【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

輝石玲

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春の大陸の最奥へ!

74.もっと苦しめ(ガレアン) ❇︎

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 ミツルとコウセイが隣の部屋に移動した後、ひょっこりと兄貴が顔を出した。今の今まで風呂で何をしてたんだコイツは。シャワーの音はしなかったし着替えても無いから、ただ風呂に入ってたわけじゃ無さそうだが。

「なぁ、さっきなんか言い合ってなかったか?」
「本当に呑気なやつだな…」

 状況が何も分かってない兄貴にとりあえず説明した。引き笑いをして聞いていた兄貴だが、どこか違和感があるな。あぁ、匂いか。コイツから変な甘ったるい匂いと性の匂いがする。まさかとは思うが、コイツ風呂で…… 

「ん?どうしたんだ?オレの顔になんか付いてるか?」
「呆れてんだよ。兄貴、風呂場で何してた?」
「……ナニを、シてた。いや弁明させてくれ!実はかくかくしかじか………」

 そう言えば受け付けのやつが間違った花を入れたとか言ってたか?確かに不可抗力な部分もあるだろうが、コウセイに欲情したのは完全に自分の問題だろ。


 あぁ、でもこの花の匂い、相当キツいな。兄貴から感じる分だけでもどんなものか分かる。ここの風呂は俺には向かないだろう。仕方ない、今日は風呂は諦めるか。

「ガレアン、お前はオレの後に入れ」
「は?入れるかよ」
「何とかしてくるっつってんだ。魔法生物の力、舐めんじゃねぇよ」

 いちいち悪態付かないと死ぬのかコイツは?ってくらい口は悪いが、俺のためなんだろうな。
 兄貴はさっさと準備を済ませて風呂場に行った。




 数十分経って部屋に戻ってきた兄貴は、見て分かるほどに異常だった。荒れた呼吸とおぼつかない足取り、見える皮膚の全体が赤くなっている。その中でも左腕は火傷みたいな赤に変色している。

「っほら、さっさと入れ…」
「あ、あぁ……」

 一体何をしたのかは分からないが、少なくとも逆上せだけじゃ無いだろうな。仕方ない、せっかくの厚意だ。さっさと入って何をしたのか聞いて、看病…病か?分からないが面倒見るくらいは出来るだろう。




 風呂に入ると本当に花の匂いが消えていた。ただゆっくりするには兄貴の事が引っかかって落ち着かない。シャワーだけにしておいて、早く風呂から上がった。
 ……しまった、浴衣の着方なんて知らない。とりあえず適当に羽織って帯?でベルトみたいに止めて、着方は後で兄貴に聞いてみるか。



 部屋に戻ろうと脱衣所のドアを開けた途端、あまりにも強い性の匂いが鼻腔に入り込んできた。様子がおかしいと思ってはいたが………そういう事だろうな。

 案の定部屋に戻ってみると、メリストは自慰に耽っていた。俺が戻ったことにも気付いてないな。ただの憶測だが、花の効果を全部取り込んだんだろう。傷を奪えるくらいだ。液体から毒を吸い出す、なんてことも出来たっておかしく無い。

 看病や世話が必要かと思ったが、ここは何もしない方が正しいだろうな。兄貴がいる一番出入り口に近いベッドとは反対の風呂場が近い端のベッドに横になった。



 ……分かってたが眠れそうに無いな。兄貴に欲情することも無いし、性の匂いも半分同じ血だからかそこまで気にならない。
 ただ気になるのは荒い呼吸だけ。音からして過呼吸を起こしているんだろうが…俺にはどうすることもできない。とりあえず何も聞こえないフリと寝たフリだ。

「ヒュッ、ふーっ……」
「……………」
「ハッ、カヒュッ、………あ、やべぇ…………」

 ………?『やべぇ』の声と同時に匂いが変わった。血の匂いだ。



 血の匂い!?

 流石にスルー出来ず兄貴の方を向いたが、背を向けてるから何が起きてるのか分からない。仕方ない、流石に血の匂いは放っておけない。

「……兄貴?」
「っ!が、れ……おま、いつ…っから………!?」

 鼻が詰まったような声。鼻血か。
 兄貴の座るベッドの方に行って様子を見ると、頭に血が上りすぎたのか顔が異様なほど真っ赤で、目の焦点もマトモに合っていないことに気付いた。
 ベッドは汚れていないようだが、浴衣には血が大量に付いている。

「今は関係無えだろ。それより…無茶をしたな」
「あぁ…?それこそ、っ関係…無ぇ、だろ………っ、あぁっ、クソッ……!」

 本当にほぼ壊れてるじゃねぇかよ……。こうなるって分かってやったのか?なんで?俺のため?


 ………あぁ、なんか無性に腹が立つ。

「鼻は自分で押さえてろ」
「あ?……って、はぁ!?おいっ、何を……!」

 怒りに身を任せて兄貴の自慰を手伝った。兄貴はずっと「やめろ!」と叫んでたが、そんな声は気にせずにただ作業的に続けた。



 気付けば抵抗の声は聞こえなくなっていた。それどころかピクリとも動かなくなった兄貴は、どうやら泣きながら意識を失っていたらしい。
 鼻血が止まったことを確認して、血のシミが目立つ浴衣を脱がせて持ち込んだ着替えに着替えさせてベッドに寝かせた。水差しに入っている冷たい水をコップに注いで自分の口に含み、そのまま口移しで兄貴に飲ませる。口の中が少し血の味がした。鼻血が逆流でもしたんだろう。


 血で汚れた浴衣の染み抜きだけ簡単にしておいて宿に返却した。『連れが風呂で逆上せて鼻血を出した』ということにして。


 それにしたって俺が、この俺があんな行動に出るとは思わなかった。弱ってる兄貴を見て感じた違和感も今なら分かる。


 どうやら俺は兄貴の苦しむ姿で興奮するらしい。もっと泣かせたい、怯えさせたい、苦しみ泣き叫ぶ姿が見たいと。

 いつか、復讐だと言って兄貴に地獄を見せてやろう。ただの個人的な愉しみのために。
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