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はじめまして見知った異世界!
1.都市伝説じゃ!?
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「ただいまー」
誰もいない見慣れない部屋に一言だけ放ち、真っ先にタブレット端末に電源を入れた。
起動している間にスクール鞄を定位置に下ろして、学ランのボタンを外し出すと同時に聞こえた『ポコン♪』という音。もしやと思い外しかけのボタンを忘れてタブレット端末を確認した。
「お!新しい動画が投稿されてる……ってえぇ!?『完結編』ってこれ終わっちゃうんだ……」
世界で最も有名な動画アプリを開き、通知欄からひとつの動画に飛んだ。
その動画のタイトルは『話題ゲーム《重なる世界ー神の意思を継ぐ子達ー》実況part.21(完結編)』だ。ここ数年で急激に人気になった《重なる世界シリーズ》の一つ(通称かみつぐ)の実況動画。
シリーズと言っても内容や世界線はバラバラで、声優含めた開発メンバーが全員同じということでシリーズとしているらしい。
そしてこのシリーズにはとある都市伝説がある。それは………
「ただいま。あれ、こう君また動画見てるの?」
「あ、おかえりみつ兄!」
「まったく…ダメとは言わないけど着替えてからにしなさい。そんなだらしの無い」
実況動画を見ていると、おっとりとした喋り方の兄、光流が帰ってきた。気が付けば外は既に真っ暗だ。まだ18時とは言え、冬近くはすぐに日が落ちてしまう。
急いでパジャマ代わりのジャージに着替えて、動画を再生した。
「こう君、宿題は?」
「学校で終わらせた!あ、そうそう、父さん遅くなりそうだから先に夕飯食っててだって」
「分かったよ」
着替えを済ませたみつ兄は慣れない手つきで夕飯の準備をした。まだ物の位置を把握できていないようで、ちょくちょく俺に場所を聞いたりしている。それも仕方ないだろう。ここに引っ越してからまだ1ヶ月と経っていないのだから。
ちょうど良く動画に区切りがつき、みつ兄の手伝いをしようとキッチンに向かった。カウンターキッチンのカウンターの向こうではみつ兄がスープの味見をしている。
料理を始めたばかりで不慣れな感じはするけど、その姿は何というか…いい、お嫁さんにしか見えない。父親似の垂れ目とサラサラの髪、母親譲りの綺麗な黒い髪の毛。高3の兄に『お嫁さん』と言うのもどうかと思うが、どうしたってそうにしか見えない。
ちなみに俺はみつ兄とは正反対の見た目だ。父親譲りの茶髪に、母親譲りの癖っ毛と吊り目。正直なところ、兄弟だって言っても「そうっぽい」とはならない。
「手伝うよ!」
「ありがとう。それじゃあご飯をよそってくれる?」
「おう!みつ兄ご飯の量どのくら……」
「っ!」
小さくパリンという音が聞こえた。
音のする方を見ると、割れた味見皿の破片が床に散らばっていた。みつ兄は申し訳なさそうに破片を片付け始めたが、その破片も落として割っていた。
鈍臭さは今に始まったことではないけど、それにしたって……。なんて苦笑いしていると、みつ兄の左の手のひらに赤い筋が見えた。
「みつ兄!手、切ってる!」
破片を回収しているときに切れたのだろう。すぐに傷を確認したら、そこまで深く切れてる訳では無さそうで安心した。
すぐに絆創膏を取りに行こうとした。
「大丈夫だよ。こんな傷じゃ死なないから」
絆創膏を取りに行こうとしたが、みつ兄の一言で俺はその場から離れることをやめた。俺は無意識に大きくて細いみつ兄の手をとり、傷を舐めた。
「いたっ…。こう君?傷、沁みて痛い……」
「そんな『大丈夫』聞きたく無いよ。……って、ごめん!絆創膏持ってくるから傷口洗ってて!」
玄関の靴棚の上にある救急箱から絆創膏を持ってくる為、俺は部屋を後にした。玄関の電気をつけて靴棚まで行くと、力が抜けて座り込んでしまった。
「やらかしたぁ………」
