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復讐の旅、開始!
6.この復讐は救世主のために
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拭いてもらった髪をブラッシングして整えてる間に、グルーはビスケットと何かのジュースを用意した。用意周到にも程がある。ジュースは赤ワインみたいな色で、匂いはベリー系だ。一口飲んでみると、それがブルーベリーのジュースだと判明した。
「さて、どこから説明しましょうか」
「なぁグルー、今までの救世主ってどんな感じだったんだ?」
ふわっとした聞き方しか出来ないけど他に聞き方も無い。歴代の救世主がどんな人だったのか、どんな扱いを受けていたのか、不思議な力とはなんなのか。聞きたいことはたくさんある。
「残念ながら私が知っている救世主は先代のみです。彼女は十年前に召喚され、雨を降らす能力を使って凶作を解消しました」
「十年前?最近のことじゃないか。俺が呼ばれたってことは、彼女はもう…」
「病で二年前に亡くなっています。…これが表向きの話です」
……そんなことだろうと思った。救世主には裏がある。というよりあの王には裏があると言うべきか。十年の間隔で、先代の死後たった二年で新しく召喚出来るのなら何人も呼び出せるんじゃないのか?…生贄さえあれば。
あの王には生贄を用意する手段が無いはずが無い。異世界人が同時に二人存在できない理由でもあるのか?
「表がそれなら裏は?」
「彼女が雨を降らせるのは彼女が涙を流した時。王はありとあらゆる拷問で彼女を苦しめました。それでも涙を滅多に流さなかった彼女は、違法な薬を点滴され、精神崩壊を起こして泣き続けることになったのです。そして二年前に…彼女は自害しました」
虫唾が走るな、まったく…。
「彼らは彼女の死を悲しみ弔うことも無く次の召喚の準備を始めました。生贄に選ばれたのは、あの王の血を引く娘…私生児でした。正確に言えば、生贄となるべく作られた娘です。あの暴君にとって救世主は消耗品の道具でしか無かったのです」
なるほどな。最初から壊れることを前提で捕らえていたのか。余計にグルーに助け出されて良かったと強く感じた。俺に『救世主』としての力があるのかは分からない。条件と一致してないと力が無い、なんてオチも考えられるから。自分の能力の確認方法とかもあれば知りたい。
それにしてもグルーの表情が暗い。嫌なことでも思い出してるように見えるが…どうやら当たりのようだ。グルーは先代を見たことがあったらしい。
「彼女は精神崩壊後にずっと『元の世界に帰して』『家族に会いたい』と泣いていました。貴方も、きっとそう思っているのでしょう」
「まぁな。置いてく側も正直辛い」
「せめて彼女が死後に安らかに休めていれば良いのですが。ユキ・ツクモ様……」
「え…今、なんて言った……?」
先代の名前に聞き覚えが、聞き馴染みがあった。その名前を忘れたことはない。俺の予想が正しければ先代は『九十九 由希』って名前だと思う。そしてそれが当たっていたとしたら……。
「グルー、その先代は髪が長くて吊り目で、口元にホクロがある人じゃ無かったか?」
「えぇ、お知り合いですか?」
「母…さん、だ……」
俺の名前は『九十九 夜人』だ。十年前、飛行機事故で行方が分からなくなって、もう死んだことになっていたが…この世界で苦痛を味わって生きていたなんて。それも、あの気丈な人が泣いて自殺だなんて…
「グルー、どうも復讐の理由が増えたみたいだ…」
「…分かりました。私もどこまでもお手伝いしましょう」
母さん…たった三年しか一緒に居れなかったけど大切な家族だった。孤児だった俺と兄を引き取って、実子と同じように育ててくれた男勝りな母。その仇が取れるのなら俺は喜んであの暴君の首を狙いに行く。今更、この手が血に染まることに抵抗は無い。絶対に殺してやる……!
「ヤト、一度落ち着いてください。その怒りは復讐の時まで残しておくのです」
「……分かった。今はその復讐のために力を磨くことに専念しよう」
「そうですね。力の知り方や使い方は私がこれから教えていきますから」
「ありがとう、頼りにしてるぜ!」
そうだ、今は冷静でいよう。そしてこの怒りはいつか必ずあの王にぶつけてやる。
●●●
冷たいジュースを飲んで頭を冷やし、心を落ち着かせた。俺が頭を冷やしてる間にグルーは変な渦を作りそこから本やペンを取り出した。えっ、バッグ要らずなのかよこの世界!
