15 / 73
歪な物語の始まり
14.自覚
しおりを挟む
一瞬、思考が停止した。今起きている事を一度整理してみる。
まず、オレがイオリに手を出しかけて申し訳なさと気まずさから避けている。
それから、回復のために討伐に行こうとしたらラドンと行動を共にする事になった。
そして、帰りづらいオレを置いてくれると言ったラドンと、帰りづらい部屋の隣の部屋に来ている。
………なんでこうなる?
「お?どうした、そんな暗い顔をして。」
「いえ、なんでもありません……。」
ラドンに言われるがままソファに座った。ラドンは慣れた手つきでクッキーとホットミルクと酒を用意した。当然オレに出されたのはホットミルク。また子供扱いかと思いながら一口飲んだ。ら、蜂蜜入りの甘いホットミルクで、簡単に落ち着いた。
「美味いか?」
「美味しいですけど……ラドンさん。考えすぎかも知れないですけど、オレのことだいぶ子供扱いしてません?」
「え、まさか成人してんのか?」
してる事にはしているが、身分を偽っている以上それは言えない。やはり十八にしておくべきだったか。
「……成人はまだです。」
「なら子供だろうが。もうすぐ成人だろうが子供なんだから、大人を頼るべきだろう。」
「………そういうもの、なんですか?」
やはり人間の考えはよく分からない。子供と言うだけで甘えが許される種族。オレが本当に未成年の時はどうしていただろうか。………だめだ、ずっと勉強していた記憶しかない。
「いや、少しばかり違うな。大人だろうが子供だろうが、顔色悪くするまで悩んでるやつは助けたくなるもんだ。逃げるってのは、みっともない様でその実は賢い選択だ。進む道も変えられず、来た道も戻れないっつー事ほど苦しい事は無いと思うからな。」
退路を絶たれた一本道。それがどれだけ苦しいかなんてオレもよく分かっている。助けたくなると言う事も。助けられない悔しさも…。
「確か『大切な人を傷つけた』だっけ?何があったのか教えてくれねぇか?話聞くくらいなら出来るからな。」
「えと…、驚かないでくださいよ?」
「おう!」
あまり人に言うべきでは無いだろうが、何故かこの男は信用出来るような気がする。まぁ、オレの事を人間だと思っている時は、だけど。
「その…大切な人に手を出してしまって………。」
「あー、暴力は確かに良くねぇな。」
「あ、いや、性的に手を出しかけて……」
「なっ!?」
驚かないでって言ったのに。まぁ無理もないだろうけど。
「そ、それはまた………。」
「いくら未遂で済んだとは言え、理性を失って同意の無いまま襲った事に変わりは無い。ちゃんと抑えられなかったオレが悪いのに、顔を見れなくて、逃げて、最低ですよね。」
「まぁ、過去は変えられずとも反省しているのなら多少はいい方だろう。そこから、これからはどうするかを考えればいい。」
これから、か……。あと四ヶ月で勇者は動き出す。少なくともあと四ヶ月はイオリと行動しなければいけない。蟠りがあるなんてもってのほかだ。二ヶ月でこれなのに、耐えられるだろうか。いくら薬で抑えられるとは言え、今回のような事が二度と無いとも限らない。どれだけ頭では分かっていても、少しずつ強まる発情はどうにも出来ない。それに、何故かオレは発情していなくてもイオリを欲している。
「同じ事を繰り返してはいけない。分かってるのにどうして…こんなにも欲が出る?」
「欲がって……、その人のことが好きなんじゃねぇの?」
「す、き……?………っ!?」
全く考えていなかった可能性。だって今まで全然関わりが無かったから……。でも確かに言われてわかった。この温かくて苦しい不思議な感情は確かに、好きと言う言葉が一番しっくりくる。
「ははっ、お前無自覚だったのか!まぁ気持ちは分からんでも無い。俺も嫁さんを好きだと気付いたのはだいぶ遅かったからな。」
「最っ悪だ……。」
好きな人を傷つけた。好きな人とあと四ヶ月しか共にいられない。好きな人に嫌われたく無い。今更気付いたってどうしようも無いのに。
「ま、自分の思うタイミングで仲直りする事だな。避け続けたってどうにもならねぇ。」
「……すぐ、今すぐ何とかする。立場とか関係とか気にせず、ただ嫌われたく無い。誤解させたままにしたくない。」
恐怖と衝動に駆られ、すぐに立ち上がった。壁一枚の向こうにいる好きな人に、イオリにちゃんと言葉を伝えないと。
「外は暗い、送ってやるよ。」
「いや、それは大丈夫です。隣の部屋なんで。」
「いいか、ら………?待て、隣の部屋!?」
そういえば言ってなかったっけ。ラドンは「凄い偶然もあったもんだな」と苦笑している。オレはラドンに礼を伝えてイオリのいる隣の部屋の前に立った。まだ怖いけど、それでも何もしないで後悔したくない。オレは怯えながらもドアノブを回した。ただいまの一言も言えないまま静かに部屋に入った。ドアを閉め、鍵を閉めていると、こっちに向かって足音がした。その足音の主は言うまでもなく彼で、オレは動きを止めてしまった。
「遅い!もう戻らないかもって、なんかあったんじゃ無いかってどれだけ心配したと…!」
