【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

輝石玲

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孤児院での生活

17.自白剤はズルでは?

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 孤児院にやってきた次の日。俺たちはリリスさんに呼ばれて談話室に来た。
 ソファーでみつ兄と並んで座り、リリスさんは机を挟んだ目の前に座った。聞きたいことがあると言われて呼ばれたけど、一体何なのだろうか。振舞われたリンゴジュースを飲みながら、リリスさんが話を始めるのを待った。

「……いい?正直に答えてちょうだい。貴方たちの出自や過去についてよ」

 ……あー、まぁ聞かれるよな。なんて誤魔化そう。異世界から来ましたって言っても信じられないだろうし……。

「最初に確認。貴方たちの名前は?」
「光成です」
「光流です」

 リリスさんはメモをとりながら質問を続けた。

「年齢は?」
「15」
「18です」

「故郷は?」
「……東京です」

 あれ?なんで今、正直に答えたんだろう。もっと誤魔化しようがあったのに……まさか!?さっき飲んだリンゴジュースって………!

「トウキョウ?聞いたこと無いわね」
「ここからとても遠いので……」

 ナイスみつ兄!みつ兄の様子と顔色も変だから、みつ兄の方にも自白剤が入れられてるみたいだ。嘘はつけない代わりに言葉は選ばないと……。ってか、みつ兄頼んだ!

「親御さんは?」
「母は弟が幼いうちに他界しています。父は故郷にいると思うのですが………」
「ここに来る前、そのトウキョウにいた?」
「はい。実は気付いたらガルさん…ガレアンさんがいる森にいたんですが、その前はずっと東京から出ていませんでした」

 さすがみつ兄。とにかく俺たちが異世界から来たって事だけは隠さないと。でも、自白剤なんて物の効力は知らないし、どこかでボロが出てもおかしくは無い。気をつけないと…

「貴方達は勉強を受けた事はある?」
「はい」
「誰に何を教わっていた?」
「教師に一般的な知識を…いえ、使わなそうな知識も教わっていました」

 使わなそうな知識。そうだよな。算数は使っても数学は今後使わないだろうし…。弥生時代とかそんな昔のことを知ってもなぁ、って授業のたびに思ってた。

「それでも文字は読めないのね」
「同じ言葉を使っていても文字が違いますから」
「そう………」

 今、一瞬だけ鳥肌が立った。リリスさんを取り囲む空気が急に冷たく、重くなって緊張感が走る。

「………ねぇ、コウセイ。貴方は人を殺したことはある?」
「……!は、い…………」

 まずい、名指しで聞かれた上に嘘がつけない。自白剤を使われてるだけでも信用されていないことは分かるけど、よりによってその質問か。

「初めて殺しをしたのはいつ、どこで、誰を?」
「四、五日前…?に、森で警備隊を………」
「それが初めてなの?」
「はい……」

 あぁ……言ってしまった………。警備隊殺したこと言っちゃった。どうしよう、罪に問われる?捕まって、みつ兄から引き離されたらどうしよう。自分でも緊張と恐怖で血の気が引いていくのが分かる。

「……安心なさい。反省してこれから手を汚さないと誓えるのなら罪に問うつもりは無いわ」
「ほ、本当ですか?」
「えぇ。本当よ」

 そう聞いてクソデカため息を吐いた。色々あったからか殺した時の感覚は結構忘れかけている。こっちの世界じゃ元の世界より命の価値は軽いから…なのだろうか。奪ったはずなのに実感が無い。それでも殺したことに変わり無いのだから俺は人殺しだ。
 けど、殺したことを後悔も反省もしていない。それどころか罪に問われなくて良かったと安堵するだけだ。俺は最低だな。

