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はじめまして見知った異世界!
10.ちょっとした冒険?
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支度を全て終わらせて三人は外に出た。結構早起きして出発の準備をしたから、日が昇って間もないくらいの時間だ。
軽食や元々着ていた制服を入れたリュックを背負って、みつ兄と手を繋いでガルさんの後をついて行った。背の高いガルさんとは歩幅が違うから俺とみつ兄は少し急ぎ足だ。
そして予想通りというか、みつ兄は早い段階でバテ始めた。……知ってた。みつ兄はスポーツ経験が無いし、体育の成績も良いとは言えない。なんなら体育のある日はちょいちょい怪我をして帰ってくる。
そんなみつ兄が一日中、しかも早歩きで森を歩くなんて無理に決まってる。
「が、ガルさん……、ごめんなさい、速いです………!」
「あー、そんな気はした。ペース落としてもいいが、その代わり野宿することになるぞ」
「野宿………?」
野宿と聞いて青ざめるみつ兄。気持ちは分からないでもないけど、このペースだと到着前に倒れそうだ。外で寝ることになってもペースを落とした方が良さそうだ。
「みつ兄、そうしよう?ガルさんにまた迷惑かけることになるかもだけど、ここで倒れるよりは良いだろ?」
「そう、だね…」
「決まりだな。じゃあ予定少し変えるぞ」
それからはペースを若干落として、こまめに休憩を取るようにした。みつ兄は相変わらずヘトヘトだけど、確実に進んでいる。
日が沈み始めた頃、野宿する場所を決めて、ガルさんに言われて枝を拾った。みつ兄は夕飯の準備と水汲み、ガルさんは簡易的なテントの組み立てをそれぞれしている。
ガルさんはこうなることを予測して、野宿するための道具を色々と持って来たらしい。さすがすぎる。
この辺りは野営をする人も少なく無いらしく、落ちてる枝は少ないだろうと枝を切る為にナイフを受け取って枝拾いに向かった。
順調に細くて乾燥した枝を回収していると、どこかからガサガサと言う音が聞こえて来た。まぁ、この辺りはモンスター出るもんな。野営地はモンスターが近寄らない特別な木のそばだから問題ないけど、そこを離れれば遭遇してもおかしくない。
茂みから飛び出して来たモンスターは『ラヴェット』という、垂れた耳と羊の角を持った通称『デブウサギ』だ。モンスターの中では三番目くらいに弱い敵で、レベル…というか戦闘経験があれば簡単に倒せる。
俺でも倒せるかな?ナイフはあるし、レベルシステムが適用されるなら経験値はたくさん欲しい。
とりあえず、枝を切る為に借りたナイフでラヴェット三体と戦ってみた。
「いてっ!」
攻撃パターンが突進だけのモンスターとはいえ、角で思いっきりぶつかってこられるのは痛い!
それでもとりあえず倒せた。ゲーム換算だとたしか…ラヴェット三体でレベルが一から二に上がるくらいの経験値のはず。そんな事を思い出していると、空耳か幻聴か『ピコピコーン』とレベルアップの音が聞こえた気がした。……もしかして、レベリングができる?
そう思ったら凄く楽しくなって来たけど、今はレベル上げをしてる場合じゃない。
狩ったラヴェットを持って行こうと近寄ると、茂みからまた音がした。が、そこに居たのは緑のスライム。……え、これはどっち?夕焼けのせいで正確な色が分からない。
分からずにおろおろしていると、スライムは俺に飛びついて来た。
「ぅわっ!」
思わず身構えたが、スライムは傷だけ食べてどこかに行ってしまった。どうやら普通の回復スライムだったようだ。
拾った枝と三匹のラヴェットを持ってテントに戻った。ラヴェットはゲーム内でも『冒険者のご馳走』として乱獲される事が多い。回復料理としても定番だから、これを焼いて食べれば回復できるかも。
「ただいまー!」
「こう君!遅いから何かあったんじゃないかって心配したよ!」
本当に心配させていたんだろう。みつ兄は俺を見るなり抱きついて来た。あんまり長時間離れるべきじゃ無かったな。
抱き付かれた拍子に持ってた物を全て落としてしまった。
「ん?おい弟の方、その転がってるのはデブウサギじゃねぇか」
「あぁ、たまたまラヴェットに遭遇したから狩ってみたんだ。これ、夕飯に出来る?」
「獣を捌くくらい出来るが……串焼きでいいか?」
「ぃやったー!」
デブウサギの串焼き!かみつぐの定番だ!
ガルさんに教わってラヴェットを捌いた。みつ兄も手伝ってくれたおかげですぐに切り終わり、その間にガルさんも火を起こしてくれていた。
大きめに切ったラヴェットの肉を串に等間隔で刺し、焚き火のそばに串を刺す。これで待てばこんがり焼けてデブウサギの串焼きになる。楽しみだなぁ~~!
