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はじめまして見知った異世界!
16.兄弟の境遇は(ガレアン)
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不思議な兄弟か眠った後、談話室でリリスとあいつらについて話した。
机を挟んでソファーに座り、度数の低い酒をもらった。軽くでも酔ってた方が話しやすいからな。……特にあいつらから感じたものは異質だ。明らかに普通じゃ無い。
「それで、アルコールが入らないと話せないあの子たちの話って?」
「……いくつか、俺の知ってることと違和感を伝える」
リリスは賢い。俺の浅い考察を上回る考えを出せるはずだ。俺が考えたあいつらの正体は…当たって欲しくないものだからな。
まず、俺の知ってることだ。
二人は血の繋がった兄弟で、年は兄の方のミツルが18、弟の方のコウセイが15。二人とも若いが幼くは無い年だ。血の繋がってない兄弟は他にもいるらしいが、それ以外は家族の事は聞いていない。
それから、二人の故郷は独特な文化が多い。食事前後の儀式と公用語とは違う文字。更には見たこともない上質で丈夫な生地の衣服。
直接聞いたのはこの程度で、あとは俺が五感で感じ取った事実しか知らないだろう。むしろ、聞いたこと全てを信用するより自分で感じたものの方が確実だろう。
揺るぎない事実は二つ。
一つは兄の方が男性経験があること。初対面の時に性の匂いを纏っていたことと、口内に雄の味がしたことが理由だ。弟とデキてたかと思ったが、その時点では弟の方は口淫を知らなかった。つまり別の男のものだろう。相当な不快感があったからおそらく相手は不潔か中年。確実に弟の方では無い。それに尻も解す必要がほとんど無いくらいには柔らかくなっていた。状況的に直近の相手は死んだ警備隊だ。これは憶測だがな。
「ちょ、ちょっと待ってガレアン。貴方、あの子たちに……!」
「言い訳の余地もないな。だが不可抗力でもあった。あいつら、スライムの媚薬飲まされてたんだよ」
「そう……あの子たちに謝った?」
「あぁ、尻尾を触らせたら許すってさ。何が楽しいのやら」
「………それは獣人と人間の価値観の差ね。でも急所を触らせたことにびっくりよ」
(撫でるの上手くて気持ちよくなってたなんて口が裂けても言えねぇ……)
………で、話を戻すぞ。
もう一つ感じ取った事実。それは…弟の方が戦闘の訓練を受けてたことだ。
兄弟の二人とも血の匂いがした。だが兄の方が人やモンスターを殺すには軟弱すぎる。手も柔らかければ腕の筋肉も無かった。傷はスライムに食われたようだからアテにならないけどな。だが弟の方は傷が無くても剣を扱った跡があった。手のひらや指の硬さは剣を振り続けたやつのそれだ。筋力も申し分無ければ体力もスピードもある。
二人とも魔法適正は絶望的だが、弟の方は筋力だけでも一般人なら難なく殺せるだろう。そして状況的に、警備隊を殺したのも弟の方だ。兄の手伝いもあったかも知れないが、手を下したのは確実に弟で間違いない。
「確かに、服を合わせただけでもちゃんと鍛えてることは分かったわ。あれくらいの歳なら冒険者として実績を積んでるのかと思ったのだけれど……。でも、それだけで訓練を受けてたとは考えづらいわ。剣の訓練なんて一人でも出来るのに、わざわざ『受けてた』なんて言う理由はあるの?」
「あぁ、俺も最初は自主的なモンだと思ってはいたが………」
ラヴェットの狩り方がやけに正確だった。ラヴェットの弱点は角と角の間、眉間に当たる部分だ。多少の荒さはあったが戦闘用じゃないサバイバルナイフで確実に仕留める技術と、弱点に関する知識は確かだ。
移動中に他のモンスターの話題を出してみたが、兄の方はちんぷんかんぷんで弟の方は全て理解していた。つまり、モンスターに関する知識も弟だけ多いと言うこと。独学と言うにはラヴェットの狩り方があまりにも正確で、実際に戦った事があるとしか思えない。