「それからミツル。ガレアン以外の男の人に性的なことをされた事はある?」
「「!」」

 ガルさんにされたのは知ってるんだ…。まぁ、ガルさんに色々と聞いてるからこその質問だったんだろうけど。けど……みつ兄のそんな話、俺は正直聞きたく無いな。

「……あります。」
「そう…。初めて手を出されたのは?」
「……………」

 みつ兄は答えそうになったのを口を塞いで遮った。何が何でも答えたく無いのだろうか。

「答えなさい」
「…………そ、の……、ここのつ、の…ときに…………」

 …………え?待って、そんなの知らない。そんな幼い時にみつ兄は……?
 いや、そう言えば九年前にもう一人の兄、やと兄が暴力事件を起こしてる。成人男性3人をボコして、それでもやと兄は傷害罪にならなかった。もしかして、そのボコした相手ってみつ兄を襲った奴らってこと?やと兄は悪く無い人に危害を加えないし………

「思い出したく無いです!もう、何も聞かないでください!」
「にぃ………」
「ごめんなさいね。私も子供たちの情報は事細かく記録しないといけないの。今聞いたことを誰かに教えることも無いから、そこは安心してちょうだい?大丈夫、秘密は守るわ」

 みつ兄の顔色が悪すぎるから、質問はそこで終わった。





 そのまま部屋に戻ると、みつ兄は俺と同じベッドに座ってそのまま俺に抱きついた。……まぁ、俺がこっちに来るよう手を引いたんだけど。

「大丈夫?」
「……こう君、嫌いにならない?」
「なんで嫌いになるんだよ」
「………兄さん、子供の頃からずっと汚かったから……」

 そう言いながら俺を抱きしめる手は緩む事は無かった。俺に嫌われて見捨てられるのが怖いのだろう。そんなこと、あるはず無いのに。俺だって人殺しなんだよ?

「汚く無い。みつ兄はいつだって綺麗で可愛い」
「か、可愛いのはこう君の方でしょ?弟のクセに……兄さんに可愛いなんて言わないで」

 あ、顔がちょっと赤くなった。可愛いな。もしかして『可愛い』って言われると恥ずかしがるのだろうか。それはいいことを知った。

「ねぇみつ兄。何の躊躇いもなく冷静に人を殺した俺は汚い?」
「そんな訳無い!だってそれは兄さんを守って……!」
「俺が汚く無いならみつ兄も汚く無いな。汚いって、心のうちが真っ黒でロクなこと考えてない人のことを言うんじゃ無いかな」

 そう言うとみつ兄は顔を上げて、俺にキスをした。それだけでどこか落ち着いた顔になるなんて、みつ兄の落ち着く方法は独特だ。でも、悪い気はしない。

「……あのね、兄さん…九歳の時に襲われてから性に依存しちゃったんだ。最初は気持ち悪くて怖かったのに、何かを吸わされてから何も分かんないくらい気持ちいいことしか無くなって、それは危険な薬だってお医者さんに言われた。薬に依存しなかったことが不幸中の幸いだったけど…あれから体だけは治らなくって、酷い時は我慢出来ずに学校のトイレで授業をサボってまで一人でシてた」

 そう…だったんだ。こっちの世界に来てからスキンシップが度を過ぎ始めたんじゃ無くて、元の世界だと一人になる時間を作れてたから俺のとこに来なかっただけなんだ。異世界じゃ一人になるのは危険だ。だから一人になれなくて、耐えきれなかったものが俺に向けられてただけ。

「みつ兄、俺と二人の時は我慢しないで。俺、みつ兄のためなら何だってするから。な?」
「ありがとう、こう君……。ねぇ、ならさ、今夜…しても、いい?」
「ん゛っ…………(限界化)」

 こ、言葉で直接誘われるのは、それはそれで恥ずかしすぎる!しかもみつ兄が落ち着いたからか気の抜けた顔をしてて…可愛い。可愛すぎる。みつ兄には悪いけど、そりゃあ襲われるなと思ってしまう。

「いいけど…その顔、絶対に外ではしないで」
「え?どんな顔?」
「すごく…えっちな顔」

 そう言うとみつ兄は顔を真っ赤にした。だからその顔ぉ!
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