【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

輝石玲

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春の大陸の最奥へ!

60.いざ、船旅スタート!

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「おい、起きろ。起きてさっさと準備しろ」

 そう言って頬をつねられる感覚で目が覚めた。おいこら痛いぞメリスト。でもおかげでバッチリ目が覚めた。
 体を起こして、つねられた左頬をさすった。離されてるのにまだ痛い。つねった張本人をジトと見つめると、

「ははっ、膨れっ面が腫れてるぞ」

 って笑いやがった。誰がやったんだよ誰が!



 仕返しにメリストのすねを蹴ってからみつ兄とガルさんの方を向いた。

「おいこら痛ぇぞ!脛は卑怯だろ!」

 しーらね。卑怯じゃなくて賢いと言って欲しいぞ。俺はどっかの誰かと違って寝てる相手にちょっかい出して笑ったりしないもん。
 それはそうと、どうやらガルさんがみつ兄を起こそうとして苦戦してるみたいだ。どれだけ呼んで揺すっても唸るばかりで全く起きないみつ兄。まぁ、今まだ早朝の三時だもんな。

 全く仕方ない、俺が行くか。起こせるか分からないけど。

「みつ兄ー、にーい、起きてー」
「うーん………」

 流石に呼んだくらいじゃ起きないか。なら仕方ない、脅して起こそう。一応声は聞こえてるみたいだし、危機感を持てば嫌でも目が覚めるだろう。
 ……これで、起きるといいけど。

「みつ兄、起きないと……もうえっちしないよ?」

 こ、これで起きるか…?

「……やだ、こうくん………」

 あ、反応した。本当にこれで起きるん………だ!?
 ようやく起きたみつ兄は、まだ寝ぼけているのか俺に飛び付いてそのままベッドから二人してずり落ちた。俺に覆い被さるような体制になると、みつ兄はそのままキスして舌を入れて来た。
 しまった、みつ兄の寝起きはこうだった……!

「ちょ、んっ、みつ……んぅっ…!」

 たたたた助けてよ二人とも!苦笑いしてないで!襲われてるんだけど!?出発の準備しないといけないんだよね!?
 あ、やばい、勃っ………

「はっ……、あ、あれ、こう君………」
「や、やっと起きた…みつ兄のバカぁ………」
「も、もしかして兄さん、またやっちゃった……?ご、ごめ……ん?……なんか、硬いのがお尻に………」

 本当にバカー!どうしてくれんのみつ兄ー!
 顔を真っ赤にして涙目になった俺にようやく助けが入った。ガルさんがみつ兄を抑えて、メリストが俺を引っ張り出してくれた。

「あーあ、とりあえずソレ、抜いて来いよ」
「うぅ………」

 朝っぱらからトイレにこもって何シてるんだろう、俺……。いや、これはみつ兄のせいだ………



 処理が終わった後、みつ兄はまだ寝ぼけてるんじゃ無いかと警戒しながらみんなのとこに戻った。
 でも警戒は意味無くみつ兄はバッチリ目が覚めて一人反省会をしていた。正確には、床で正座して項垂れていた。なんだか首から反省の看板をぶら下げてるような錯覚まで見える。

「みつ兄、床は足痛くなるよ」
「でも…うぅ………」

 なんか俺以上にショック受けてるように見えるんだけど?
 とりあえず、なんとか立ち上がらせて一緒に準備を始めた。予定してる船まで歩きでちょっと時間かかるから急がないと。





 宿から出て、日の出前から船着場に向かった。店もまだ開いていない時間で、昨日のうちに買った軽食を食べながら歩く。

 時間が経って日の出と船の光景が見れた。結構いい景色だな……。そう言えばミレさんのメモに『夜明けの船に乗らない』って書いてあったけど、ガン無視で乗ろうとしてるな…。しかも乗る予定の船は『乗ってもいいけどオススメはしない』って書いてあったやつだ。なんでオススメしないんだろう。綺麗で立派な船なのに。
 とは言え船は毎日同じものが出る訳じゃ無い。同じ船は大体三日に一度か一週間に一度しか港に来ないらしい。春の大陸行きの船はこれを逃せば次は三日後だ。

 船着場に着いて、船の前にいる人にチケットを見せた。昨日メリストが買ってくれてたチケット。本当は今日の船は二つあったらしい。でも、これから乗る船のチケットしか残ってなかったんだって。

