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はじめまして見知った異世界!
12.最初の町とガルさん
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しばらく歩いて昼頃に、かみつぐの最初の町『レティ』に到着した。ガルさんが言うには、あと一時間も歩かずに孤児院に着くらしい。
「寄りたいトコもあるし、ここらで昼休憩とするか」
「「はーい」」
「……仲良いな」
俺たちはすぐ近くの酒場に入った。ゲームだと主人公が子供と言うこともあって、依頼がある時しか酒場に入れない。
あまり治安がいいとは言えないけど安くて味も確かな店、とはNPCが言ってたけど…賑やかではあれど治安が悪いようには見えない。昼間だからかな。
メニューを開き、何を食べるか決めようとした。……が、文字が読めない。そ、そうだった……。ここじゃ言語が知ってるものに変わったり選択肢が出るわけじゃなかった。
「ガルさん…メニュー読めない………」
「え」
「すみません、なんて書いてあるか教えてくれませんか?」
「ま、じか……お前ら…………いや、なんでも無い。読めばいいか?」
なんか今、凄くビックリしてなかった?や、やっぱ文字が読めないのは教養が無いどころか一般常識すら知らない扱いだよな。
「ありがとう、ガルさん。俺たち、故郷だと違う文字を使ってたから公用語が読めなかったんだ。孤児院に行けば読めるようになるかな」
「もちろん、社会に出る最低限の教育はある。………お前らも難儀だったな」
難儀だった?いやまぁ不便はあるけど、ガルさんの中で俺たちはどう言う境遇だと思われてるんだろ。
まぁ、ちゃんと勉強できるなら良かった。
ガルさんにメニューを読んで貰って、みつ兄はチーズドリアを、俺はラヴェットシチューとパンを、ガルさんはミートサンドを頼んだ。
待ってる間に俺とみつ兄は名前だけガルさんに教えた。特にこれといった反応も無く、相変わらず『兄の方』『弟の方』と呼んでいる。それで定着したんだな…。
なんて思ってると、自分たちが座ってる席がやけに注目されてることに気付いた。そっと周りを見てみると、笑う人や怯える人、怒ってる人がいる。
「なんであいつが」
「よく来れたもんだな」
「飯が不味くなる」
「誰か追い出せよ」
そんな、嫌な声が明らかにこっちに投げつけられている。それもハッキリと聞こえる声で。これは………ガルさんに向けて?
「……悪ぃな、お前ら。もう大丈夫だろうと思っていたが巻き込んじまったみてぇだ」
「ガルさん…?」
条件反射で周りをよく見ようとしたその時、みつ兄が俺の手を掴んだ。
「こういう時は無視、だよ。反応したら反感を買うのはガルさんだから」
「わ、分かった……」
言われた通りにスルーしようとした。でも、最悪なことに向こうからこっちに突っかかって来た。無精髭にやつれた顔の、昼間から飲んでるおっさん。酒瓶片手に見下した目でこっちに来た。
「おいおいおい、誰かと思ったらガレアンじゃねぇかよぉ!」
「……誰だ、テメェ」
ガレアン?えっと、ガルさんの本名?あれ、聞き覚えが………
「まぁた、お綺麗なお子様引っ掛けて遊んでんのか?っかー!てめえも懲りねぇなぁ!」
「黙れ。つーか、テメェは誰だっつってんだ」
このおっさん、ガルさんの知り合いじゃ無いんだ。初対面でこんな馬鹿にするように話しかけられるなんて、天才的な馬鹿か?
ガルさん、こんな人に『お前、誰?』なんて聞かなくてもいいよ。関わり合いになったらロクなことにならないって絶対。
「おいそこのお子様共、気をつけろよぉ?コイツ、五年前にガキ食って捕まってるやべぇやつだからなぁ!」
おっさんがそう言うと、ガルさんは苦い顔をした。たぶん、知られたく無かったんだろうな。ガルさんも知られたく無い過去があるから、俺たちのことも詮索しなかった。そんな気がする。
にしても、食ったって……
「カニバリズム?」
「お子様から出ていいワードじゃねぇだろ……。って、そうじゃ無くてよぉ!」
「性的な意味、でしょうか?」
突然会話に……会話?いや、口論に口を挟んだみつ兄。性的な意味で食った…。そんな言い方するんだ。たぶん、ストレートに言えば抱いたって意味だよな?
「お言葉ですがおじさま、僕たちは自分の意思で彼に同行しています。それは彼が僕たちに危害を加えないと判断したからです」
「はっ、そうやって油断してると二人まとめて食われちまうかもしれねぇぜ?」
「噂でしか人を判断できない、マナーのなっていない方に言われても説得力に欠けますよ。少なくとも、貴方よりは僕たちの方が彼の人格を知っています。危険なのは常識無い貴方の方ですね」
うわぁ、丁寧な言葉でなんてことを……。さすがみつ兄、かっこいい!そーだそーだ!昼間っから酔っ払って人様に迷惑かける方がダメだぞー!……いや、子供を性的に襲うのもダメだけどさ?
