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終わりへ
59.異邦人
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ーーーーーミカーーーーー
天魔大戦の絵画とオレの記憶から大戦当時の記録を見た。
正直、昔のことを鮮明に思い出せば、またオレの心がどうにかなるんじゃないかと心配していた。でも、オレの知らないこと、気づけなかったことを知るとどこか楽になる。なんだ、もっと早くに向き合っていれば良かったんだ。
魔法が解け、元の展示室に戻ってきた。それぞれ想うことがあるのか神妙な面持ちだ。
そんな中で、イオリは泣いていた。共感のせいだろうか。もっと配慮するべきだったか?イオリがオレの過去を知りたがってるのは知ってたけど、こんなの見たらやっぱ後悔するよな。
「イオリ、悪い。嫌なものを見せたな。」
何も言わず首を横に振るイオリ。
頬を撫でて止まらない涙を拭うが、すぐにまた涙で頬が濡れる。
やっべ、罪悪感でちょっと慌てる。やっぱ人間には刺激が強すぎたか?
なんて思ってると、じわじわとイオリの頬が熱くなり始めた。
………何かがおかしい。イオリもそれに気付いたのだろう。呼吸が荒れ体温が上がり、イオリは突然意識を残したまま倒れた。
「イオリ!」
倒れたイオリの熱をマイヤがすぐに奪ったが、水程度の温度ではなんの意味もなしていない。
なんとか体を支えているが、コートの上からも高すぎる熱が伝わる。これは人間の耐えれる体温じゃない……!
どういうわけかだんだんとイオリの姿が変わっていく。その様子はどこかオレの堕天と重なる。でも、悪魔になったとしてもこうはならないはずだ。
だってこの姿と気配はこの世界のものじゃない。
これは……悪魔に変える側、異邦人の気配……………
………あれ、そういえば異邦人の名前って『サクラ』だったよな。その名前って、確かイオリの父親と同じ………
そういうことか。名前だけじゃ予想の範疇を超えない。でも、イオリのこの気配は揺るがぬ証拠だ。
イオリは、異邦人の血を引いている。
なんで気付かなかったんだ。いくらディークから力を貰ったとしても、この世界の遺伝子を持っていないイオリの姿までは変わらない。でも、人間を悪魔に変える力を持つ者の血が流れているなら話は別だ。オレも知らない、勇者の世界とは違う世界の技術なら……
しばらくして落ち着いた頃、イオリの姿は変わっていた。それはディークとも違う姿。
ディークから受け継いだ太い角と尾は細長く変わり、頬には黒光りする鱗が浮かぶ。手にも鱗、そして黒く尖った爪。よく見ると瞳孔も人間のものの形じゃなくなっている。
服も形が変わり、黒いロングコートは袖が消え、前後にスリットが入った。インナーの黒いTシャツも白いワイシャツのようになっている。
体だけじゃなく服まで変わるのはかなり特殊だ。この世界じゃ天使・大天使・神は固定の衣装があるけど……。それらはざっくり言うと体の一部だ。イオリのも同じなのだろうか。
…………そりゃあ召喚されるよな。こんな並外れた魔力、どこの世界でも魅力的だ。
そしてイオリもなんとなく察しているようだ。急に体が変わったにも関わらずやけに落ち着いている。
「イオリ、オレが分かるか?」
「あぁ。ただ少し混乱してる。さっきから情報が頭の中に流れ込んで来るんだ。」
またしばらく待ち、落ち着いたイオリは元の人間の姿に戻った。完全に力の使い方を理解したらしい。
ふらふらと立ち上がると、あからさまに苦い顔をするイオリ。
「……なんなんだ、これ。流石に最初から純粋な人間じゃ無かったのは…ショックだな。」
まあ、無理もないか。ずっと人間として生きてきたもんな。混乱しないわけがない。異邦人と人間のミックスだろうか。元の世界にいるままなら、ただの人間だったんだろうな。
でも……一体何者なんだ?その『サクラ』ってやつは…………
「悪い、落ち着いた。これはまた今度考えて、今は本題に戻ろう。」
「でもイオリ……!」
「俺は大丈夫。」
オレの心配なんてガン無視でイオリは話を進めようとしている。逞しいのか自暴自棄なのかよくわかんないな。でもまあ人格まで変わってるわけじゃないみたいでよかった。
イオリの言うとおり、問題は一つ一つ片付けて行こう。
さぁ、まずは予定通り天使を滅ぼすことから。マイヤとも再会出来たんだ。準備は整った。
「ミカ、今の俺ならミカの隣で戦える。駄目だと言われても勝手に協力するからな。」
「はいはい、イオリほどしつこくて振り払えないやつは他にいないだろうな。」
さて、それじゃあここからは『共闘』のための話し合いをしようか。
大丈夫、一人じゃないだけでなんでもできる気がした。
天魔大戦の絵画とオレの記憶から大戦当時の記録を見た。
正直、昔のことを鮮明に思い出せば、またオレの心がどうにかなるんじゃないかと心配していた。でも、オレの知らないこと、気づけなかったことを知るとどこか楽になる。なんだ、もっと早くに向き合っていれば良かったんだ。
魔法が解け、元の展示室に戻ってきた。それぞれ想うことがあるのか神妙な面持ちだ。
そんな中で、イオリは泣いていた。共感のせいだろうか。もっと配慮するべきだったか?イオリがオレの過去を知りたがってるのは知ってたけど、こんなの見たらやっぱ後悔するよな。
「イオリ、悪い。嫌なものを見せたな。」
何も言わず首を横に振るイオリ。
頬を撫でて止まらない涙を拭うが、すぐにまた涙で頬が濡れる。
やっべ、罪悪感でちょっと慌てる。やっぱ人間には刺激が強すぎたか?