イオリに強く抱きしめられた。ゼロ距離で伝わってくる鼓動は速く大きく、焦りが嫌と言うほど伝わってくる。オレに怯えていないだろうか。オレを嫌わないのだろうか。そんな不安は全て、たった一瞬の行動で吹き飛んでしまった。
「い、いおり………ごめん、なさい。オレっ…、お前に………!」
「謝るな、最初から怒ってないから。」
オレは涙を堪えて、イオリと部屋の中に戻った。が、イオリに「血の匂いがする」と言われ、オレはすぐに風呂に入った。返り血を浴びることが目的だった以上、血は洗い流しても匂いは染み付いてしまうだろう。
風呂から上がると、いつも通りイオリはこの世界の勉強をしていた。しかし、紙や本を眺めるばかりで手は動いていない。何か分からない事でもあるのだろうか。それとも考え事をしているのか。
「イオリ、どうした?」
「………なぁ、ミカ。」
イオリは机にペンを置き、真剣な面持ちでオレの方を見た。裸眼で人を見る事を得意としないミカが、真っ直ぐと直接オレを見つめている。
「ん、何?」
「……俺が、お前を好きだと言ったら信じる?」
「え?いや………。」
いきなりどうしたのだろうか。答えなんて考える時間が無くとも分かっている。イオリは人を見た目で判断はしない。それに、オレはイオリに…人に好かれるような事を何もしていない。そもそも好かれるような事が何かも分からないけど。
「だよな…。まぁ、予想通りだ。」
「ならなんで聞いた!?」
ややこしすぎる。ほんのかけらでも期待してしまった自分が恥ずかしい。恋愛感情なんて厄介なだけじゃないか。勝手に舞い上がって勝手に落胆して。
「まさか、ホントにオレを好きだから……なんてな。そんな事ある訳無いよな。」
「………は?ある訳無い?誰がそんな事決めた。」
え?なんか…キレてる?明らかに怒っている時の声のトーンだ。イオリは大きくため息を吐くと、椅子から立ち上がり、オレのとこまで来た。ジリジリと近付くイオリの言い知れない圧に気圧され、思わず後退りしてしまった。それをイオリは逃がさないとでも言うように、オレの両手首を掴んで壁に押し付けた。
「あー、だめだ。気が変わった。」
「え、ちょ…イオリ?何キレて………」
「信じる気も最初から無しで、ある訳無いとか勝手に決めつけられて、キレないとでも?」
よくわからないが、イオリの地雷を踏んでしまったようだ。オレが思い切り振り切れば抜け出す事は出来る。出来る…筈なのに、何故か力が入らない。
「もういい、今言う。お前がなんと言おうと、信じられなくとも、俺はお前のことが好きで好きで仕方がないんだ。勝手に俺の気持ちを決めるな。」
「え?………嬉しい、よ。」
そう言われるとかなり嬉しい。それでも、受け取る事は出来ない。オレはイオリに何も出来ていないどころか、迷惑をかけてばかりだ。それに………
「オレだってイオリが好きだ。それでも、オレはお前に好かれるようなやつじゃ無いから。」
「そうやってまた自分を下げて……」
「だって!何も知らないから!何も…知られたく無いから………!好かれたいなんて思わない。でも、嫌われたく無いから…。だから、オレはイオリに嫌われる前に、知られる前に離れるんだ。」
長く生きてきて、初めて誰かを好きになって、どうすればいいのか分からずに離れることしか出来ない。だから、オレだってこの気持ちを伝える気は全く無かったのに。
初めて会ったとき「お前を落としてやる」なんて言っていたオレが、今じゃ好かれることが怖くて怖くて仕方がない。今更後悔なんて遅すぎるのに。
「………ミカ、俺のこと…恋愛的な意味で好きか?」
「好きだよ。好きで好きで仕方ないよ。でも…」
「それさえ分かればいい。」
オレの言葉を遮って、イオリはオレにそっと口付けた。はじめての、口同士のキス。たった一瞬で顔が熱くなり、羞恥でイオリの顔がちゃんと見れなくなった。蜂蜜より甘く、ワインより酔いが回る。
「知られたく無いなら隠したっていい。ただ、たとえ知ったとしてもこの気持ちが変わらない自信しか無いから。」
「………もし、変わったら?」
「そんな『もし』は考えられないな。」
さも当然のように答えるイオリ。手首を掴んでいた手は離れ、今は頬に触れている。まだ、怖い。それでもイオリの答えが恐怖すら飛び越えてくる。
いいだろうか。応えてもいいのだろうか。イオリの言葉を全て、信じても。
「ミカ、俺の恋人になってくれませんか?」
「…オレで、いいのなら。」
「お前じゃ無いと嫌だよ。出来る事ならこれから先、何年先も側にいたいから。」
悩みに悩んだことは、あっさりと答えになって口から出た。だめだ、イオリに勝てる気がしない。こんなの、断れる訳無いじゃん。
この時初めて、オレはイオリとの未来を夢見た。
まず、オレがイオリに手を出しかけて申し訳なさと気まずさから避けている。
それから、回復のために討伐に行こうとしたらラドンと行動を共にする事になった。
そして、帰りづらいオレを置いてくれると言ったラドンと、帰りづらい部屋の隣の部屋に来ている。
………なんでこうなる?
