【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

はじめまして見知った異世界！

3.どうしよう…やっちゃった……

　目が覚めるとそこは知らない場所だった。

　木造の建物にある簡素なソファで目を覚ました俺は、真っ先にみつ兄を探した。掛けられているタオルを退かすと、元々着てた服が汚れたからかボロボロで大きいけど綺麗な服に着替えさせられている事に気付いた。やっぱり子供には大人の服は大きいようで、ノーパンにシャツ一枚でワンピースみたいになっている。まぁ、汚れた服を着てるより、全裸よりはまだマシか。


　部屋を見渡すと、みつ兄がいない代わりに知らない男が椅子に座って微睡んでいた。ガタイのいい大柄な男。動きやすそうな簡素な服と無精髭のせいか危ない人に見える。が、近くに掛けられた鎧は間違い無く警備隊のものだ。ゲームで何度も見た。あのデザインは、主人公達が育った孤児院のある最初の町のものだ。

　あれ、そう言えばみつ兄はどこにいるんだろう。
　不安になって別の部屋に探しに行こうとすると、微睡んでいた男が俺が起きた事に気付いて声を掛けてきた。

「おぉ、目が覚めたか。体調はどうだ？」
「あ、えっと、大丈夫です…。助けてくれてありがとうございます。ところで、一緒にいた兄はどこにいるんですか？」
「なんだ、あの美人と兄弟だったのか」

　美人…。やっぱり異世界でもみつ兄は美人なんだ。なんだろう、誇らしいというか自分のことみたいに嬉しいと言うか…。

「お前の兄なら別の部屋で休んでるさ。ところで…」

　大柄な男はゆっくりと椅子から立ち上がり俺の側に来た。その身長とガタイに圧倒された少し後退りすると、「逃がさない」と言うように両肩を強く掴まれた。

「俺たちも『休憩』しようぜ？」

　それは含みのある言い方で、本能が逃げろと訴えかけてきた。その本能に従いすぐにその場から離れて、近くのドアを開ける。

　しかし、その先で見た光景は受け入れられないものだった。

　俺が今着てるのと同じようなシャツ一枚着て、それすらもはだけている。男三人に囲まれて体を撫で回され、口と尻を汚いもので埋められた兄の姿。殴られたのか頬は赤く腫れ、酷く怯えて涙を流しながら男たちに従っている。

「おい、逃げなくたっていいだろ？お前の兄もお楽しみ中なんだから邪魔はヤボってもんだ」

　背後から腕を回され逃げられないようにガッチリと捕まった。
　俺は一歩も動けないどころか、襲われる兄から目が離せなくなる。少しずつ頭に血が上り、それからの俺は正気では無かった。

「ぐあぁっ！」

　気付けば俺は背後の男の剣を奪いそのまま刺していた。腹部を貫き男が怯んだところで心臓を刺し確実に息の根を止める。
　そこで一度は我に帰り、目の前に転がる死体に酷い吐き気を催す。が、兄の方を見れば戻った正気もすぐに無くなり、俺はただひたすらに剣を振り回した。

「みつ兄から…離れろっ！」

　そのまま丸腰の男達を切り捨て、気付けば俺もみつ兄も血で真っ赤に染まっていた。鉄みたいな匂いと赤黒い液体。我に帰るなり嫌悪感と恐怖ばかり押し寄せ、俺はあまりの出来事に剣を落とし泣き出した。

「ぅ…うわあぁあぁぁ……！」

　みつ兄は泣きじゃくる俺にすぐに駆け寄って抱きしめてくれた。背中を優しく撫で、「大丈夫、大丈夫だよ」と声を掛けてくれた。

「こう君、兄さんを助けてくれてありがとう。こう君は何も悪く無いからね」

　そのまま俺は、ストレスと疲れで眠りに落ちた。