召喚され救世主じゃないと言われたが、復讐の旅でなぜか身体を狙われている

輝石玲

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いよいよ本格的な復讐へ

64.復讐のための新たな拠点

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 早朝、神鳥姿のアカツキの背に乗り四人はある浮遊島に向かった。空に浮かぶ島々はイメージより大規模なものが多い。だが、俺達が向かっている島はその中でも小さめの部類だ。


 小さめ……で、この規模か。森に囲まれた城が浮いてるだけでも大きいと思うが、城の規模がまた大きい。端から端まで徒歩では一日で歩ききれないだろう。

 それもそのはず。『森に囲まれた城が浮いてる』とは言ったが、その城はのだから。
 よく見て数えてみると、『森に囲まれた大きな城』が四つもある。そう、城と城の境目に森があるようなものだから、森だけでも規模が大きい。


 一つの城を囲むような配置の三つの城。俺達はその三つのうちの一つ、青い旗が掲げられた城に向かった。




 正門に到着し、アカツキの背から降りると城の規模をダイレクトに感じた。

「ここ、しばらくの間俺らの家な」
「………え?」

 えーっと…え?一見すると城みたいだけど、マンションとかシェアハウス的な賃貸で部屋を間借りするってことか?え、違う?この屋敷の全部を俺ら四人で借りるって?


 豪華な金属の門を開けて通り、数段の階段を上り重たい扉を開けた。
 西洋風の造りやインテリアで高級感が溢れている。二階建て屋上付き庭付きと言えば聞こえは良いが、やっぱり土地面積が一般人の住むそれとは格が違いすぎる……!
 しかもワンフロアの天井が高い。間違い無く5メートルは超えてる。入ってすぐ広間でしかもシャンデリアって……


 い、今すぐ洞窟に戻りたいかも………。

 いやだって、人間の国の城は…まぁ、アレだけど、獣人の国も悪魔の国も城に泊まったことはある。なんだったら悪魔の国の滞在期間はそこそこ長かったが……それらとは話が違う。
 他の城は『友人の家が高級ホテル』みたいなニュアンスで泊まってたけど、アカツキ明確に『家』って言ってたよな!?

「ヤト?どうしました?」
「おぉーい、ぼーってしてどうしたんだ?」

 グルーとヴィンスは俺を心配しているが、俺は王様じゃ無ければ貴族ですら無いからこの規模の『家』というのに驚いてると気付いていないのだろう。

「二人とも、平民の家ってこんな無駄に広く無いんだぞ……?」
「そうですね」
「知ってるぜ」

「こんな広さ……掃除とか大変だろ!?」

 一日中、毎日掃除したって終わりそうに無い広さだぞ!?広い家のデメリットのひとつだ!

 俺の発言に三人は声を押し殺して笑い始めた。え、なんで?

「っそ、掃除が、たいへ…!は、あはは…!」

 俺の言葉を復唱しては膝を叩いて何度も笑うアカツキ。

「そこじゃねぇだろぉが……!?」

 腹を抱えて理解できないとツッコミを入れ笑うヴィンス。

「クスクス、それは…盲点でしたね………」

 口元を押さえて静かに笑いながら返事をしたグルー。


 ………え、俺がおかしいのか?




 部屋割りを決めてから城…みたいな屋敷を探索することになった。ここがしばらくの拠点だ、やるべき事を円滑に進めるためにも日常の無駄な時間を減らす必要が出てくるかもしれないし出来ることは今のうちに済まそう。

 部屋は二階に並んでいる六部屋のうち角部屋を除いた四部屋を右からアカツキ、俺、グルー、ヴィンスの順番。両角の部屋は物置きになっているようだ。
 二階の左端には皮のソファーとテーブルが置かれたバルコニー、右端には書斎。寝室の正面には二つの扉と繋がった大きな図書館。
 一階は入り口正面に食堂への扉、左にはサロン、右にはキッチンがある。キッチンの奥にある鉄のドアを開けると地下に続く石の階段があり、地下へ入るとそこは食糧庫になっていた。食材は調達していないから今のところは干し肉とワイン、乾物くらいしか置かれていないようだ。



 探索を一通り終えた頃には既に夜だ。探索中にアカツキが夕飯を買ってきてくれたからそれを食堂でみんなで食べ、すぐに部屋に戻った。

 それにしたって一人の部屋が無駄に広いんだよなぁ。ヴィンスはようやくグルーと別室になれたと喜んでたけど、この広さでもすぐに慣れるのはやっぱり王様なんだなって思う。


 今度は部屋の中を探索することにした。
 当たり前のように天蓋付きのベッドやら大きなカーペットやら豪華なものが置いてある。
 クローゼットや棚に必要なものを入れて置いたとアカツキは言っていたけど、タオルや寝具が入った棚はあってもクローゼットは見当たらないな。

 あと部屋にあるものといえばテーブルとカウチソファー、水差しやカップが入った棚。それから出入り口とは別の二つのドアくらいか。



 ベッドの置いてある方の壁に二つ並ぶドア。

 ベッド側のドアの向こうはユニットバスになっている。
 入ってすぐに水洗トイレ、カーテンで区切られた右側に猫足バスタブとシャワー、洗面台が設置されている。
 洗面台の前には着替えを置く鉄網の棚や壁掛けのハンガーラックも置かれていて、バスタブの端には石鹸やスポンジが設置され、独立した脱衣所が無くても思ったより不便しなさそうだ。

 そして窓側にあるもう一つのドアも開けてみた。ここがクローゼットか、思ってた数倍デカいな。
 たぶん『ウォークイン』とかいう大規模なクローゼットなんだろうけど、あまりにも広すぎて少し理解が追いつかない。いやだって…向こうの世界にいた時の俺の部屋くらいはあるよな?



 とりあえずクローゼットは見つけたし、アカツキの言っていた必要なものを見てみよう。
 まぁ、クローゼットだし着替えだよな。探さなくても服は多く無いからすぐにどれか分かる。この広さのクローゼットだけど中はガランとしてスペースを持て余している。
 ……この広さを使う人がいるって事なのか?


 ハンガーに掛かっているいくつかの服を見てみた。服一着一着に小さなカードが掛けられていて、用途が書かれている。
 寝巻き用の浴衣と羽織り、今着ている服に似た普段着、丈夫で伸縮性のある運動服がそれぞれ2セット。それからなんか豪華な貴族っぽい服(語彙力)、ファンタジーなヒラヒラした服(語彙力)、あと見覚えのある袴。

 なんて言うか…全体的に黒いな。黒以外のものって言ったら白衣とかシャツ、小物くらいだ。謎に落ち着くなぁ……。
 使い道の分からない服が多い気がするけど、それらは持ってきた張本人に言われるまでそのままにしておくか。




 ここのタイプのバスタブのお湯を張る方法を知らないからシャワーだけ浴びて浴衣に着替えた。石鹸、甘いような爽やかなような良い匂いがしたな。良い気分だ。
 冷たい水を飲んでフカフカのベッドに腰掛け、部屋をもう一度見渡した。


 ……ここが、復讐のための拠点か。綺麗で豪華な部屋なのにどこか『復讐』という言葉が似合う。それはきっと、物の価値が分からない俺には『無価値』で、広い部屋で『孤独』を感じてるから…なのかもな。
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