大きく深呼吸してから救急箱に手を伸ばした。箱の底の方から大きめの絆創膏を取り出そうとしたが、どうにも見当たらない。そういえば俺が最後の一枚を使ったような……。なんて思い出していると、鍵の音が近くから聞こえた。
「父さん!おかえり、早く帰ってこれたんだね」
髪の毛をキチンと整えて眼鏡をかけた真面目そうな父さん。元々は体質的に色素が薄くて茶髪だったけど、今は真っ黒に染めてある。仕事終わりでもスーツを着崩す事はなく、いかにも堅物そうな雰囲気がある。
「光成か、ただいま。担当が急遽変わったものがあって……ってどうした?怪我でもしたか?」
「あぁ、みつ兄がな」
「っ!」
一瞬で表情が変わった。疲れ切った顔が焦りに変わる。それも無理は無いだろう。俺や父さんがみつ兄の怪我に異常に反応するのは、つい最近みつ兄が自殺を計ったからだ。
前住んでいた家で火事が起きて、みつ兄の双子の兄が行方不明になっている。その前にもみつ兄の友達が事故で亡くなって、さらにその前には飛行機事故で母さんと上の兄が……。
大切な人を何人も失った絶望から、みつ兄はカッターで手首を何度も切りつけた。その傷は今もまだ完全には塞がっていない。抜糸はしたけど包帯は巻いたままで、濡れるとまだ痛むらしい。
「みつ兄が皿割っちゃって、その破片で手のひらを切っただけ」
「そうか…。そういえばテレビの前に買っておいた大きめの絆創膏を置いたが使わないのか?」
「え、そこにあったんだ!」
そう言えば箱がなんかあったような……。リビングに戻ってみると、確かにテレビ台の上に未開封の大きめ絆創膏が置いてあった。急いで取り出し、ティッシュで血を止めてたみつ兄の傷に綺麗に貼った。
「ありがとう、こう君」
「全く、ホントみつ兄は鈍臭いなぁ。刃物とか破片とか気を付けないとって言わないと分からないのか?」
「はい、気をつけます」
みつ兄はふわりと笑った。やっぱり笑った顔が一番好きだ。それでも鈍臭くて心配になるのは変わらないけど。また何もないとこで躓いてた。
残りの作業は俺が終わらせて、父さんが着替えてる間にみつ兄と食事をテーブルに並べた。メニューはトロッとした卵スープとチャーハンと餃子。ちなみに昨日は麻婆豆腐で、その前はラーメンだった。みつ兄、なんで中華ばっかなんだ……。
夕飯を食べ終わって、片付けも風呂も終わらせた。
俺とみつ兄の部屋に戻って、自分の布団でまた動画を見始めた。長尺動画で、五時間もあるからなかなか見終わらない。でも、面白いからついつい見ちゃう。
気付けばいつの間にか日付が変わりそうになっていた。動画の尺が長いから間にくる広告も多い。それに、気になったところは繰り返し見てるし、五時間で見終わるわけが無い。
「こう君、もう寝たほうがいいんじゃないかな」
「ゔっ…もうちょっとだから、もうちょっとで見終わるから……」
「ならせめてイヤホンくらいして欲しいな。これじゃあ兄さん寝れないよ」
それもそっか。と、イヤホンをして動画を再生した。
ちょうど日付が変わった頃、ようやく動画を見終わった。
色んな考察を頭の中でぐるぐると考える。《かみつぐ》は四人の少年少女が世界を救うゲームだ。プレイヤーはその四人から一人操作するキャラを選び、冒険する。メインキャラクターはみんな10歳前後で、出会う大人たちに子供ならではの感性で手助けをしていく。
敵もなかなかにいいキャラで、光堕ちキャラもいれば悲しい結末を迎えるキャラもいる。正直言って倒すのに躊躇してしまう敵ばかりだ。
でも、まさかメインキャラクター達が最後の最後にみんなバラバラになるのは悲しすぎる。それぞれ目的ができてしまえば仕方がないけど、孤児院で兄弟のように過ごした人達との別れは辛いだろう。
……俺も、兄を失ったばっかりだから特に共感してしまう。みつ兄の双子の兄の、やと兄。みつ兄とは系統の違う美人な兄で、凄く家族思いな兄だ。ちょっと喧嘩っ早いとこもあるけど、それも家族を守るためだったりした。