「お客さんたち、船旅は初めてかい?」

 チケットを見せたおじさんが乗る前に声をかけて来た。

「えと、はい……」
「やっぱりな、初心者にこの船は少しキツいかもしれんが大丈夫かい?」
「キツい?」
「あぁ、この船は大陸までの間にいくつかの島に止まる。春の大陸に着くのは明日の夕方になる予定だ」

 あ、だからミレさんオススメしなかったんだ。初めての船で一泊か…なんだかドキドキする。俺もみつ兄も乗り物酔いとかは無いし、たぶん船も大丈夫だと思う。たった一泊くらいなら、経験してもいいかもしれないな。

「大丈夫ですよ」
「そうか、なら気を付けて行ってくるといい。初めての船旅がいい思い出になる事を祈るよ」
「ありがとうございます!」

 いいおじさんだ…。
 『初めての船旅がいい思い出になる事を祈る』か。……それ、ゲームで初めて船に乗る時に言われるセリフ!もしかしてこのおじさん、ゲームでも船着場にいたお兄さん!?

 ゲームの内容を少しだけリアル体験出来て俺は簡単に上機嫌になった。へへっ、主人公たちも最初はこんな気持ちだったのかな。



 鍵を二つ受け取って早速船に乗ると、思ったより人が少ないことに気が付いた。もうすぐ出港の時間なのに…。みんな自室にいるのか、通路や大広間では誰ともすれ違わない。

 宿泊エリア…って言えばいいだろうか、長い通路にたくさんのドアが並んでいる。左右に五つずつのドアで、プレートを見るとそこは二番目の宿泊エリアらしい。
 俺たちの泊まる部屋は204と205…一番端の方だ。部屋に入ろうとすると、どこかから呼び止められる声が聞こえた。

「あれ?ガレアンじゃないか!」
「……げ、なんでお前がここにいんだよ」

 茶系の短髪に赤い瞳、右目の下のホクロ。鉄の胸当てを付けて剣を腰に刺したその青年に…見覚えしかない!ゲームよりは成長してるけど、間違いなく主人公の一人、ゲンだ!
 まさか、主人公の四人全員に会うことになるとは…。ガンナーのフィーフィ、魔法使いのメルト、ヒーラーのミレ、剣士のゲン。なんか、全員に直接会えて嬉しいなぁ……。

「君たちはガレアンの連れかい?僕はゲン、冒険者さ」
「光成です」
「光流です」
「………」

 メリストだけ黙ってしまった。まぁ、そうだよな。直接会った事は無いとは言え敵だったもんな。ミレさんの時と同様に思うことがあるんだろう。

「赤髪の君は…ガレアンのお兄さんだね?彼から少しだけ聞いているよ。……なぜ、こんなところにガレアンといるのか聞いてもいいかい?」

 あぁ…空気がピリピリする……。主人公たちに一番会わせたらダメだもんな、メリスト。でも、メリストはもう悪いことしないって言って理解してもらうのも大変だろうし……。

「…この大陸で生きられなくなったから出て行く、それだけだ」
「だから、なぜ?ガレアンや他の人が同行する意味はあるのかい?」
「オレの監視役、だとさ」

 それはそうだけど、本当は普通にメリストと一緒にいたいってのが一番の理由なんだよな、俺は。でもそんなこと言えばややこしくなる。本当の事が言えないってこんなに辛い事だって分かっていても…どうしようも無い。

「見た感じ、そこの二人は若くて力も無さそうだ。彼らも君と同じ監視される側?」
「違ぇよ。そいつらが、オレの監視役だ。確かに非力でオレならすぐに伸せる。だが…オレにもそう出来ねぇ理由があるからうってつけなんだよ」

 え?俺たちに害は加え『られない』ってこと?それは知らなかった。
 もちろんメリスト自身も俺たちに危害を加えない意思はあるんだろう。でもそれとは別に出来ない理由があるんだ…。

「そう…。うん、分かったよ。その言葉を信じる。でも許す訳じゃ無いことは忘れないで」
「あぁ、分かってる」
「それじゃあ、僕はこの部屋だから」

 そう言ってゲンが入った部屋は206。……って、目の前の部屋なのかよ!

 まさかの主人公四人目と出会うとは…。ゲンは正義感と情に熱い人だ。説得すれば理解はしてもらえ……なさそう、か?流石にもう子供じゃ無いし、ゲームの時より理性的になってたら説得も何も出来ないだろうな。
 はぁ……まさか、主人公に出会う事で不安要素が増えるとは。ここでは大人しくするに限るな。
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