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春の大陸の最奥へ!
72.人間と獣と性と薬
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部屋に戻って水を飲んで呼吸を整えた。なんか俺、どんどん変態になってる気がする。この世界に来たばっかの時は自慰すらまともに出来なかったのに…それは今もか。人に与えられる快楽を知ったことと、尻でバカみたいに気持ちよくなるようになったのは大きな変化だ。
「はぁ……」
「コウセイ、お前少し危険だな」
「え?」
部屋で大人しくしていたガルさんが俺を見るなり顔を顰めて危険と言った。
「お前、自分がどんな表情してるか分かってないだろうから言うが…正直エロいぞ」
「は!?」
「ミツルと兄弟なだけあって似た色気が出始めてる。フェロモンとは違う、人間さえも誘惑するような……」
真面目な顔して何を言ってるんだガルさんは!お、俺からみつ兄みたいな色気が……!?全く想像出来ないよ!
揶揄われてるのかと思ってガルさんに言い返そうとした時、ガルさんの耳がピクリと動いて、急に部屋の外の方を向いた。
「誰か来る。ミツルか?」
「え?」
間も無くドアを強くノックする音が聞こえてきて、ドアをそっと開けた。ガルさんの言う通りそこにいたのはみつ兄で、みつ兄は俺を見るなりそのまま抱きついてきた。
「わっ!」
思わず後ろに倒れ、ドアは勝手に閉まった。けど、みつ兄どうしたんだろう。ゲンさんと何かあったのかな。浴衣は乱れてるし裸足で来てるし、もしかして……
「…めん、ごめん、なさい、こう君……!」
「みつ兄?」
「ぼ、僕、ルール破っちゃった…、ごめんなさい、ごめんなさい……!」
そう言って俺に抱きついて泣くみつ兄。やっぱりそういうことか。でもルールを破ったって、みつ兄からゲンさんを誘ったようには見えないし…。みつ兄が破ったって言うより、破らされた…襲われた後みたいな………
「何があったのか教えてくれる?」
「……っその…………」
みつ兄は落ち着かないままなんとか話してくれた。風呂に浮かべられてた花のせいで興奮してるとこをゲンさんに見られたこと。それを処理するためと言われ体を触られたこと。抵抗できなかったこと。
やっぱり、みつ兄は悪く無い。
「大丈夫、ちゃんと教えてくれてありがとう。みつ兄は悪く無いよ」
「うぅ、ご、ごめん…こう君………」
お姫様抱っこでみつ兄を俺のベッドまで運んで、濡れたタオルでみつ兄の足を拭いた。
体、熱いな。みつ兄たちの方の部屋は風呂に花びら浮かべたままだったみたいだし、余計に熱を持ってるのかも。足を拭いただけでみつ兄はどこか気持ち良さそうにした。
「口を挟んで悪いが、あいつ、どうすんだ?」
「あいつってゲンさん?そうだな…みつ兄に手を出してる時点で一緒にいる気は無いし…今はみつ兄と合わせたく無い。今夜はみつ兄は俺のベッドで寝かせるよ」
「……それは、俺が御免被りたいな。お前ら二人ともフェロモンが強すぎる。花の影響だかなんだか知らねぇが、盛ってるやつが二人も同室じゃ俺が休めねぇよ」
それもそっか。でもどうしよう、今から別の部屋を取るのも無理だし、部屋を取ってくれたゲンさんを追い出すわけにも行かない。他に行ける場所なんて無いし……
悩んでいるとガルさんはまたドアの方を向いた。
「ん?また誰か来たな。今度は二人だ」
「二人?」
コンコン
「失礼、ここにミツルと言う子はいるかしら」
あ、この低い声と喋り方ってもしかして受け付けの人?
