【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

輝石玲

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孤児院での生活

29.呪い愛?何がダメ?

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 俺たちの故郷の事はちゃんと教えた。他にも聞きたいことがあったのだろうか。とりあえず引き留められるまま部屋に留まりもう一度座る。

「その…お前にこんなこと言うのも酷だとは思うが………」
「ガルさん?」
「お前、兄の方と距離を取れ」

 …え?なんで?なんで俺とみつ兄の関係を知りながら協力してくれたガルさんがそんな事言うんだ?今更みつ兄と距離を取れなんて……。

「本当はもっと早く伝えるべきだったが…言いづらくてな。でもこのままお前らが共にいれば、二人とも取り返しのつかないことになる」
「取り返しのつかない事?それって……」

 どんな事?そう聞こうと思った矢先に、部屋の外から何か割れるような音と悲鳴が聞こえてきた。

「悪い!話は後だ!」
「え、あ、俺も行く!」

 部屋を飛び出すガルさんを追いかけて俺も部屋の外に行くと、廊下の奥に人が集まっていた。そのままその場所に行くと、そこではみつ兄とメルトさんが顔色を悪くして座り込んでいた。

「みつ兄!メルトさん!」

 急いで人の隙間を掻い潜りみつ兄の側に行くと、みつ兄は無傷でもメルトさんの手が血だらけになっている事に気付いた。でも……何があってみつ兄はこんなにもメルトさんを敵対視してるんだろう。何かに恐れているような…とにかく顔色が悪い。

「みつ兄…?」
「こう君、この人に近づいちゃダメ!」

「見せ物じゃねぇぞ!」

 ガルさんが一喝すると、周りに集まっていた人は退散し始めた。そのまま、メルトさんの治療や説明諸々のためにガルさんの部屋に戻る事になった。




 ガルさんがメルトさんの手当てをしてる間に、何があったのかをみつ兄に直接聞いた。すると、みつ兄は俺を力いっぱい抱きしめて、不安そうに教えてくれた。

「分からない…いつも通りお手伝いをしてたら、急に呼び出されて…何か魔法を使われた…のかな。でも、兄さんは何ともなくて、メルトさんが怪我をしてた」

 なんでそんな事になったのか検討も付かない。メルトさんは理由も無く誰かを傷付けようとする人じゃ無いし、みつ兄も何か傷つけられるような事はしないはず。なら、傷付けるのとは違う目的で魔法を?でもその目的って?



 メルトの手当てが終わって、話すために席に着いた。とは言え椅子は三つしか無いから怪我人のメルトさんはガルさんのベッドに座っている。

「メルト、お前何をしようとしたんだ?」
「ちゃんとやる事やらなかったガレアンの尻拭い。ミツルに掛けられた呪いを解こうとした」
「呪い!?」

 みつ兄、呪われてるの!?ビックリしてみつ兄の方を見ると、みつ兄もビックリ顔で俺を見ていた。みつ兄も知らなかったらしい。

「呪い、解こうとしたら跳ね返された。呪いを掛けた人の無意識で」
「みつ兄は誰に呪われて……」
「君でしょ、コウセイ」

 え?俺がみつ兄を呪ってる?でも俺にそんな力は無いし、そんな意思だってもちろん無い。

「初めて会った時はミツルが一方的にコウセイを呪っていた。でも今はコウセイもミツルを呪い始めている。今のうちに解くべきだと思ってたけど、どうやら手遅れだったみたい。今の君たちは互いに互いを呪っている。今、そのせいで二人とも共依存に陥ってる。今の二人からすれば万々歳かも知れないけど、このままだと命に関わる」

 互いに互いを呪ってる?だから共依存になってる?前はみつ兄が一方的に呪ってた?
 ……俺の方が先にみつ兄を好きだったのに?
 自覚したのは最近と言え、俺は物心ついた時からみつ兄が好きだ。どう言う『好き』なのかは最近気付いた。最初から変わらない『好き』は兄弟愛だと思っていた。でも本当は恋愛、性愛だってことにみつ兄に何度も抱かれる事で気付かされた。こんな思い、兄弟間にあるはずが無いんだと。

「……なんで、命に関わるんですか?」
「共依存や他者依存は一人になった瞬間何も出来なく…植物状態になる」
「つまり、一人にならないなら障害は無いんですよね?」
「…君、正気じゃ無いね。ミツルの方がまだマシに見えるよ」
「メルトさん、僕はこう君と同じ考えですよ?」
「…………」

 何を言ってるんだろうメルトさん。共依存してるなら離れるわけないのに。引き離されるようならもちろん全力で抵抗する。呪いなんて無くてもそばを離れる気なんて元の世界にいた時から無いのに。

「チッ…メルト、諦めろ。ここまで来ればいくらお前と言えど対処出来ない。後は俺がなんとかするからお前は手を引け」
「分かった。でも、ボクはガレアンのやり方に賛同出来ないから何も手伝わないよ」

 そう言うとメルトさんは包帯でグルグルの手で杖を持って部屋を後にした。あ、あれ?俺、なんかマズった?
 ガルさんの部屋から出て俺たちも自室に戻った。今日は故郷の事を教えるだけのはずだったのに、俺たちがお互いに呪い合ってたなんてビックリだ。でも不思議と嫌じゃ無い。呪いなんて良いイメージ無いのに。

 むしろ嬉しいとさえ思いながら、酔っているようなふわふわとした足取りで部屋に戻った。
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