「それではこの世界の基礎と文字を教えます」
本はどうやら教材とノートのようだ。羽ペンとインク瓶をセットして、俺に教える準備を整えたグルー。いくら復讐の協力者だからって手厚すぎないか?そりゃあ協力者が無能なのは嫌だろうが、後から俺に使ったものを請求してもいい立場なのにそうする気配も無い。
「なぁ、俺はグルーに何か与えてやれる訳じゃないのに、どうして俺にここまで与えるんだ?」
「…それは、貴方から欲しいものがあるからです。今はまだ無理だと思いますが…それでもいつか貰いますから」
えっ…ま、まさか俺の命とか!?俺にあるのなんてそれくらいだし、一気に信用していいか疑わしくなったぞ…!?
「さて、どこから説明しましょうか」
「なぁグルー、今までの救世主ってどんな感じだったんだ?」
ふわっとした聞き方しか出来ないけど他に聞き方も無い。歴代の救世主がどんな人だったのか、どんな扱いを受けていたのか、不思議な力とはなんなのか。聞きたいことはたくさんある。
「残念ながら私が知っている救世主は先代のみです。彼女は十年前に召喚され、雨を降らす能力を使って凶作を解消しました」
「十年前?最近のことじゃないか。俺が呼ばれたってことは、彼女はもう…」
「病で二年前に亡くなっています。…これが表向きの話です」
……そんなことだろうと思った。救世主には裏がある。というよりあの王には裏があると言うべきか。十年の間隔で、先代の死後たった二年で新しく召喚出来るのなら何人も呼び出せるんじゃないのか?…生贄さえあれば。
あの王には生贄を用意する手段が無いはずが無い。異世界人が同時に二人存在できない理由でもあるのか?
「表がそれなら裏は?」
「彼女が雨を降らせるのは彼女が涙を流した時。王はありとあらゆる拷問で彼女を苦しめました。それでも涙を滅多に流さなかった彼女は、違法な薬を点滴され、精神崩壊を起こして泣き続けることになったのです。そして二年前に…彼女は自害しました」
虫唾が走るな、まったく…。
「彼らは彼女の死を悲しみ弔うことも無く次の召喚の準備を始めました。生贄に選ばれたのは、あの王の血を引く娘…私生児でした。正確に言えば、生贄となるべく作られた娘です。あの暴君にとって救世主は消耗品の道具でしか無かったのです」
なるほどな。最初から壊れることを前提で捕らえていたのか。余計にグルーに助け出されて良かったと強く感じた。俺に『救世主』としての力があるのかは分からない。条件と一致してないと力が無い、なんてオチも考えられるから。自分の能力の確認方法とかもあれば知りたい。
それにしてもグルーの表情が暗い。嫌なことでも思い出してるように見えるが…どうやら当たりのようだ。グルーは先代を見たことがあったらしい。
「彼女は精神崩壊後にずっと『元の世界に帰して』『家族に会いたい』と泣いていました。貴方も、きっとそう思っているのでしょう」
「まぁな。置いてく側も正直辛い」
「せめて彼女が死後に安らかに休めていれば良いのですが。ユキ・ツクモ様……」
「え…今、なんて言った……?」
先代の名前に聞き覚えが、聞き馴染みがあった。その名前を忘れたことはない。俺の予想が正しければ先代は『九十九 由希』って名前だと思う。そしてそれが当たっていたとしたら……。
「グルー、その先代は髪が長くて吊り目で、口元にホクロがある人じゃ無かったか?」
「えぇ、お知り合いですか?」
「母…さん、だ……」
俺の名前は『九十九 夜人』だ。十年前、飛行機事故で行方が分からなくなって、もう死んだことになっていたが…この世界で苦痛を味わって生きていたなんて。それも、あの気丈な人が泣いて自殺だなんて…
「グルー、どうも復讐の理由が増えたみたいだ…」
「…分かりました。私もどこまでもお手伝いしましょう」
母さん…たった三年しか一緒に居れなかったけど大切な家族だった。孤児だった俺と兄を引き取って、実子と同じように育ててくれた男勝りな母。その仇が取れるのなら俺は喜んであの暴君の首を狙いに行く。今更、この手が血に染まることに抵抗は無い。絶対に殺してやる……!
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「……分かった。今はその復讐のために力を磨くことに専念しよう」
「そうですね。力の知り方や使い方は私がこれから教えていきますから」
「ありがとう、頼りにしてるぜ!」
そうだ、今は冷静でいよう。そしてこの怒りはいつか必ずあの王にぶつけてやる。
●●●
冷たいジュースを飲んで頭を冷やし、心を落ち着かせた。俺が頭を冷やしてる間にグルーは変な渦を作りそこから本やペンを取り出した。えっ、バッグ要らずなのかよこの世界!
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「…それは、貴方から欲しいものがあるからです。今はまだ無理だと思いますが…それでもいつか貰いますから」
えっ…ま、まさか俺の命とか!?俺にあるのなんてそれくらいだし、一気に信用していいか疑わしくなったぞ…!?
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