もう一人の年が離れた兄、あき兄は俺がまだ5歳の時に飛行機事故で母さんと2人行方不明になった。正直言えば顔も覚えていない。10年も見つかってなくて、もう死んだことになってる。けど、やと兄に瓜二つらしい。不思議と写真は一枚も残っていなかった。
なんて感傷に浸ってしまった。結局俺も苦し紛れに娯楽を探してるだけなのかもしれない。でも、意味が無いわけじゃ無かった。
みつ兄にこのゲームをプレイさせてみようかな。悲しいストーリーも多いけど、面白いシーンも心強くなれるようなシーンもたくさんある。よし、そうしよう!明日にでもお小遣いでソフトを買いに行こうっと。学校帰りにゲーム屋にこっそり寄って。
翌日の夜
「みつ兄みつ兄!」
「そんなにはしゃいでどうしたの?」
「ゲームしよ!」
俺は着替えも忘れて帰って来たばかりの兄にゲーム機を押し付けた。当たり前に驚き怒るみつ兄。部屋に戻って着替えながらゲームを起動した。
「ん、あれ?」
突然フリーズした画面。ブレザーを丁寧にハンガーに掛けたみつ兄がひょこっと顔を近づけ、一度電源を落とそうとした。しかし電源ボタンを長押ししても電源は落ちない。それどころか、ゲーム機から不快なノイズが聞こえてきた。
「げっ、まさか壊れたぁ!?」
「こう君が使いすぎるから…」
「ち、違う!そんなに使ってない!……ってか、音大きくなってね?」
段々と勢いを増すノイズが頭に響く。段々と意識が遠くなり、途切れそうな意識の中で、何とかみつ兄の腕を掴んだ。
割れるように痛い頭痛で目を覚ますと、そこは森の中だった。自然の匂いと小川の音。鳥や虫の声。そして隣に倒れるみつ兄。
あ、これ夢か。
なんて考えても確かに頭はガンガンする。
訂正、この痛みは夢じゃ無い。
遅れて目を覚ましたみつ兄も、「これ夢?」と似たような反応をしていた。残念、これは夢じゃ無い。
……そう、夢じゃ無い………!
「あのさ、みつ兄……」
「何、こう君………」
「このゲームは都市伝説があるんだ。このゲームをプレイしているとごく稀に、ゲームの世界に飛ばされる。そんな都市伝説が………」
都市伝説なんてただの娯楽的な嘘だとばかり思っていた。けど、これは正しく都市伝説なんかじゃ無い、事実だった。
誰もいない見慣れない部屋に一言だけ放ち、真っ先にタブレット端末に電源を入れた。
起動している間にスクール鞄を定位置に下ろして、学ランのボタンを外し出すと同時に聞こえた『ポコン♪』という音。もしやと思い外しかけのボタンを忘れてタブレット端末を確認した。
「お!新しい動画が投稿されてる……ってえぇ!?『完結編』ってこれ終わっちゃうんだ……」
世界で最も有名な動画アプリを開き、通知欄からひとつの動画に飛んだ。
その動画のタイトルは『話題ゲーム《重なる世界ー神の意思を継ぐ子達ー》実況part.21(完結編)』だ。ここ数年で急激に人気になった《重なる世界シリーズ》の一つ(通称かみつぐ)の実況動画。
シリーズと言っても内容や世界線はバラバラで、声優含めた開発メンバーが全員同じということでシリーズとしているらしい。
そしてこのシリーズにはとある都市伝説がある。それは………
「ただいま。あれ、こう君また動画見てるの?」
「あ、おかえりみつ兄!」
「まったく…ダメとは言わないけど着替えてからにしなさい。そんなだらしの無い」
実況動画を見ていると、おっとりとした喋り方の兄、光流が帰ってきた。気が付けば外は既に真っ暗だ。まだ18時とは言え、冬近くはすぐに日が落ちてしまう。
急いでパジャマ代わりのジャージに着替えて、動画を再生した。
「こう君、宿題は?」
「学校で終わらせた!あ、そうそう、父さん遅くなりそうだから先に夕飯食っててだって」
「分かったよ」
着替えを済ませたみつ兄は慣れない手つきで夕飯の準備をした。まだ物の位置を把握できていないようで、ちょくちょく俺に場所を聞いたりしている。それも仕方ないだろう。ここに引っ越してからまだ1ヶ月と経っていないのだから。
ちょうど良く動画に区切りがつき、みつ兄の手伝いをしようとキッチンに向かった。カウンターキッチンのカウンターの向こうではみつ兄がスープの味見をしている。