「こっ、このガキぃ!」
何をとち狂ったのか、おっさんは酒瓶を振り上げてみつ兄をぶとうとした。直前で俺が庇ってなんとかみつ兄は無事だけど…俺は酒を被って、右頬の下の方をガラスで切った。
がしゃんと大きな音を立てて割れた酒瓶。町の警備隊が来るまでの騒動になり、おっさんはそのまま連れて行かれた。
去り際に警備隊の一人がガルさんに話しかけた。
「ガレアン、騒動が起きると分かっていながらなぜ町に戻って来た?」
「…………」
そのままガルさんは黙り込んだ。
あぁ、思い出した。ガレアン…聞き覚えがあるはずだ。かみつぐで主人公と同じ孤児院にいた狼の獣人。敵の秘密を知り、脅されて敵の指示に従った子供。主人公たちに助けられることにはなるけど、町からは敵扱いされて孤児院以外の居場所を失ったキャラだ。本編だと十三歳だったから気付かなかった。
獣人は本能で動く種族。それ故に危険視される事の多い種族だ。非難される事に慣れているようにも見えた。
俺は被った酒を拭いて学ランに着替えて、傷の手当てをしてもらった。ひと段落してから既に到着して冷めた昼食を食べた。心情的に味が分かりづらくて、とても楽しい食事とは言えない。
そのまま食べ終わると、ガルさんはどこか寄りたい場所があると言ってそこに向かった。俺たちもついて行ったけど、周りからの視線が気になる。今は獣人だって分からない完全な人形でも、ガルさんだって気付かれるくらい悪い方向で有名なんだ。
しばらく歩いて、道具屋に来た。
「弟の方、お前が狩ったラヴェットの角と皮、売っぱらってもいいか?」
「え、あ、うん」
持って来てたんだ…。全然気付かなかった。
ガルさんはラヴェットの皮と角を換金すると、小さな袋に入れて俺に渡して来た。
「お前一人で狩った獲物だ。大した額じゃねぇが小遣いにはいいだろう」
「え、そんな、ガルさんが持ってた方がいい!ガルさんにお世話になったんだし……」
「串焼きは貰ったからそれで充分だ」
ガルさん………。なんでこんな優しい人が酷い目に遭わないと行けないんだろう。分かってたはずでも、元の世界もこの世界も優しい人には無情で無慈悲だ。
そして十数分歩いて、ようやく目的の孤児院に到着した。
「寄りたいトコもあるし、ここらで昼休憩とするか」
「「はーい」」
「……仲良いな」
俺たちはすぐ近くの酒場に入った。ゲームだと主人公が子供と言うこともあって、依頼がある時しか酒場に入れない。
あまり治安がいいとは言えないけど安くて味も確かな店、とはNPCが言ってたけど…賑やかではあれど治安が悪いようには見えない。昼間だからかな。
メニューを開き、何を食べるか決めようとした。……が、文字が読めない。そ、そうだった……。ここじゃ言語が知ってるものに変わったり選択肢が出るわけじゃなかった。
「ガルさん…メニュー読めない………」
「え」
「すみません、なんて書いてあるか教えてくれませんか?」
「ま、じか……お前ら…………いや、なんでも無い。読めばいいか?」
なんか今、凄くビックリしてなかった?や、やっぱ文字が読めないのは教養が無いどころか一般常識すら知らない扱いだよな。
「ありがとう、ガルさん。俺たち、故郷だと違う文字を使ってたから公用語が読めなかったんだ。孤児院に行けば読めるようになるかな」
「もちろん、社会に出る最低限の教育はある。………お前らも難儀だったな」
難儀だった?いやまぁ不便はあるけど、ガルさんの中で俺たちはどう言う境遇だと思われてるんだろ。
まぁ、ちゃんと勉強できるなら良かった。
ガルさんにメニューを読んで貰って、みつ兄はチーズドリアを、俺はラヴェットシチューとパンを、ガルさんはミートサンドを頼んだ。
待ってる間に俺とみつ兄は名前だけガルさんに教えた。特にこれといった反応も無く、相変わらず『兄の方』『弟の方』と呼んでいる。それで定着したんだな…。
なんて思ってると、自分たちが座ってる席がやけに注目されてることに気付いた。そっと周りを見てみると、笑う人や怯える人、怒ってる人がいる。
「なんであいつが」
「よく来れたもんだな」
「飯が不味くなる」
「誰か追い出せよ」
そんな、嫌な声が明らかにこっちに投げつけられている。それもハッキリと聞こえる声で。これは………ガルさんに向けて?
