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孤児院での生活
31.過剰労働には危険がいっぱい
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やけにスッキリとした頭と、反対にカラカラの喉。起きて真っ先に水差しとコップに手を伸ばした。
水を飲み落ち着いたところで、すぐに着替えた。
……?膝が痛い…。事後に腰が痛くなるのはたまにあるけど、膝が痛いのはなんでだ?昨夜の体制だって膝に負担は掛からないと思うんだけど……。ま、いっか。とりあえず着替えよ。
遅れてみつ兄が起きて大きなあくびをした。水をコップに注いで、ベッドに座るみつ兄に渡すと寝ぼけながら水を飲んだ。
しばらくぼーっとして、ようやく目が覚めたみつ兄。ゆっくりとベッドから降りて着替え始めると、みつ兄は何かを思い出したのか「あ」と言った。
「そうだ。ねぇこう君。後で少しだけ血を貰える?」
「えっ、血……?」
「えっち?」
「みつ兄まだ半分寝てる?」
なんつージョークだ。なんて思ってたけど本気でえっちだと思ったらしい。夜には煽り文句でも今のはギャグにしか聞こえない。
……で、なんで血?
「いいけど…何に使うんだ?」
「病気が無いかの検査。次は二人の『初めて』だから、感染予防の事とか考えたく無いの」
「あぁ、性病検査。ガルさんが「ちゃんと検査して大丈夫ならナマでいい」って言ってたもんな」
着替え終わったみつ兄に言われた通り、指先を針で刺して小さなスポンジのシートに血を付けた。この世界だと目の前ですぐに結果が分かるらしい。
俺の血を吸ったスポンジは、あっという間に白くなった。そしてみつ兄も同じ。良かった、二人とも病気は無いらしい。病気があると血を吸ったスポンジはじわじわと赤くなるらしい。さすがファンタジー、とっても便利で楽だ。
「うん、二人とも大丈夫みたいだね。ふふっ、たっぷり可愛がってあげるから、今夜は楽しみにしててね♡」
「………ん」
「あれ?こう君顔が真っ赤!」
あぁああぁ意識させるなぁ…………
いや、分かってはいたよ?昨夜に言われて俺も凄く期待して、その期待だけで乱れまくったけども!そうか、今夜、か……。今夜、みつ兄は童貞を捨てて俺は処女を捨てる。
だ、ダメだ!考えてたら身も心も色々と保たない!よし、仕事して紛らわすぞ!
朝食を食べてスタミナを付けてから、俺はいつも通りアルバイトに向かった。
いつもは飲み物とか食べ物、あとは洗剤や石鹸なんかを運んでるけど、今日はいつもとは違った。これって建材?結構ずっしりした木の板と、金属とは違うような見た事無い素材の釘。補強や修繕の時に使うらしい。それから掃除道具。そのほとんどが庭具だ。
なんだろうと思いながら運んでいると、手伝いに来たガルさんがキャンディをくれた。な、何これ…何味………?
「不味いだろ」
「酸っぱくて…苦くて…臭いが…………」
「キャルソ味だ」
なっ、はぁ!?キャルソと言ったらこの世界で『万能薬』なんて呼ばれてるハイランクな薬に少量だけ入れられる高級品!なんてモンを飴にしてんの!?
なんて驚きを見抜いたガルさんはクスクスと笑っていた。
「ただのキャルソ風味だ。最近話題のジョークキャンディ」
「なんだ、再現か……って、なんでキャルソを再現してんの。暇か?」
「完熟トルベリー味もあるぞ」
「それ、酸っぱすぎるやつだよな。俺知ってるぞ」
完熟トルベリーは塗料にしか使われない水色のベリーだ。実が付き始めた緑の状態だと甘くて、青くなるにつれて甘酸っぱくなる。そして完熟した水色の時は口にしてはいけないレベルで酸っぱい。ただ傷や美容にはいいからと皮は服を染めるのに良く使われている。
こういうキャンディって、元の世界もこの世界も同じだな。……ゲーム世界と同レベルか。喜ぶべきか悲しむべきか。
キャルソキャンディを噛んで無理やり飲み込んだ。休憩かと思ったら罰ゲームだった時の心情ってこんな感じなんだ。うん、絶対に必要無い経験と感覚だ。
「うし、それじゃあ作業始めるか」
「はーい」
仕事を再開して、1時間くらいで全部の荷物を運び終わった。が、どうやら荷物が足りて無いらしい。なんでもグローブの仕入れがモンスターの影響で遅れてるらしい。今日のギリギリに到着予定だ。
「仕方ねぇな、俺が行ってくる……ん?」
俺はガルさんの服を引っ張った。ここで多く手伝って給料少し上乗せして貰えれば、みつ兄に何か買ってあげられるかもしれない。
「ガルさん、俺に行かせて。この町をもう少し歩いてみたかったんだ。それと、駄賃も少し弾んで貰いたいし」
「ったく、強かなガキめ。いいぜ、町の入り口付近に荷馬車が来るらしいから、町の中で待ってろ。気をつけて行ってこいよ」
ガルさんは俺に短剣を持たせてくれた。町を一歩出たらモンスターが闊歩してるから、一応の護身用にと。
町の入り口のそばにある丸太のベンチで荷馬車を待った。だいぶ空が赤くなって来たし、そろそろ来る頃だろう。
ベンチから町の外を見てると、ちょっと離れた向こう側に馬車が止まってるのが見えた。なんかあったのかな?