料理を始めたばかりで不慣れな感じはするけど、その姿は何というか…いい、お嫁さんにしか見えない。父親似の垂れ目とサラサラの髪、母親譲りの綺麗な黒い髪の毛。高3の兄に『お嫁さん』と言うのもどうかと思うが、どうしたってそうにしか見えない。
ちなみに俺はみつ兄とは正反対の見た目だ。父親譲りの茶髪に、母親譲りの癖っ毛と吊り目。正直なところ、兄弟だって言っても「そうっぽい」とはならない。
「手伝うよ!」
「ありがとう。それじゃあご飯をよそってくれる?」
「おう!みつ兄ご飯の量どのくら……」
「っ!」
小さくパリンという音が聞こえた。
音のする方を見ると、割れた味見皿の破片が床に散らばっていた。みつ兄は申し訳なさそうに破片を片付け始めたが、その破片も落として割っていた。
鈍臭さは今に始まったことではないけど、それにしたって……。なんて苦笑いしていると、みつ兄の左の手のひらに赤い筋が見えた。
「みつ兄!手、切ってる!」
破片を回収しているときに切れたのだろう。すぐに傷を確認したら、そこまで深く切れてる訳では無さそうで安心した。
すぐに絆創膏を取りに行こうとした。
「大丈夫だよ。こんな傷じゃ死なないから」
絆創膏を取りに行こうとしたが、みつ兄の一言で俺はその場から離れることをやめた。俺は無意識に大きくて細いみつ兄の手をとり、傷を舐めた。
「いたっ…。こう君?傷、沁みて痛い……」
「そんな『大丈夫』聞きたく無いよ。……って、ごめん!絆創膏持ってくるから傷口洗ってて!」
玄関の靴棚の上にある救急箱から絆創膏を持ってくる為、俺は部屋を後にした。玄関の電気をつけて靴棚まで行くと、力が抜けて座り込んでしまった。
「やらかしたぁ………」
大きく深呼吸してから救急箱に手を伸ばした。箱の底の方から大きめの絆創膏を取り出そうとしたが、どうにも見当たらない。そういえば俺が最後の一枚を使ったような……。なんて思い出していると、鍵の音が近くから聞こえた。
「父さん!おかえり、早く帰ってこれたんだね」
髪の毛をキチンと整えて眼鏡をかけた真面目そうな父さん。元々は体質的に色素が薄くて茶髪だったけど、今は真っ黒に染めてある。仕事終わりでもスーツを着崩す事はなく、いかにも堅物そうな雰囲気がある。
「光成か、ただいま。担当が急遽変わったものがあって……ってどうした?怪我でもしたか?」
「あぁ、みつ兄がな」
「っ!」
一瞬で表情が変わった。疲れ切った顔が焦りに変わる。それも無理は無いだろう。俺や父さんがみつ兄の怪我に異常に反応するのは、つい最近みつ兄が自殺を計ったからだ。
前住んでいた家で火事が起きて、みつ兄の双子の兄が行方不明になっている。その前にもみつ兄の友達が事故で亡くなって、さらにその前には飛行機事故で母さんと上の兄が……。
大切な人を何人も失った絶望から、みつ兄はカッターで手首を何度も切りつけた。その傷は今もまだ完全には塞がっていない。抜糸はしたけど包帯は巻いたままで、濡れるとまだ痛むらしい。
「みつ兄が皿割っちゃって、その破片で手のひらを切っただけ」
「そうか…。そういえばテレビの前に買っておいた大きめの絆創膏を置いたが使わないのか?」
「え、そこにあったんだ!」
そう言えば箱がなんかあったような……。リビングに戻ってみると、確かにテレビ台の上に未開封の大きめ絆創膏が置いてあった。急いで取り出し、ティッシュで血を止めてたみつ兄の傷に綺麗に貼った。
「ありがとう、こう君」
「全く、ホントみつ兄は鈍臭いなぁ。刃物とか破片とか気を付けないとって言わないと分からないのか?」
「はい、気をつけます」
みつ兄はふわりと笑った。やっぱり笑った顔が一番好きだ。それでも鈍臭くて心配になるのは変わらないけど。また何もないとこで躓いてた。
残りの作業は俺が終わらせて、父さんが着替えてる間にみつ兄と食事をテーブルに並べた。メニューはトロッとした卵スープとチャーハンと餃子。ちなみに昨日は麻婆豆腐で、その前はラーメンだった。みつ兄、なんで中華ばっかなんだ……。
