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はじめまして見知った異世界!
9.俺に出来ることってあるかな
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目が覚めると、またみつ兄が横で眠ってた。また俺たちがベッドを使わせてもらってる…。ガルさんは昨日も今日もソファーで寝てたのだろうか。
……っていうか、もしかしてベッドまで運んでもらった?昨日モフモフしてその後の記憶が無いけど……そのまま寝たような気が………。ご、ごめんなさい、ガルさん……。
みつ兄を起こさないようにそっとベッドから降りて、リビングに移った。でもガルさんの姿は見えない。あ、あれ?
キョロキョロしながら部屋をうろつくと、ソファーの裏に狼の姿で丸まって床で眠るガルさんを見つけた。
何これ…可愛いと申し訳ないが頭の中で戦ってる……。
ちょ、ちょっとだけモフっても………いやいやいや、やり過ぎは絶対怒られる。
「おい、何する気だ」
あ、起きてた…今起きた?狼の姿のまま警戒心剥き出しで睨まれた。別に何もしないのに…。
ガルさんは獣人の姿に戻ると朝食の準備を始めた。お世話になってるし、何か手伝おっかな。
「ガルさん、何か手伝えることある?」
「なら兄の方を起こして来い」
起こさないよう気をつけて来たのに、結局起こすことになった。
部屋に戻って、まだ眠ってるみつ兄を揺すって起こした。
「みつ兄ー!起きてー!」
「ぅう……」
「みつ兄ー!……みつ兄?」
よく見るとみつ兄は涙を流していた。嫌な夢でも見てるのだろうか。なら、余計に早く起こさないと!
「すぅっ……、み つ に い ー ! !」
「ゔっ、ゔぅ……?うるさ………」
「あ、起きた!おはようみつ兄!」
大声で起こされて機嫌が悪そうなみつ兄は、泣いてることに気付いて目元をすぐに拭った。それでも涙は止まらず、ずっと目を擦っている。
「みつ兄、大丈夫?」
「うん…家族の夢を見て………」
「……帰りたい?」
みつ兄は頷いた。そうだよな…。俺はゲームの世界に来てワクワクしてたけど、みつ兄からすれば全く知らない場所に突然来させられたようなものだ。しかも、来て早々に襲われてるし。この世界にいいイメージは無いだろう。
「こう君、どうしよう…。母さんもあき君もやと君もいないのに、僕達までいなくなったら父さんがひとりぼっちになっちゃう……」
「そうだな。なら帰る方法を探そう?時間が掛かっても、帰る方法を見つけよう?」
その為にも文字は習わないと。
異世界のことなんて他人に聞けない。このゲームには異世界なんてものが実在する描写は無い。NPCも異世界について何も言わないのであれば、ここでも御伽話のような存在なのかもしれないけど。それでも少しだけでもヒントがあれば状況は変わるかもしれない。
「みつ兄、支度しよう。早く情報を集めて、父さんのとこに帰ろう」
「うん………」
みつ兄は相当ショックなんだろう。俺が何とかしないと。今は俺しか頼れる人がいないんだから、俺がしっかりしないと。
みつ兄が泣き止んでからリビングに行くと、既に朝食のベーコンとレタスのサンドイッチとホットミルクが並べられていた。
「遅ぇしうるせぇぞ」
「「ごめんなさい…」」
そう言えばみつ兄起こす為に思いっきり叫んだっけ。他人ん家で何やってるんだ俺…。なんか、馬鹿ばっかしてるなー。
朝食を食べて、また俺が洗い物をした。さんざんお世話になったガルさんを手伝ったのって皿洗いくらいしか無い気がする。やっぱちゃんとお礼したいんだけどな……。
「ガルさん。俺に出来ることって他に無い?」
ガルさんが用意してくれたジャージみたいな動きやすい服に着替えながら聞いてみた。やっぱりされて嬉しい事は人それぞれだから、直接聞いた方がいいよな。
「無い。てめぇが気にすることも何も無い」
「でも…俺に出来ることなら何でもするから、ちゃんと礼がしたい」
「………あ゛?」
………ん?なんか、今、不機嫌になった?俺なんか不味いこと言ったかな?