とりあえず短剣を腰にセットして馬車の止まってるとこに向かった。
馬車の近くに行くと、ラヴェットに襲われているのが見えた。あぁ、これじゃあ確かに進めない。すぐに加勢してラヴェットを短剣で狩尽くす。……うん、俺も強くなったかな。あっという間に倒せた。
「ありがとう少年!」
馬車を守っていた青年は額の汗を拭いながらお礼を言った。それにしても…御者は商人っぽいから仕方ないとして、なんで大の男3人でラヴェットに防戦一方だったんだ?いくらなんでも弱すぎない?
「そ、そんな目で見ないでくれ…。オレらもこう見えて商人の端くれなんだ。武器は扱っても実戦はからっきしなんだよ」
「はぁ…。モンスターがいるんだから護衛くらい付けたらどうです?」
「返す言葉もない…。あ、少年。その短剣貸してくれないか?刃こぼれしているぞ」
あぁ、武器を扱ってるって言ってたもんな。簡単な修繕とかは出来るのだろう。まぁ助けたお礼として直してもらってもいいかもしれない。一応借り物だし。
そう思って短剣を男に渡すと、別の男が俺の背後から強く殴って来た。え……?なん、で…………
遠のく意識の中、男達が笑う声だけが聞こえた。
水を飲み落ち着いたところで、すぐに着替えた。
……?膝が痛い…。事後に腰が痛くなるのはたまにあるけど、膝が痛いのはなんでだ?昨夜の体制だって膝に負担は掛からないと思うんだけど……。ま、いっか。とりあえず着替えよ。
遅れてみつ兄が起きて大きなあくびをした。水をコップに注いで、ベッドに座るみつ兄に渡すと寝ぼけながら水を飲んだ。
しばらくぼーっとして、ようやく目が覚めたみつ兄。ゆっくりとベッドから降りて着替え始めると、みつ兄は何かを思い出したのか「あ」と言った。
「そうだ。ねぇこう君。後で少しだけ血を貰える?」
「えっ、血……?」
「えっち?」
「みつ兄まだ半分寝てる?」
なんつージョークだ。なんて思ってたけど本気でえっちだと思ったらしい。夜には煽り文句でも今のはギャグにしか聞こえない。
……で、なんで血?
「いいけど…何に使うんだ?」
「病気が無いかの検査。次は二人の『初めて』だから、感染予防の事とか考えたく無いの」
「あぁ、性病検査。ガルさんが「ちゃんと検査して大丈夫ならナマでいい」って言ってたもんな」
着替え終わったみつ兄に言われた通り、指先を針で刺して小さなスポンジのシートに血を付けた。この世界だと目の前ですぐに結果が分かるらしい。
俺の血を吸ったスポンジは、あっという間に白くなった。そしてみつ兄も同じ。良かった、二人とも病気は無いらしい。病気があると血を吸ったスポンジはじわじわと赤くなるらしい。さすがファンタジー、とっても便利で楽だ。
「うん、二人とも大丈夫みたいだね。ふふっ、たっぷり可愛がってあげるから、今夜は楽しみにしててね♡」
「………ん」
「あれ?こう君顔が真っ赤!」
あぁああぁ意識させるなぁ…………
いや、分かってはいたよ?昨夜に言われて俺も凄く期待して、その期待だけで乱れまくったけども!そうか、今夜、か……。今夜、みつ兄は童貞を捨てて俺は処女を捨てる。
だ、ダメだ!考えてたら身も心も色々と保たない!よし、仕事して紛らわすぞ!