夕飯を食べ終わって、片付けも風呂も終わらせた。
俺とみつ兄の部屋に戻って、自分の布団でまた動画を見始めた。長尺動画で、五時間もあるからなかなか見終わらない。でも、面白いからついつい見ちゃう。
気付けばいつの間にか日付が変わりそうになっていた。動画の尺が長いから間にくる広告も多い。それに、気になったところは繰り返し見てるし、五時間で見終わるわけが無い。
「こう君、もう寝たほうがいいんじゃないかな」
「ゔっ…もうちょっとだから、もうちょっとで見終わるから……」
「ならせめてイヤホンくらいして欲しいな。これじゃあ兄さん寝れないよ」
それもそっか。と、イヤホンをして動画を再生した。
ちょうど日付が変わった頃、ようやく動画を見終わった。
色んな考察を頭の中でぐるぐると考える。《かみつぐ》は四人の少年少女が世界を救うゲームだ。プレイヤーはその四人から一人操作するキャラを選び、冒険する。メインキャラクターはみんな10歳前後で、出会う大人たちに子供ならではの感性で手助けをしていく。
敵もなかなかにいいキャラで、光堕ちキャラもいれば悲しい結末を迎えるキャラもいる。正直言って倒すのに躊躇してしまう敵ばかりだ。
でも、まさかメインキャラクター達が最後の最後にみんなバラバラになるのは悲しすぎる。それぞれ目的ができてしまえば仕方がないけど、孤児院で兄弟のように過ごした人達との別れは辛いだろう。
……俺も、兄を失ったばっかりだから特に共感してしまう。みつ兄の双子の兄の、やと兄。みつ兄とは系統の違う美人な兄で、凄く家族思いな兄だ。ちょっと喧嘩っ早いとこもあるけど、それも家族を守るためだったりした。
もう一人の年が離れた兄、あき兄は俺がまだ5歳の時に飛行機事故で母さんと2人行方不明になった。正直言えば顔も覚えていない。10年も見つかってなくて、もう死んだことになってる。けど、やと兄に瓜二つらしい。不思議と写真は一枚も残っていなかった。
なんて感傷に浸ってしまった。結局俺も苦し紛れに娯楽を探してるだけなのかもしれない。でも、意味が無いわけじゃ無かった。
みつ兄にこのゲームをプレイさせてみようかな。悲しいストーリーも多いけど、面白いシーンも心強くなれるようなシーンもたくさんある。よし、そうしよう!明日にでもお小遣いでソフトを買いに行こうっと。学校帰りにゲーム屋にこっそり寄って。
翌日の夜
「みつ兄みつ兄!」
「そんなにはしゃいでどうしたの?」
「ゲームしよ!」
俺は着替えも忘れて帰って来たばかりの兄にゲーム機を押し付けた。当たり前に驚き怒るみつ兄。部屋に戻って着替えながらゲームを起動した。
「ん、あれ?」
突然フリーズした画面。ブレザーを丁寧にハンガーに掛けたみつ兄がひょこっと顔を近づけ、一度電源を落とそうとした。しかし電源ボタンを長押ししても電源は落ちない。それどころか、ゲーム機から不快なノイズが聞こえてきた。
「げっ、まさか壊れたぁ!?」
「こう君が使いすぎるから…」
「ち、違う!そんなに使ってない!……ってか、音大きくなってね?」
段々と勢いを増すノイズが頭に響く。段々と意識が遠くなり、途切れそうな意識の中で、何とかみつ兄の腕を掴んだ。
割れるように痛い頭痛で目を覚ますと、そこは森の中だった。自然の匂いと小川の音。鳥や虫の声。そして隣に倒れるみつ兄。
あ、これ夢か。
なんて考えても確かに頭はガンガンする。
訂正、この痛みは夢じゃ無い。
遅れて目を覚ましたみつ兄も、「これ夢?」と似たような反応をしていた。残念、これは夢じゃ無い。
……そう、夢じゃ無い………!
「あのさ、みつ兄……」
「何、こう君………」
「このゲームは都市伝説があるんだ。このゲームをプレイしているとごく稀に、ゲームの世界に飛ばされる。そんな都市伝説が………」
都市伝説なんてただの娯楽的な嘘だとばかり思っていた。けど、これは正しく都市伝説なんかじゃ無い、事実だった。
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