「……悪ぃな、お前ら。もう大丈夫だろうと思っていたが巻き込んじまったみてぇだ」
「ガルさん…?」
条件反射で周りをよく見ようとしたその時、みつ兄が俺の手を掴んだ。
「こういう時は無視、だよ。反応したら反感を買うのはガルさんだから」
「わ、分かった……」
言われた通りにスルーしようとした。でも、最悪なことに向こうからこっちに突っかかって来た。無精髭にやつれた顔の、昼間から飲んでるおっさん。酒瓶片手に見下した目でこっちに来た。
「おいおいおい、誰かと思ったらガレアンじゃねぇかよぉ!」
「……誰だ、テメェ」
ガレアン?えっと、ガルさんの本名?あれ、聞き覚えが………
「まぁた、お綺麗なお子様引っ掛けて遊んでんのか?っかー!てめえも懲りねぇなぁ!」
「黙れ。つーか、テメェは誰だっつってんだ」
このおっさん、ガルさんの知り合いじゃ無いんだ。初対面でこんな馬鹿にするように話しかけられるなんて、天才的な馬鹿か?
ガルさん、こんな人に『お前、誰?』なんて聞かなくてもいいよ。関わり合いになったらロクなことにならないって絶対。
「おいそこのお子様共、気をつけろよぉ?コイツ、五年前にガキ食って捕まってるやべぇやつだからなぁ!」
おっさんがそう言うと、ガルさんは苦い顔をした。たぶん、知られたく無かったんだろうな。ガルさんも知られたく無い過去があるから、俺たちのことも詮索しなかった。そんな気がする。
にしても、食ったって……
「カニバリズム?」
「お子様から出ていいワードじゃねぇだろ……。って、そうじゃ無くてよぉ!」
「性的な意味、でしょうか?」
突然会話に……会話?いや、口論に口を挟んだみつ兄。性的な意味で食った…。そんな言い方するんだ。たぶん、ストレートに言えば抱いたって意味だよな?
「お言葉ですがおじさま、僕たちは自分の意思で彼に同行しています。それは彼が僕たちに危害を加えないと判断したからです」
「はっ、そうやって油断してると二人まとめて食われちまうかもしれねぇぜ?」
「噂でしか人を判断できない、マナーのなっていない方に言われても説得力に欠けますよ。少なくとも、貴方よりは僕たちの方が彼の人格を知っています。危険なのは常識無い貴方の方ですね」
うわぁ、丁寧な言葉でなんてことを……。さすがみつ兄、かっこいい!そーだそーだ!昼間っから酔っ払って人様に迷惑かける方がダメだぞー!……いや、子供を性的に襲うのもダメだけどさ?
「こっ、このガキぃ!」
何をとち狂ったのか、おっさんは酒瓶を振り上げてみつ兄をぶとうとした。直前で俺が庇ってなんとかみつ兄は無事だけど…俺は酒を被って、右頬の下の方をガラスで切った。
がしゃんと大きな音を立てて割れた酒瓶。町の警備隊が来るまでの騒動になり、おっさんはそのまま連れて行かれた。
去り際に警備隊の一人がガルさんに話しかけた。
「ガレアン、騒動が起きると分かっていながらなぜ町に戻って来た?」
「…………」
そのままガルさんは黙り込んだ。
あぁ、思い出した。ガレアン…聞き覚えがあるはずだ。かみつぐで主人公と同じ孤児院にいた狼の獣人。敵の秘密を知り、脅されて敵の指示に従った子供。主人公たちに助けられることにはなるけど、町からは敵扱いされて孤児院以外の居場所を失ったキャラだ。本編だと十三歳だったから気付かなかった。
獣人は本能で動く種族。それ故に危険視される事の多い種族だ。非難される事に慣れているようにも見えた。
俺は被った酒を拭いて学ランに着替えて、傷の手当てをしてもらった。ひと段落してから既に到着して冷めた昼食を食べた。心情的に味が分かりづらくて、とても楽しい食事とは言えない。
そのまま食べ終わると、ガルさんはどこか寄りたい場所があると言ってそこに向かった。俺たちもついて行ったけど、周りからの視線が気になる。今は獣人だって分からない完全な人形でも、ガルさんだって気付かれるくらい悪い方向で有名なんだ。
しばらく歩いて、道具屋に来た。
「弟の方、お前が狩ったラヴェットの角と皮、売っぱらってもいいか?」
「え、あ、うん」
持って来てたんだ…。全然気付かなかった。
ガルさんはラヴェットの皮と角を換金すると、小さな袋に入れて俺に渡して来た。
「お前一人で狩った獲物だ。大した額じゃねぇが小遣いにはいいだろう」
「え、そんな、ガルさんが持ってた方がいい!ガルさんにお世話になったんだし……」
「串焼きは貰ったからそれで充分だ」
ガルさん………。なんでこんな優しい人が酷い目に遭わないと行けないんだろう。分かってたはずでも、元の世界もこの世界も優しい人には無情で無慈悲だ。
そして十数分歩いて、ようやく目的の孤児院に到着した。
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