内心焦っていると、ガルさんが身長の圧で詰め寄って来た。後退りしてたらすぐに壁にぶつかり、逃げることも出来なくなったところでガルさんは俺の顎を掴んで顔を上げさせられた。
お、怒ってる顔だ………。
「何でもするだぁ?てめぇ、自分が何言ってんのか分かってねぇだろ」
「え……?」
いや、何言ってるかは分かってるよ。……何か俺の知らない意味でもあるのか?
なんて考えてると、ガルさんは握り拳を大きく振りかぶって俺の顔を目掛けて振り下ろした。え、殴られる!?
条件反射で目を瞑って身構えたが、特に殴られるような感覚は無い。そっと目を開けると、目の前でガルさんの拳は止まっていた。
「いいか?何でもするなんて言えば殴られても文句言えねぇんだよ。いくら恩を感じようとも、てめぇの体と労力と精神を安売りすんじゃねぇ!」
怒られた。けど、その内容は温かい。
「……別に、ガルさんじゃ無きゃこんなこと言わないし。そりゃあ痛いのとかは嫌だけど、ガルさんはそんな事しないだろ?」
「人を疑うことを覚えろってんだ、このガキ」
「ガキって言うな!」
いちいち腹立つ言い方はしてくるけど、保護してくれたのがこの人で本当に良かった。ガルさんの口の悪さにムッとしながら支度を進めた。
あれ、結局お礼はどうしたらいいんだろう……
……っていうか、もしかしてベッドまで運んでもらった?昨日モフモフしてその後の記憶が無いけど……そのまま寝たような気が………。ご、ごめんなさい、ガルさん……。
みつ兄を起こさないようにそっとベッドから降りて、リビングに移った。でもガルさんの姿は見えない。あ、あれ?
キョロキョロしながら部屋をうろつくと、ソファーの裏に狼の姿で丸まって床で眠るガルさんを見つけた。
何これ…可愛いと申し訳ないが頭の中で戦ってる……。
ちょ、ちょっとだけモフっても………いやいやいや、やり過ぎは絶対怒られる。
「おい、何する気だ」
あ、起きてた…今起きた?狼の姿のまま警戒心剥き出しで睨まれた。別に何もしないのに…。
ガルさんは獣人の姿に戻ると朝食の準備を始めた。お世話になってるし、何か手伝おっかな。
「ガルさん、何か手伝えることある?」
「なら兄の方を起こして来い」
起こさないよう気をつけて来たのに、結局起こすことになった。
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「ぅう……」
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「あ、起きた!おはようみつ兄!」
大声で起こされて機嫌が悪そうなみつ兄は、泣いてることに気付いて目元をすぐに拭った。それでも涙は止まらず、ずっと目を擦っている。
「みつ兄、大丈夫?」
「うん…家族の夢を見て………」
「……帰りたい?」
みつ兄は頷いた。そうだよな…。俺はゲームの世界に来てワクワクしてたけど、みつ兄からすれば全く知らない場所に突然来させられたようなものだ。しかも、来て早々に襲われてるし。この世界にいいイメージは無いだろう。
「こう君、どうしよう…。母さんもあき君もやと君もいないのに、僕達までいなくなったら父さんがひとりぼっちになっちゃう……」
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その為にも文字は習わないと。
異世界のことなんて他人に聞けない。このゲームには異世界なんてものが実在する描写は無い。NPCも異世界について何も言わないのであれば、ここでも御伽話のような存在なのかもしれないけど。それでも少しだけでもヒントがあれば状況は変わるかもしれない。
「みつ兄、支度しよう。早く情報を集めて、父さんのとこに帰ろう」
「うん………」
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「「ごめんなさい…」」
そう言えばみつ兄起こす為に思いっきり叫んだっけ。他人ん家で何やってるんだ俺…。なんか、馬鹿ばっかしてるなー。
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「でも…俺に出来ることなら何でもするから、ちゃんと礼がしたい」
「………あ゛?」
………ん?なんか、今、不機嫌になった?俺なんか不味いこと言ったかな?
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お、怒ってる顔だ………。
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いや、何言ってるかは分かってるよ。……何か俺の知らない意味でもあるのか?
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「……別に、ガルさんじゃ無きゃこんなこと言わないし。そりゃあ痛いのとかは嫌だけど、ガルさんはそんな事しないだろ?」
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