「うちのバカが迷惑したみたいで謝りに来たの。入れてくださるかしら」
「え?は、はい……。鍵、開いてるので………」
うちのバカ?そう言えばガルさん二人来たって言ってたけど、もう一人って……
部屋に入って来た二人のうち一人は受け付けの人だった。そしてもう一人は…ゲンさん。顔色が悪い上にフラフラしてて、受け付けの人の肩を借りてようやく歩けているみたいだ。まだ、状況が分からない。
「急にごめんなさいね。宿のミスとゲンの過ちを謝罪させて欲しいの。まず、こちらのミスで使うはずの無かった花を使ったことを。それから…ゲン、こっちは自分で言いなさい」
「……ミツル君、無体な事をしてすまなかった。善意とは言え、下心が無かったわけでも無い。不快で恐ろしい目に遭わせてしまって、本当に申し訳ない」
みつ兄はゲンさんに怯えながらも謝罪を聞いた。でも、許す気は無さそうだ。俺もゲンさんを許す気は無い。
「僕、嫌だって言いましたよね…。やめてって………」
俺をしっかりと抱きしめながらも声を出したみつ兄。
「あぁ、だが…恥ずかしい勘違いをしてしまったんだ。あまりにも君が官能的で、誘われてると思ってしまった」
「なんで……?僕、誘ってなんか無いのに、みんなそう言う!何もしてないのに、僕が誘ったんだって、そんなわけ無いのに………!」
みつ兄は何かがプツリと切れたように泣き出した。『みんな』そう言う、なんて、みつ兄がどれだけ理不尽な目に遭ってきたのか嫌でも察する。
みつ兄は、俺のなのに。
「分かってる、僕も正気では無かった。すまなかった………」
「……言い訳に聞こえるかもしれないけど説明だけさせてくれないかしら」
受け付けの人が今にも倒れそうなゲンさんを支えながら真剣な眼差しで頼んできた。まぁ、許せないことに変わりなくても何があったのかは知りたい。
「ゲンは、獣化こそ出来ないけれど兎獣人の血が流れてるの。滅多に来ない発情期がかなり重くて、使われるはず無かった花に触発されて来ちゃったのよ。今は薬を飲んだから発情は抑えられてるけれど、代わりに体は不自由になってる」
それで今フラフラなんだ。確かに重い発情期は自分の意思ごと消える。薬のせいで擬似発情期が来た時は俺もおかしくなると思ったから気持ちが分からないでは無い。それでもみつ兄を泣かせた事は許せない。
ゲンさんに兎獣人の血が流れてるのはゲームで分かってた。でも、身体能力にだけ兎としての特徴が出てるものだとばかり思ってた。
「あなたたちがゲンを信用出来なくなったのは分かるわ。でも、それでもあなたたちだけで旅はさせられない。元・クーターがいるんですってね。その観察と処分がゲンの仕事である以上、同行はさせてもらうことになるけど…それは許してちょうだい」
「い、いやっ!」
「大丈夫だよ、みつ兄。俺が守るから。……もし同じようなことがあればゲンさんを殺します。それでいいなら同行させてください」
受け付けの人もゲンさんも頷いて部屋を出た。今夜はゲンさんは別の部屋で休むらしい。俺とみつ兄は二人部屋の方に移動した。
本当に、俺たちの周りってロクなこと無いな。それなのに、俺は……
みつ兄の泣いてる理由がゲンさんに手を出されたからじゃ無くて、決めたルールを破って俺に嫌われることが怖かったかららしい。そう知った時、みつ兄が傷付けられたのに嬉しかった。
俺も大概、クズ野郎だな。
「はぁ……」
「コウセイ、お前少し危険だな」
「え?」
部屋で大人しくしていたガルさんが俺を見るなり顔を顰めて危険と言った。
「お前、自分がどんな表情してるか分かってないだろうから言うが…正直エロいぞ」
「は!?」
「ミツルと兄弟なだけあって似た色気が出始めてる。フェロモンとは違う、人間さえも誘惑するような……」
真面目な顔して何を言ってるんだガルさんは!お、俺からみつ兄みたいな色気が……!?全く想像出来ないよ!
揶揄われてるのかと思ってガルさんに言い返そうとした時、ガルさんの耳がピクリと動いて、急に部屋の外の方を向いた。
「誰か来る。ミツルか?」
「え?」
間も無くドアを強くノックする音が聞こえてきて、ドアをそっと開けた。ガルさんの言う通りそこにいたのはみつ兄で、みつ兄は俺を見るなりそのまま抱きついてきた。
「わっ!」
思わず後ろに倒れ、ドアは勝手に閉まった。けど、みつ兄どうしたんだろう。ゲンさんと何かあったのかな。浴衣は乱れてるし裸足で来てるし、もしかして……
「…めん、ごめん、なさい、こう君……!」
「みつ兄?」
「ぼ、僕、ルール破っちゃった…、ごめんなさい、ごめんなさい……!」
そう言って俺に抱きついて泣くみつ兄。やっぱりそういうことか。でもルールを破ったって、みつ兄からゲンさんを誘ったようには見えないし…。みつ兄が破ったって言うより、破らされた…襲われた後みたいな………
「何があったのか教えてくれる?」
「……っその…………」
みつ兄は落ち着かないままなんとか話してくれた。風呂に浮かべられてた花のせいで興奮してるとこをゲンさんに見られたこと。それを処理するためと言われ体を触られたこと。抵抗できなかったこと。
やっぱり、みつ兄は悪く無い。
「大丈夫、ちゃんと教えてくれてありがとう。みつ兄は悪く無いよ」
「うぅ、ご、ごめん…こう君………」
お姫様抱っこでみつ兄を俺のベッドまで運んで、濡れたタオルでみつ兄の足を拭いた。
体、熱いな。みつ兄たちの方の部屋は風呂に花びら浮かべたままだったみたいだし、余計に熱を持ってるのかも。足を拭いただけでみつ兄はどこか気持ち良さそうにした。
「口を挟んで悪いが、あいつ、どうすんだ?」
「あいつってゲンさん?そうだな…みつ兄に手を出してる時点で一緒にいる気は無いし…今はみつ兄と合わせたく無い。今夜はみつ兄は俺のベッドで寝かせるよ」
「……それは、俺が御免被りたいな。お前ら二人ともフェロモンが強すぎる。花の影響だかなんだか知らねぇが、盛ってるやつが二人も同室じゃ俺が休めねぇよ」
それもそっか。でもどうしよう、今から別の部屋を取るのも無理だし、部屋を取ってくれたゲンさんを追い出すわけにも行かない。他に行ける場所なんて無いし……
悩んでいるとガルさんはまたドアの方を向いた。
「ん?また誰か来たな。今度は二人だ」
「二人?」
コンコン
「失礼、ここにミツルと言う子はいるかしら」
あ、この低い声と喋り方ってもしかして受け付けの人?