俺なら相当な場数を踏んでる以上そう簡単にやられねぇ。が、訓練は受けてもロクに仕事しない警備隊など敵ではないだろう。身元が完全に明らかになるまで俺はあいつの側で休むことなどしてはならない。
そしてここからは想像でしかない。
結論から言えば、二人は『道具として育てられた』だ。兄の方は性奴隷として、弟の方は人間兵器として。
兄の方は性の知識は多くはないが少なくも無かった。あいつの場合は知識は無く経験があったのだろう。高い性感に開発された身体。危険すぎる貞操感。相手を選ばず奉仕させるため躾けられたような行動に感じた。男娼であれば教養はあるはずだから、その可能性は消去される。
弟の方はやはりモンスターや人体の知識が豊富だ。ラヴェットの狩り方もそうだが、死んだ警備隊はどれも急所を二度切られ、確殺されている。どこが弱点でどう言う風に傷つければ殺せるかを熟知してるような傷だ。おそらく人殺しは初めてじゃ無いだろう。少し気になったのはラヴェットを狩った時に出来た小さな傷。本当にプロだとしたらたかがウサギに傷つけられることなど無いはず。それでもところどころに打ち身や擦り傷があったのは…身の守り方を教わっていないから?使い捨ての兵器ということだろうか?文字が読めないのも情報を兵器に教えて漏洩されたら困るから、と考えられる。
これらは憶測に過ぎないが、可能性は高いだろう。外れていて欲しいとは思うが…。
「なるほど、確かに通るわね」
「まぁ、普通の家で育ったわけじゃ無いことは確実だな。知識やスキルが偏りすぎだ」
この可能性があるから直接聞けない。俺が嫌われ役になれば聞いた時の反応くらいは見れるだろうが…過去のトラウマのせいで人の顔色を窺うクセがついていて出来ない。
「リリス、それとなく本人に聞けねぇか?」
「明日にでも試してみるわ。それで私が嫌われたら貴方が二人をお願いね」
「わーったよ」
「……返事」
「わ、分かった…ました……?」
まったく、この若作りババアが………
「なんか失礼なこと、考えてなぁい?」
「……何でもねっス」
とりあえず、今はこのおっかない女から離れよう。そして久しぶりにしっかりと眠ろう。
机を挟んでソファーに座り、度数の低い酒をもらった。軽くでも酔ってた方が話しやすいからな。……特にあいつらから感じたものは異質だ。明らかに普通じゃ無い。
「それで、アルコールが入らないと話せないあの子たちの話って?」
「……いくつか、俺の知ってることと違和感を伝える」
リリスは賢い。俺の浅い考察を上回る考えを出せるはずだ。俺が考えたあいつらの正体は…当たって欲しくないものだからな。
まず、俺の知ってることだ。
二人は血の繋がった兄弟で、年は兄の方のミツルが18、弟の方のコウセイが15。二人とも若いが幼くは無い年だ。血の繋がってない兄弟は他にもいるらしいが、それ以外は家族の事は聞いていない。
それから、二人の故郷は独特な文化が多い。食事前後の儀式と公用語とは違う文字。更には見たこともない上質で丈夫な生地の衣服。
直接聞いたのはこの程度で、あとは俺が五感で感じ取った事実しか知らないだろう。むしろ、聞いたこと全てを信用するより自分で感じたものの方が確実だろう。
揺るぎない事実は二つ。
一つは兄の方が男性経験があること。初対面の時に性の匂いを纏っていたことと、口内に雄の味がしたことが理由だ。弟とデキてたかと思ったが、その時点では弟の方は口淫を知らなかった。つまり別の男のものだろう。相当な不快感があったからおそらく相手は不潔か中年。確実に弟の方では無い。それに尻も解す必要がほとんど無いくらいには柔らかくなっていた。状況的に直近の相手は死んだ警備隊だ。これは憶測だがな。
「ちょ、ちょっと待ってガレアン。貴方、あの子たちに……!」
「言い訳の余地もないな。だが不可抗力でもあった。あいつら、スライムの媚薬飲まされてたんだよ」
「そう……あの子たちに謝った?」
