【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

輝石玲

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春の大陸の最奥へ!

68.甘い香り漂う大陸へ

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 ガルさんとメリストがずっと戻って来ないからみつ兄とベッドでお昼寝をしていた。夕方までには大陸に着いて、その後は港町で一泊してから次の町に行く予定。

「……い、おーい!いつまで寝てんだ!おーい!おいっ!」
「いっ……!?め、メリスト!デコピン痛い!」

 額にBB弾が直撃したかと思った!地味に痛くてしばらくヒリヒリするアレ!よりもタチが悪いけど!
 ……ってあれ?メリストの目、少し腫れてる?ちょっと充血してるみたいだし…なんかあったのかな。




 なんて目をじっと見てると、鼻を思いっきり指で挟まれた。

「もうすぐ大陸だぜ?」
「荷物は俺たちで纏めておくからミツルを起こしておけ」

 いやあの、俺が起こしたらまた襲われるかもしれないんだけど!?
 そう言おうとしたけど二人ともなんとなく確信犯な気がしたから諦めて隣で眠るみつ兄の体を揺すった。

「ぅ……ん…………?」
「みつ兄、起きて」
「……こうくん、おは…よう……?」

 おはようの時間じゃ無いけどいっか。み 笑って「おはよう」と返すと、みつ兄は寝起きの緩んだ顔でふにゃりと笑った。か、可愛いっ………!
 みつ兄は体を揺すった俺の手を両手で掴むと、そのまま指に口付けた。本当に唇を触れるだけの。

「襲って嫌われたくないけど…これくらいは許して……?」

 う、上目遣い…!?困り眉と上目遣いで俺の指にキスしながら許しを乞うのは…こう…なんか……ちょっと加虐心が刺激されると言うか、いつもと違う感じでムラっとする。俺も完全なマゾって訳じゃないから、こんなちょっとしたことで泣かせたいとか思うくらいにはサドっぽいとこもある。

「みつ兄、それくらいは俺も許したいけど準備しないと」
「準備?」
「春の大陸に到着するよ」

 一瞬だけぼーっとしたみつ兄は、ゆっくりと起きた。みつ兄のサラサラ髪が変な方向を向いてたり顔に枕の跡が付いてたりとだらしがない。そっと手櫛で髪を整えて、そのまま頭を撫でた。

「顔、洗いに行こっか」
「うん。あと、こう君も寝癖付いてる。ふふっ、ふわふわ髪がもっとふわふわだ」

 俺も寝癖あんのかよ!?ちょっとカッコつけてたの恥ずかしっ!爆発した頭でカッコつけてたのカッコ悪っ!



 二人でシャワールームの横にある洗面台に行って顔を洗った。ついでに髪の毛を梳かすと、みつ兄のサラサラ髪はいつも通りに戻った。けど、問題は俺の癖っ毛か。一部が変な方向を向いて、どれだけ梳かしても寝癖の形の方に戻る。

「爆発が直らない…」
「ちょっと濡らしてから梳かそっか」

 いつもは少し気にして寝てたから良かったけど、ほんのちょっとの昼寝だと思って油断していた。
 みつ兄がタオルを濡らして俺の頭に被せてなんとか寝癖は落ち着いた。



 準備が終わってあとは到着を待つだけになった。そうだ、みつ兄と話したことを二人にも言わないと。完全に巻き込みだけど、二人がダメだって言ったらみつ兄と決めたルールも意味を失くすし。

「ガルさん、メリスト、ちょっといい?」
「「ん?」」
「さっきみつ兄と話してたんだけど……」

 二人に欲を満たす相手になって欲しいと頼んでみた。俺とみつ兄じゃたぶん満たされないから、そうなったら二人のどっちかに相手になって欲しいと。
 かなりおかしなことを頼んでる自覚はあるけど他に方法も思い浮かばない。特に俺はこっちの世界に来てみつ兄にもガルさんにもメリストにも体をおかしくされた。責任くらい取ってくれたっていいと思う。

「まぁ、お前らがいいなら…」
「オレも全然いいぜ」

 よ、良かった。了承してくれた…。
 正直ダメとか嫌とか言われる可能性もあったけど、思ったより簡単に首を盾に振ってくれた。なんだかこの四人が乱れた関係になってきたけど、しばらく同行するゲンには秘密にしておこうかな。



 なんて思ってたらドアをノックする音が聞こえてきた。噂をすればなんとやら、来たのは荷物をまとめて持ってきたゲンだ。

「もう間も無く到着するそうだよ。みんなも下船の準備を」
「はーい」

 ゲンがドアの向こうで待ってくれているからさっさと準備して部屋を出た。部屋を出た時にふわりと甘い匂いがした気がするけど…なんだろう。

「あ、君たち春の大陸は初めてかい?」
「初めてです」
「オレは来たことあるが、他は夏の大陸から出たことも無ぇみたいだぜ」
「そう、ならこれを飲むといいよ。春の大陸の風は特殊で、毒気や酒気を含むからね」

 そう言ってゲンがくれたのは黄色いカプセル。これを飲めば一時的に抗体ができて、体が春の大陸の風に適応するまでの時間稼ぎになるらしい。
 主人公たちはゲームだと大丈夫だったけど、船で先に飲んでたのだろうか。確かに港町でフラフラしてる酔っぱらいみたいなNPCがいたけど、『大陸の風に酔う』ってそう言うことだったのか。



 カプセルを飲んで船の降りるとこへ向かった。屋根の無い風通りのいい場所に行くと甘い匂いは強くなっていく。確かに強い匂いで酔いそうだけど、毒気も含んでるならもっと酔いそうだ。

 到着してゆっくりと順番を待って船を下りた。そして少し進むだけでそこは……花畑…………!?
 あ、違う、あまりにも色とりどりで華やかだけどちゃんと町だ。でも、それくらい本当に綺麗で、建物の造りも町のオブジェクトも芸術の大陸と言われるだけあって現実味が無い。
 大きな町のはずなのに花や蔦や木がたくさんあって、森の中の秘境にでもいるようだ。ゲームで一度見たことはあるのに、肉眼で見るとまた違う。胸の高鳴りが収まらない。

「凄いね、こう君………」
「あぁ………」

 そのまま俺たちは言葉を失った。もっとハイテンションで到着するかと思ってたけど全然何も言えないし出来ない。メリストに頭をポンってされるまで本当に動けなかった。


 とりあえず、春の大陸とうとう到着!
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