「うちのバカが迷惑したみたいで謝りに来たの。入れてくださるかしら」
「え?は、はい……。鍵、開いてるので………」
うちのバカ?そう言えばガルさん二人来たって言ってたけど、もう一人って……
部屋に入って来た二人のうち一人は受け付けの人だった。そしてもう一人は…ゲンさん。顔色が悪い上にフラフラしてて、受け付けの人の肩を借りてようやく歩けているみたいだ。まだ、状況が分からない。
「急にごめんなさいね。宿のミスとゲンの過ちを謝罪させて欲しいの。まず、こちらのミスで使うはずの無かった花を使ったことを。それから…ゲン、こっちは自分で言いなさい」
「……ミツル君、無体な事をしてすまなかった。善意とは言え、下心が無かったわけでも無い。不快で恐ろしい目に遭わせてしまって、本当に申し訳ない」
みつ兄はゲンさんに怯えながらも謝罪を聞いた。でも、許す気は無さそうだ。俺もゲンさんを許す気は無い。
「僕、嫌だって言いましたよね…。やめてって………」
俺をしっかりと抱きしめながらも声を出したみつ兄。
「あぁ、だが…恥ずかしい勘違いをしてしまったんだ。あまりにも君が官能的で、誘われてると思ってしまった」
「なんで……?僕、誘ってなんか無いのに、みんなそう言う!何もしてないのに、僕が誘ったんだって、そんなわけ無いのに………!」
みつ兄は何かがプツリと切れたように泣き出した。『みんな』そう言う、なんて、みつ兄がどれだけ理不尽な目に遭ってきたのか嫌でも察する。
みつ兄は、俺のなのに。
「分かってる、僕も正気では無かった。すまなかった………」
「……言い訳に聞こえるかもしれないけど説明だけさせてくれないかしら」
受け付けの人が今にも倒れそうなゲンさんを支えながら真剣な眼差しで頼んできた。まぁ、許せないことに変わりなくても何があったのかは知りたい。
「ゲンは、獣化こそ出来ないけれど兎獣人の血が流れてるの。滅多に来ない発情期がかなり重くて、使われるはず無かった花に触発されて来ちゃったのよ。今は薬を飲んだから発情は抑えられてるけれど、代わりに体は不自由になってる」
それで今フラフラなんだ。確かに重い発情期は自分の意思ごと消える。薬のせいで擬似発情期が来た時は俺もおかしくなると思ったから気持ちが分からないでは無い。それでもみつ兄を泣かせた事は許せない。
ゲンさんに兎獣人の血が流れてるのはゲームで分かってた。でも、身体能力にだけ兎としての特徴が出てるものだとばかり思ってた。
「あなたたちがゲンを信用出来なくなったのは分かるわ。でも、それでもあなたたちだけで旅はさせられない。元・クーターがいるんですってね。その観察と処分がゲンの仕事である以上、同行はさせてもらうことになるけど…それは許してちょうだい」
「い、いやっ!」
「大丈夫だよ、みつ兄。俺が守るから。……もし同じようなことがあればゲンさんを殺します。それでいいなら同行させてください」
受け付けの人もゲンさんも頷いて部屋を出た。今夜はゲンさんは別の部屋で休むらしい。俺とみつ兄は二人部屋の方に移動した。
本当に、俺たちの周りってロクなこと無いな。それなのに、俺は……
みつ兄の泣いてる理由がゲンさんに手を出されたからじゃ無くて、決めたルールを破って俺に嫌われることが怖かったかららしい。そう知った時、みつ兄が傷付けられたのに嬉しかった。
俺も大概、クズ野郎だな。
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