「あぁ、尻尾を触らせたら許すってさ。何が楽しいのやら」
「………それは獣人と人間の価値観の差ね。でも急所を触らせたことにびっくりよ」
(撫でるの上手くて気持ちよくなってたなんて口が裂けても言えねぇ……)
………で、話を戻すぞ。
もう一つ感じ取った事実。それは…弟の方が戦闘の訓練を受けてたことだ。
兄弟の二人とも血の匂いがした。だが兄の方が人やモンスターを殺すには軟弱すぎる。手も柔らかければ腕の筋肉も無かった。傷はスライムに食われたようだからアテにならないけどな。だが弟の方は傷が無くても剣を扱った跡があった。手のひらや指の硬さは剣を振り続けたやつのそれだ。筋力も申し分無ければ体力もスピードもある。
二人とも魔法適正は絶望的だが、弟の方は筋力だけでも一般人なら難なく殺せるだろう。そして状況的に、警備隊を殺したのも弟の方だ。兄の手伝いもあったかも知れないが、手を下したのは確実に弟で間違いない。
「確かに、服を合わせただけでもちゃんと鍛えてることは分かったわ。あれくらいの歳なら冒険者として実績を積んでるのかと思ったのだけれど……。でも、それだけで訓練を受けてたとは考えづらいわ。剣の訓練なんて一人でも出来るのに、わざわざ『受けてた』なんて言う理由はあるの?」
「あぁ、俺も最初は自主的なモンだと思ってはいたが………」
ラヴェットの狩り方がやけに正確だった。ラヴェットの弱点は角と角の間、眉間に当たる部分だ。多少の荒さはあったが戦闘用じゃないサバイバルナイフで確実に仕留める技術と、弱点に関する知識は確かだ。
移動中に他のモンスターの話題を出してみたが、兄の方はちんぷんかんぷんで弟の方は全て理解していた。つまり、モンスターに関する知識も弟だけ多いと言うこと。独学と言うにはラヴェットの狩り方があまりにも正確で、実際に戦った事があるとしか思えない。
俺なら相当な場数を踏んでる以上そう簡単にやられねぇ。が、訓練は受けてもロクに仕事しない警備隊など敵ではないだろう。身元が完全に明らかになるまで俺はあいつの側で休むことなどしてはならない。
そしてここからは想像でしかない。
結論から言えば、二人は『道具として育てられた』だ。兄の方は性奴隷として、弟の方は人間兵器として。
兄の方は性の知識は多くはないが少なくも無かった。あいつの場合は知識は無く経験があったのだろう。高い性感に開発された身体。危険すぎる貞操感。相手を選ばず奉仕させるため躾けられたような行動に感じた。男娼であれば教養はあるはずだから、その可能性は消去される。
弟の方はやはりモンスターや人体の知識が豊富だ。ラヴェットの狩り方もそうだが、死んだ警備隊はどれも急所を二度切られ、確殺されている。どこが弱点でどう言う風に傷つければ殺せるかを熟知してるような傷だ。おそらく人殺しは初めてじゃ無いだろう。少し気になったのはラヴェットを狩った時に出来た小さな傷。本当にプロだとしたらたかがウサギに傷つけられることなど無いはず。それでもところどころに打ち身や擦り傷があったのは…身の守り方を教わっていないから?使い捨ての兵器ということだろうか?文字が読めないのも情報を兵器に教えて漏洩されたら困るから、と考えられる。
これらは憶測に過ぎないが、可能性は高いだろう。外れていて欲しいとは思うが…。
「なるほど、確かに通るわね」
「まぁ、普通の家で育ったわけじゃ無いことは確実だな。知識やスキルが偏りすぎだ」
この可能性があるから直接聞けない。俺が嫌われ役になれば聞いた時の反応くらいは見れるだろうが…過去のトラウマのせいで人の顔色を窺うクセがついていて出来ない。
「リリス、それとなく本人に聞けねぇか?」
「明日にでも試してみるわ。それで私が嫌われたら貴方が二人をお願いね」
「わーったよ」
「……返事」
「わ、分かった…ました……?」
まったく、この若作りババアが………
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