朝食を食べてスタミナを付けてから、俺はいつも通りアルバイトに向かった。
いつもは飲み物とか食べ物、あとは洗剤や石鹸なんかを運んでるけど、今日はいつもとは違った。これって建材?結構ずっしりした木の板と、金属とは違うような見た事無い素材の釘。補強や修繕の時に使うらしい。それから掃除道具。そのほとんどが庭具だ。
なんだろうと思いながら運んでいると、手伝いに来たガルさんがキャンディをくれた。な、何これ…何味………?
「不味いだろ」
「酸っぱくて…苦くて…臭いが…………」
「キャルソ味だ」
なっ、はぁ!?キャルソと言ったらこの世界で『万能薬』なんて呼ばれてるハイランクな薬に少量だけ入れられる高級品!なんてモンを飴にしてんの!?
なんて驚きを見抜いたガルさんはクスクスと笑っていた。
「ただのキャルソ風味だ。最近話題のジョークキャンディ」
「なんだ、再現か……って、なんでキャルソを再現してんの。暇か?」
「完熟トルベリー味もあるぞ」
「それ、酸っぱすぎるやつだよな。俺知ってるぞ」
完熟トルベリーは塗料にしか使われない水色のベリーだ。実が付き始めた緑の状態だと甘くて、青くなるにつれて甘酸っぱくなる。そして完熟した水色の時は口にしてはいけないレベルで酸っぱい。ただ傷や美容にはいいからと皮は服を染めるのに良く使われている。
こういうキャンディって、元の世界もこの世界も同じだな。……ゲーム世界と同レベルか。喜ぶべきか悲しむべきか。
キャルソキャンディを噛んで無理やり飲み込んだ。休憩かと思ったら罰ゲームだった時の心情ってこんな感じなんだ。うん、絶対に必要無い経験と感覚だ。
「うし、それじゃあ作業始めるか」
「はーい」
仕事を再開して、1時間くらいで全部の荷物を運び終わった。が、どうやら荷物が足りて無いらしい。なんでもグローブの仕入れがモンスターの影響で遅れてるらしい。今日のギリギリに到着予定だ。
「仕方ねぇな、俺が行ってくる……ん?」
俺はガルさんの服を引っ張った。ここで多く手伝って給料少し上乗せして貰えれば、みつ兄に何か買ってあげられるかもしれない。
「ガルさん、俺に行かせて。この町をもう少し歩いてみたかったんだ。それと、駄賃も少し弾んで貰いたいし」
「ったく、強かなガキめ。いいぜ、町の入り口付近に荷馬車が来るらしいから、町の中で待ってろ。気をつけて行ってこいよ」
ガルさんは俺に短剣を持たせてくれた。町を一歩出たらモンスターが闊歩してるから、一応の護身用にと。
町の入り口のそばにある丸太のベンチで荷馬車を待った。だいぶ空が赤くなって来たし、そろそろ来る頃だろう。
ベンチから町の外を見てると、ちょっと離れた向こう側に馬車が止まってるのが見えた。なんかあったのかな?
とりあえず短剣を腰にセットして馬車の止まってるとこに向かった。
馬車の近くに行くと、ラヴェットに襲われているのが見えた。あぁ、これじゃあ確かに進めない。すぐに加勢してラヴェットを短剣で狩尽くす。……うん、俺も強くなったかな。あっという間に倒せた。
「ありがとう少年!」
馬車を守っていた青年は額の汗を拭いながらお礼を言った。それにしても…御者は商人っぽいから仕方ないとして、なんで大の男3人でラヴェットに防戦一方だったんだ?いくらなんでも弱すぎない?
「そ、そんな目で見ないでくれ…。オレらもこう見えて商人の端くれなんだ。武器は扱っても実戦はからっきしなんだよ」
「はぁ…。モンスターがいるんだから護衛くらい付けたらどうです?」
「返す言葉もない…。あ、少年。その短剣貸してくれないか?刃こぼれしているぞ」
あぁ、武器を扱ってるって言ってたもんな。簡単な修繕とかは出来るのだろう。まぁ助けたお礼として直してもらってもいいかもしれない。一応借り物だし。
そう思って短剣を男に渡すと、別の男が俺の背後から強く殴って来た。え……?なん、で…………
遠のく意識の中、男達が笑う声だけが聞こえた。
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