三人で焚き火を囲んで夕飯を食べた。デブウサギの串焼きと、ガルさんが持って来たインスタントのリゾット。
もち米のようなリゾットはお湯を注ぐだけでシンプルながら美味しい。野宿だから余計そう感じるのだろうか。けど、やっぱりデブウサギの串焼きは絶品だ。口の中で蕩けるほど柔らかく、ボリューミーなのに飲むように食べられる。
「んま~~♡これ、食べてみたかったんだよなぁ~♡」
「ふふ、こう君幸せそうだね。どれ……んっ!本当に美味しい……!」
あっという間に三匹分平らげて、俺とみつ兄はテントに入った。ちょっと食べ過ぎたかな。腹いっぱいで凄く眠くなって来た……。ガルさんが見張りをしてくれるらしいし、俺もさすがに限界だからみつ兄の隣で眠りについた。
軽食や元々着ていた制服を入れたリュックを背負って、みつ兄と手を繋いでガルさんの後をついて行った。背の高いガルさんとは歩幅が違うから俺とみつ兄は少し急ぎ足だ。
そして予想通りというか、みつ兄は早い段階でバテ始めた。……知ってた。みつ兄はスポーツ経験が無いし、体育の成績も良いとは言えない。なんなら体育のある日はちょいちょい怪我をして帰ってくる。
そんなみつ兄が一日中、しかも早歩きで森を歩くなんて無理に決まってる。
「が、ガルさん……、ごめんなさい、速いです………!」
「あー、そんな気はした。ペース落としてもいいが、その代わり野宿することになるぞ」
「野宿………?」
野宿と聞いて青ざめるみつ兄。気持ちは分からないでもないけど、このペースだと到着前に倒れそうだ。外で寝ることになってもペースを落とした方が良さそうだ。
「みつ兄、そうしよう?ガルさんにまた迷惑かけることになるかもだけど、ここで倒れるよりは良いだろ?」
「そう、だね…」
「決まりだな。じゃあ予定少し変えるぞ」
それからはペースを若干落として、こまめに休憩を取るようにした。みつ兄は相変わらずヘトヘトだけど、確実に進んでいる。
日が沈み始めた頃、野宿する場所を決めて、ガルさんに言われて枝を拾った。みつ兄は夕飯の準備と水汲み、ガルさんは簡易的なテントの組み立てをそれぞれしている。
ガルさんはこうなることを予測して、野宿するための道具を色々と持って来たらしい。さすがすぎる。
この辺りは野営をする人も少なく無いらしく、落ちてる枝は少ないだろうと枝を切る為にナイフを受け取って枝拾いに向かった。
順調に細くて乾燥した枝を回収していると、どこかからガサガサと言う音が聞こえて来た。まぁ、この辺りはモンスター出るもんな。野営地はモンスターが近寄らない特別な木のそばだから問題ないけど、そこを離れれば遭遇してもおかしくない。
茂みから飛び出して来たモンスターは『ラヴェット』という、垂れた耳と羊の角を持った通称『デブウサギ』だ。モンスターの中では三番目くらいに弱い敵で、レベル…というか戦闘経験があれば簡単に倒せる。
俺でも倒せるかな?ナイフはあるし、レベルシステムが適用されるなら経験値はたくさん欲しい。
とりあえず、枝を切る為に借りたナイフでラヴェット三体と戦ってみた。
「いてっ!」
攻撃パターンが突進だけのモンスターとはいえ、角で思いっきりぶつかってこられるのは痛い!
それでもとりあえず倒せた。ゲーム換算だとたしか…ラヴェット三体でレベルが一から二に上がるくらいの経験値のはず。そんな事を思い出していると、空耳か幻聴か『ピコピコーン』とレベルアップの音が聞こえた気がした。……もしかして、レベリングができる?
そう思ったら凄く楽しくなって来たけど、今はレベル上げをしてる場合じゃない。
狩ったラヴェットを持って行こうと近寄ると、茂みからまた音がした。が、そこに居たのは緑のスライム。……え、これはどっち?夕焼けのせいで正確な色が分からない。
分からずにおろおろしていると、スライムは俺に飛びついて来た。
「ぅわっ!」
思わず身構えたが、スライムは傷だけ食べてどこかに行ってしまった。どうやら普通の回復スライムだったようだ。
拾った枝と三匹のラヴェットを持ってテントに戻った。ラヴェットはゲーム内でも『冒険者のご馳走』として乱獲される事が多い。回復料理としても定番だから、これを焼いて食べれば回復できるかも。
「ただいまー!」
「こう君!遅いから何かあったんじゃないかって心配したよ!」
本当に心配させていたんだろう。みつ兄は俺を見るなり抱きついて来た。あんまり長時間離れるべきじゃ無かったな。
抱き付かれた拍子に持ってた物を全て落としてしまった。
「ん?おい弟の方、その転がってるのはデブウサギじゃねぇか」
「あぁ、たまたまラヴェットに遭遇したから狩ってみたんだ。これ、夕飯に出来る?」
「獣を捌くくらい出来るが……串焼きでいいか?」
「ぃやったー!」
デブウサギの串焼き!かみつぐの定番だ!
ガルさんに教わってラヴェットを捌いた。みつ兄も手伝ってくれたおかげですぐに切り終わり、その間にガルさんも火を起こしてくれていた。
大きめに切ったラヴェットの肉を串に等間隔で刺し、焚き火のそばに串を刺す。これで待てばこんがり焼けてデブウサギの串焼きになる。楽しみだなぁ~~!
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もち米のようなリゾットはお湯を注ぐだけでシンプルながら美味しい。野宿だから余計そう感じるのだろうか。けど、やっぱりデブウサギの串焼きは絶品だ。口の中で蕩けるほど柔らかく、ボリューミーなのに飲むように食べられる。
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