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悪魔、人間の本拠地へ
悪魔の国 ①
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ーーーーー???ーーーーー
いつも通りの日。淡々と仕事を捌き、国を動かす。それだけの日々。
不満なんて無いが、思うところはある。私は父や先生のように『良き王』になれているだろうか。…二人に遠く及ばない事は分かっている。それでも、二人が治めていた時のように良い国にしたい。争いの無い国に。
そんな事ばかり考えながら過ごしていると、突然執務室の中央が強く光った。一瞬で先生の魔力だと理解し、関所から出て来たのかと思った。
しかし、そこにいたのは全く見覚えのない悪魔達。確かに転送陣は先生のものだ。でも何故そこに居る者が先生の陣でここに来た?国外に出た悪魔なら転送先はここではない。あの人に限ってそんなミスは無いだろう。
「な、ここは…!?お前は一体……?」
「…私を知らない、だと?」
よほど世間に疎いのか?いや、これはまさか……。
彼等は次第に私に畏怖の視線を向けてきた。魔力の明確な差に気付いたようだ。
私は先生のように魔力を抑えられない。教えてくれなかったから、怯えさせない方法を知らない。それでも王としては舐められるよりはいいだろう、と自分に言い聞かせてきた。
「ま、まさか本当の悪魔……?そ、そうだ、一番偉いやつに渡せって言われたんだ。お前なら誰のことか分かるか?」
「それは……!っよこせ!!」
強引に黒い鳥を奪い取った。先生の魔力の塊。私が触れると一枚の手紙に姿を変えた。
『彼らを、第四種を頼む。それと、暫くは人間の国に滞在することになった。』
………は?何だ、それは。
彼等が第四種だと言う事は何となく察していた。でも、それでは先生が国を出ていることになる。だからおかしいと思っていた。まさか本当に人間の元にいるとは。
いずれ人間の国に行くことは決まっていた。でもまだその時では無い筈だ。
人間と何をしている?
食事はどうするつもりだ?
もし天使と鉢合わせたら…?
他にもキリが無い程に心配事はある。それでも今は第四種と呼ばれた彼等をどうにかしなければ。
ここで私が取り乱してはならない。そう、先生に教わってきたじゃ無いか。
「……申し遅れた。私は魔王デュラン、お前達を保護する。」
「ま、おう……。保護って、俺達をどうするつもりだ!」
明らかに怯えている。第四種なんて呼ばれ方をしても彼等はただの人間だ。
強者に怯えることは自然の摂理。それでもこの国なら怯える必要は無いと、そう思って欲しい。
「この国の事を教えた後、適当な仕事を紹介しよう。最低限の生活は保証する。」
「え?なんでそんな事を俺たちに……。」
「それが私と、お前達をここに送った者の望みだからだ。第四種の境遇は予想が容易い。」
奴隷、人体実験の被験体、あるいは産み捨てか。
それらを先生は見てきた。そして私もそれを教わった身だ。目の当たりにしなかった分、実感は薄い。それでも利用される痛みは分かっているつもりだ。
一月程で彼等は社会に出る事が出来た。教養は無くとも飲み込みが早く、簡単な仕事ならすぐにこなせた。あとは自分の力で生きていくだろう。それならいい。
今はそれよりも先生の方が気になってしまう。
私ですら関所に行く事は出来ない。一度入れば出る事は出来ない。国からも出られない。分かってはいる。天使を通さない為の結界には魔王なんて弱い者が通れる筈無いと。
ただ、どうか何事も無いよう願うのみ。意味も無く、神が死んだこの世界で無事を祈るだけ。こんな無力感、どうすればいいのだろうか。先生も、父も、教えてくれない事ばかり。
父はどうしていた?偉大な魔王として名を馳せた初代魔王ディークなら、この状況をどうするだろうか……。
何も思いつかないまま、私はいつも通り仕事を続けた。
いつも通りの日。淡々と仕事を捌き、国を動かす。それだけの日々。
不満なんて無いが、思うところはある。私は父や先生のように『良き王』になれているだろうか。…二人に遠く及ばない事は分かっている。それでも、二人が治めていた時のように良い国にしたい。争いの無い国に。
そんな事ばかり考えながら過ごしていると、突然執務室の中央が強く光った。一瞬で先生の魔力だと理解し、関所から出て来たのかと思った。
しかし、そこにいたのは全く見覚えのない悪魔達。確かに転送陣は先生のものだ。でも何故そこに居る者が先生の陣でここに来た?国外に出た悪魔なら転送先はここではない。あの人に限ってそんなミスは無いだろう。
「な、ここは…!?お前は一体……?」
「…私を知らない、だと?」
よほど世間に疎いのか?いや、これはまさか……。
彼等は次第に私に畏怖の視線を向けてきた。魔力の明確な差に気付いたようだ。
私は先生のように魔力を抑えられない。教えてくれなかったから、怯えさせない方法を知らない。それでも王としては舐められるよりはいいだろう、と自分に言い聞かせてきた。
「ま、まさか本当の悪魔……?そ、そうだ、一番偉いやつに渡せって言われたんだ。お前なら誰のことか分かるか?」
「それは……!っよこせ!!」
強引に黒い鳥を奪い取った。先生の魔力の塊。私が触れると一枚の手紙に姿を変えた。
『彼らを、第四種を頼む。それと、暫くは人間の国に滞在することになった。』
………は?何だ、それは。
彼等が第四種だと言う事は何となく察していた。でも、それでは先生が国を出ていることになる。だからおかしいと思っていた。まさか本当に人間の元にいるとは。
いずれ人間の国に行くことは決まっていた。でもまだその時では無い筈だ。
人間と何をしている?
食事はどうするつもりだ?
もし天使と鉢合わせたら…?
他にもキリが無い程に心配事はある。それでも今は第四種と呼ばれた彼等をどうにかしなければ。
ここで私が取り乱してはならない。そう、先生に教わってきたじゃ無いか。
「……申し遅れた。私は魔王デュラン、お前達を保護する。」
「ま、おう……。保護って、俺達をどうするつもりだ!」
明らかに怯えている。第四種なんて呼ばれ方をしても彼等はただの人間だ。
強者に怯えることは自然の摂理。それでもこの国なら怯える必要は無いと、そう思って欲しい。
「この国の事を教えた後、適当な仕事を紹介しよう。最低限の生活は保証する。」
「え?なんでそんな事を俺たちに……。」
「それが私と、お前達をここに送った者の望みだからだ。第四種の境遇は予想が容易い。」
奴隷、人体実験の被験体、あるいは産み捨てか。
それらを先生は見てきた。そして私もそれを教わった身だ。目の当たりにしなかった分、実感は薄い。それでも利用される痛みは分かっているつもりだ。
一月程で彼等は社会に出る事が出来た。教養は無くとも飲み込みが早く、簡単な仕事ならすぐにこなせた。あとは自分の力で生きていくだろう。それならいい。
今はそれよりも先生の方が気になってしまう。
私ですら関所に行く事は出来ない。一度入れば出る事は出来ない。国からも出られない。分かってはいる。天使を通さない為の結界には魔王なんて弱い者が通れる筈無いと。
ただ、どうか何事も無いよう願うのみ。意味も無く、神が死んだこの世界で無事を祈るだけ。こんな無力感、どうすればいいのだろうか。先生も、父も、教えてくれない事ばかり。
父はどうしていた?偉大な魔王として名を馳せた初代魔王ディークなら、この状況をどうするだろうか……。
何も思いつかないまま、私はいつも通り仕事を続けた。
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