを潜り、同じような塀で囲われた村に入った。
この村の風習や客人への対応はゲームで知っている。ララの町に行きたいと言っても止める人は誰もいない。ただ『命を捨てに人が来た』と、それしか思わない。
それでも客人は村の習わしに従わなければならない。
「ようこそいらっしゃいませ。ここはカノンの村でございます」
村に入ってすぐ、この村の人だと分かりやすい格好の女の人が丁寧な挨拶をした。
目をスッポリと隠すオレンジのベールを被り、同じ色のタイトなロングワンピースを着ている。肌の露出は口元しか無く、緊張するほど姿勢が綺麗だ。
「お客様には禊をして頂く仕来りです故、こちらへお願い致します」
「は、はい……」
オレンジの女の人の案内について行くと、村の入り口のすぐ左側にある滝の側についた。そこには白いベールと服の男女一人ずつが立っていた。オレンジの女の人は深々とお辞儀をしてその場を離れた。
「ようこそおいでました。こちらはカラの滝でございます。滝の麓にあります泉で身を清め、神霊様の加護を頂く事でここより先に踏み入る資格を得て頂きます」
白い女の人が禊の説明をしている間に、白い男の人が着替えを持って来た。着物とか袴の下に着るような白くて薄い服。
「こちらの襦袢に着替えて頂き、禊の間に持ち込まれたお荷物や衣服の全てを浄化させて頂きます。こちらへどうぞ」
白い男の人について行って竹の小屋に入ると、荷物をカゴに入れて、脱いだ服もカゴに入れた。そして渡された服に着替えて小屋を出た。
泉の側で跪いて祈る女の人。男の人の案内で一人ずつ泉に入った。俺、みつ兄、ガルさんの順番で。
だが、最後に入ろうとしたメリストは、泉に弾かれて尻餅をついた。見た感じ、手足が痺れてるようだ。
それに気付いた白い二人はメリストに魔法を展開した。え、何?何が起きた!?
「なんということでしょう…!魔のものがこの場に堂々と訪れるなど……!」
「あぁ、あってはならない。不浄たる魔の人形を通すなどあってはならない…!」
あっ、メリストが魔法生物だからか!そりゃあ弾かれるよな!でもどうしよう、メリストが危険じゃ無いって信じてもらうにはどうすればいいんだろう。
「オレが不浄だってのは分かってる。自分の意思じゃ無ぇとは言え、一度魔に落ちてるからな。だがオレは死んだら怒られんだよ」
「……己の無害を主張するのならば、その身が爛れようとも泉に入るのです。加護を受け入れる事が出来たその時、貴方は人の世のものと認められましょう」
「なんだ、そんなことでいいのかよ」
拍子抜けしたように笑って泉に向かうメリスト。……話、聞いてたか?ただれるって言ってたんだぞ!?ただでさえ触れただけで痺れたのに、そんな場所に浸かれって!
そりゃあメリストが人から弾かれるのは嫌だけど、でもそれは、メリストに痛い思いをしろって事じゃ無いのに…。
俺がそんなことを考えてるなんてつゆ知らず、メリストは泉に入った。足だけ入った状態で苦しそうな顔をしてるのに、そのまま深いとこまで来ないといけないんだ。
「っ……な、んだ。思ってたより、ラクじゃ無ぇか……」
段々と俺たちのいる深みに来るメリスト。近付いて分かったけど、メリストの水に浸かったところから『シュウ……』って嫌な音がした。これ、焼けてる音……?
「メリスト!」
「兄貴!」
「メリストさん……!」
「ん?三人ともそんな顔してどーした?ちょっとヒリヒリする程度だっての」
そう言って水に浸かっていた腕を見せた。聞こえた音とは違って、本当にかぶれただけみたいに赤くなってるだけだ。それもどんどん腫れが引いて元の肌色に戻っている。
滝のすぐ下まで来る頃には特に痛そうにすることも無く、本当に何とも無さそうだ。
「……本当に加護を得るとは、なんてこと…いえ、失言で御座いますね。これで全員に加護が行き渡ったことを確認致しました」
「これより正式なお客様としておもてなしさせて頂きます」
えっと…とりあえず村に入れるってこと?メリストも加護を貰ったみたいだし、無茶をしたけどそのおかげで進めるってこと?良いやら悪いやら…。
それでもメリストが無茶をしたことは変わらない。いつの間にか綺麗にしてもらった服に着替えながらネチネチと三人がかりで説教した。そりゃあ離れ離れになったりメリストが糾弾されるのは嫌だよ?でも…メリストが人より諦めないといけないことが多いのも嫌だ
着替え終わってまた小屋を出ると、今度は緑のベールと服の男の人が宿泊施設まで案内してくれた。宿泊料は取られないけど、食事や着替えは自分で用意する必要があるらしい。
素朴な和室、リゾートとは違って古民家のような趣のある部屋。リビングにはちゃぶ台と座布団が並べられ、隣の部屋には布団がきれいにに並んでいる。
ここで一泊したら、夜明けと共にララの町に向かう事になった。だから、早めに夕飯を食べ、日が落ちて間も無く眠った。
人数分ちゃんと布団を引いてもらっていたのに、身を寄せ合って一枚は誰も使わなくなった。そんな俺たちなら、きっと大丈夫。なんて確信の無いことを信じてその日は終わった。
携帯食を朝食に食べて町に向かった。
それからは予定通りの順調な旅をした。馬車で町から町へ移動しては一泊休む。そうやって移動して、半月くらいでカノンの村に到着した。