なんて思ってると、じわじわとイオリの頬が熱くなり始めた。
………何かがおかしい。イオリもそれに気付いたのだろう。呼吸が荒れ体温が上がり、イオリは突然意識を残したまま倒れた。
「イオリ!」
倒れたイオリの熱をマイヤがすぐに奪ったが、水程度の温度ではなんの意味もなしていない。
なんとか体を支えているが、コートの上からも高すぎる熱が伝わる。これは人間の耐えれる体温じゃない……!
どういうわけかだんだんとイオリの姿が変わっていく。その様子はどこかオレの堕天と重なる。でも、悪魔になったとしてもこうはならないはずだ。
だってこの姿と気配はこの世界のものじゃない。
これは……悪魔に変える側、異邦人の気配……………
………あれ、そういえば異邦人の名前って『サクラ』だったよな。その名前って、確かイオリの父親と同じ………
そういうことか。名前だけじゃ予想の範疇を超えない。でも、イオリのこの気配は揺るがぬ証拠だ。
イオリは、異邦人の血を引いている。
なんで気付かなかったんだ。いくらディークから力を貰ったとしても、この世界の遺伝子を持っていないイオリの姿までは変わらない。でも、人間を悪魔に変える力を持つ者の血が流れているなら話は別だ。オレも知らない、勇者の世界とは違う世界の技術なら……
しばらくして落ち着いた頃、イオリの姿は変わっていた。それはディークとも違う姿。
ディークから受け継いだ太い角と尾は細長く変わり、頬には黒光りする鱗が浮かぶ。手にも鱗、そして黒く尖った爪。よく見ると瞳孔も人間のものの形じゃなくなっている。
服も形が変わり、黒いロングコートは袖が消え、前後にスリットが入った。インナーの黒いTシャツも白いワイシャツのようになっている。
体だけじゃなく服まで変わるのはかなり特殊だ。この世界じゃ天使・大天使・神は固定の衣装があるけど……。それらはざっくり言うと体の一部だ。イオリのも同じなのだろうか。
…………そりゃあ召喚されるよな。こんな並外れた魔力、どこの世界でも魅力的だ。
そしてイオリもなんとなく察しているようだ。急に体が変わったにも関わらずやけに落ち着いている。
「イオリ、オレが分かるか?」
「あぁ。ただ少し混乱してる。さっきから情報が頭の中に流れ込んで来るんだ。」
またしばらく待ち、落ち着いたイオリは元の人間の姿に戻った。完全に力の使い方を理解したらしい。
ふらふらと立ち上がると、あからさまに苦い顔をするイオリ。
「……なんなんだ、これ。流石に最初から純粋な人間じゃ無かったのは…ショックだな。」
まあ、無理もないか。ずっと人間として生きてきたもんな。混乱しないわけがない。異邦人と人間のミックスだろうか。元の世界にいるままなら、ただの人間だったんだろうな。
でも……一体何者なんだ?その『サクラ』ってやつは…………
「悪い、落ち着いた。これはまた今度考えて、今は本題に戻ろう。」
「でもイオリ……!」
「俺は大丈夫。」
オレの心配なんてガン無視でイオリは話を進めようとしている。逞しいのか自暴自棄なのかよくわかんないな。でもまあ人格まで変わってるわけじゃないみたいでよかった。
イオリの言うとおり、問題は一つ一つ片付けて行こう。
さぁ、まずは予定通り天使を滅ぼすことから。マイヤとも再会出来たんだ。準備は整った。
「ミカ、今の俺ならミカの隣で戦える。駄目だと言われても勝手に協力するからな。」
「はいはい、イオリほどしつこくて振り払えないやつは他にいないだろうな。」
さて、それじゃあここからは『共闘』のための話し合いをしようか。
大丈夫、一人じゃないだけでなんでもできる気がした。
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