小さな秘境、カノンの村。他の町とは遠く離れた確率した村だ。独特の風習があって、あまり人はここに来ない。そんな村の更に森の奥、興味本位で踏み込めば命の保証は無く、どんな目に遭うかも分からない。
村の入り口にある苔むした石の煉瓦のアーチを潜り、同じような塀で囲われた村に入った。
この村の風習や客人への対応はゲームで知っている。ララの町に行きたいと言っても止める人は誰もいない。ただ『命を捨てに人が来た』と、それしか思わない。
それでも客人は村の習わしに従わなければならない。
「ようこそいらっしゃいませ。ここはカノンの村でございます」
村に入ってすぐ、この村の人だと分かりやすい格好の女の人が丁寧な挨拶をした。
目をスッポリと隠すオレンジのベールを被り、同じ色のタイトなロングワンピースを着ている。肌の露出は口元しか無く、緊張するほど姿勢が綺麗だ。
「お客様には禊をして頂く仕来りです故、こちらへお願い致します」
「は、はい……」
オレンジの女の人の案内について行くと、村の入り口のすぐ左側にある滝の側についた。そこには白いベールと服の男女一人ずつが立っていた。オレンジの女の人は深々とお辞儀をしてその場を離れた。
「ようこそおいでました。こちらはカラの滝でございます。滝の麓にあります泉で身を清め、神霊様の加護を頂く事でここより先に踏み入る資格を得て頂きます」
白い女の人が禊の説明をしている間に、白い男の人が着替えを持って来た。着物とか袴の下に着るような白くて薄い服。
「こちらの襦袢に着替えて頂き、禊の間に持ち込まれたお荷物や衣服の全てを浄化させて頂きます。こちらへどうぞ」
白い男の人について行って竹の小屋に入ると、荷物をカゴに入れて、脱いだ服もカゴに入れた。そして渡された服に着替えて小屋を出た。
泉の側で跪いて祈る女の人。男の人の案内で一人ずつ泉に入った。俺、みつ兄、ガルさんの順番で。
だが、最後に入ろうとしたメリストは、泉に弾かれて尻餅をついた。見た感じ、手足が痺れてるようだ。
それに気付いた白い二人はメリストに魔法を展開した。え、何?何が起きた!?
「なんということでしょう…!魔のものがこの場に堂々と訪れるなど……!」
「あぁ、あってはならない。不浄たる魔の人形を通すなどあってはならない…!」
あっ、メリストが魔法生物だからか!そりゃあ弾かれるよな!でもどうしよう、メリストが危険じゃ無いって信じてもらうにはどうすればいいんだろう。
「オレが不浄だってのは分かってる。自分の意思じゃ無ぇとは言え、一度魔に落ちてるからな。だがオレは死んだら怒られんだよ」
「……己の無害を主張するのならば、その身が爛れようとも泉に入るのです。加護を受け入れる事が出来たその時、貴方は人の世のものと認められましょう」
「なんだ、そんなことでいいのかよ」
拍子抜けしたように笑って泉に向かうメリスト。……話、聞いてたか?ただれるって言ってたんだぞ!?ただでさえ触れただけで痺れたのに、そんな場所に浸かれって!
そりゃあメリストが人から弾かれるのは嫌だけど、でもそれは、メリストに痛い思いをしろって事じゃ無いのに…。
俺がそんなことを考えてるなんてつゆ知らず、メリストは泉に入った。足だけ入った状態で苦しそうな顔をしてるのに、そのまま深いとこまで来ないといけないんだ。
「っ……な、んだ。思ってたより、ラクじゃ無ぇか……」
段々と俺たちのいる深みに来るメリスト。近付いて分かったけど、メリストの水に浸かったところから『シュウ……』って嫌な音がした。これ、焼けてる音……?
「メリスト!」
「兄貴!」
「メリストさん……!」
「ん?三人ともそんな顔してどーした?ちょっとヒリヒリする程度だっての」
そう言って水に浸かっていた腕を見せた。聞こえた音とは違って、本当にかぶれただけみたいに赤くなってるだけだ。それもどんどん腫れが引いて元の肌色に戻っている。
滝のすぐ下まで来る頃には特に痛そうにすることも無く、本当に何とも無さそうだ。
「……本当に加護を得るとは、なんてこと…いえ、失言で御座いますね。これで全員に加護が行き渡ったことを確認致しました」
「これより正式なお客様としておもてなしさせて頂きます」
えっと…とりあえず村に入れるってこと?メリストも加護を貰ったみたいだし、無茶をしたけどそのおかげで進めるってこと?良いやら悪いやら…。
それでもメリストが無茶をしたことは変わらない。いつの間にか綺麗にしてもらった服に着替えながらネチネチと三人がかりで説教した。そりゃあ離れ離れになったりメリストが糾弾されるのは嫌だよ?でも…メリストが人より諦めないといけないことが多いのも嫌だ
着替え終わってまた小屋を出ると、今度は緑のベールと服の男の人が宿泊施設まで案内してくれた。宿泊料は取られないけど、食事や着替えは自分で用意する必要があるらしい。
素朴な和室、リゾートとは違って古民家のような趣のある部屋。リビングにはちゃぶ台と座布団が並べられ、隣の部屋には布団がきれいにに並んでいる。
ここで一泊したら、夜明けと共にララの町に向かう事になった。だから、早めに夕飯を食べ、日が落ちて間も無く眠った。
人数分ちゃんと布団を引いてもらっていたのに、身を寄せ合って一枚は誰も使わなくなった。そんな俺たちなら、きっと大丈夫。なんて確信の無いことを信じてその日は終わった。
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