「お?どうした、そんな暗い顔をして。」
「いえ、なんでもありません……。」
ラドンに言われるがままソファに座った。ラドンは慣れた手つきでクッキーとホットミルクと酒を用意した。当然オレに出されたのはホットミルク。また子供扱いかと思いながら一口飲んだ。ら、蜂蜜入りの甘いホットミルクで、簡単に落ち着いた。
「美味いか?」
「美味しいですけど……ラドンさん。考えすぎかも知れないですけど、オレのことだいぶ子供扱いしてません?」
「え、まさか成人してんのか?」
してる事にはしているが、身分を偽っている以上それは言えない。やはり十八にしておくべきだったか。
「……成人はまだです。」
「なら子供だろうが。もうすぐ成人だろうが子供なんだから、大人を頼るべきだろう。」
「………そういうもの、なんですか?」
やはり人間の考えはよく分からない。子供と言うだけで甘えが許される種族。オレが本当に未成年の時はどうしていただろうか。………だめだ、ずっと勉強していた記憶しかない。
「いや、少しばかり違うな。大人だろうが子供だろうが、顔色悪くするまで悩んでるやつは助けたくなるもんだ。逃げるってのは、みっともない様でその実は賢い選択だ。進む道も変えられず、来た道も戻れないっつー事ほど苦しい事は無いと思うからな。」
退路を絶たれた一本道。それがどれだけ苦しいかなんてオレもよく分かっている。助けたくなると言う事も。助けられない悔しさも…。
「確か『大切な人を傷つけた』だっけ?何があったのか教えてくれねぇか?話聞くくらいなら出来るからな。」
「えと…、驚かないでくださいよ?」
「おう!」
あまり人に言うべきでは無いだろうが、何故かこの男は信用出来るような気がする。まぁ、オレの事を人間だと思っている時は、だけど。
「その…大切な人に手を出してしまって………。」
「あー、暴力は確かに良くねぇな。」
「あ、いや、性的に手を出しかけて……」
「なっ!?」
驚かないでって言ったのに。まぁ無理もないだろうけど。
「そ、それはまた………。」
「いくら未遂で済んだとは言え、理性を失って同意の無いまま襲った事に変わりは無い。ちゃんと抑えられなかったオレが悪いのに、顔を見れなくて、逃げて、最低ですよね。」
「まぁ、過去は変えられずとも反省しているのなら多少はいい方だろう。そこから、これからはどうするかを考えればいい。」
これから、か……。あと四ヶ月で勇者は動き出す。少なくともあと四ヶ月はイオリと行動しなければいけない。蟠りがあるなんてもってのほかだ。二ヶ月でこれなのに、耐えられるだろうか。いくら薬で抑えられるとは言え、今回のような事が二度と無いとも限らない。どれだけ頭では分かっていても、少しずつ強まる発情はどうにも出来ない。それに、何故かオレは発情していなくてもイオリを欲している。
「同じ事を繰り返してはいけない。分かってるのにどうして…こんなにも欲が出る?」
「欲がって……、その人のことが好きなんじゃねぇの?」
「す、き……?………っ!?」
全く考えていなかった可能性。だって今まで全然関わりが無かったから……。でも確かに言われてわかった。この温かくて苦しい不思議な感情は確かに、好きと言う言葉が一番しっくりくる。
「ははっ、お前無自覚だったのか!まぁ気持ちは分からんでも無い。俺も嫁さんを好きだと気付いたのはだいぶ遅かったからな。」
「最っ悪だ……。」
好きな人を傷つけた。好きな人とあと四ヶ月しか共にいられない。好きな人に嫌われたく無い。今更気付いたってどうしようも無いのに。
「ま、自分の思うタイミングで仲直りする事だな。避け続けたってどうにもならねぇ。」
「……すぐ、今すぐ何とかする。立場とか関係とか気にせず、ただ嫌われたく無い。誤解させたままにしたくない。」
恐怖と衝動に駆られ、すぐに立ち上がった。壁一枚の向こうにいる好きな人に、イオリにちゃんと言葉を伝えないと。
「外は暗い、送ってやるよ。」
「いや、それは大丈夫です。隣の部屋なんで。」
「いいか、ら………?待て、隣の部屋!?」
そういえば言ってなかったっけ。ラドンは「凄い偶然もあったもんだな」と苦笑している。オレはラドンに礼を伝えてイオリのいる隣の部屋の前に立った。まだ怖いけど、それでも何もしないで後悔したくない。オレは怯えながらもドアノブを回した。ただいまの一言も言えないまま静かに部屋に入った。ドアを閉め、鍵を閉めていると、こっちに向かって足音がした。その足音の主は言うまでもなく彼で、オレは動きを止めてしまった。
「遅い!もう戻らないかもって、なんかあったんじゃ無いかってどれだけ心配したと…!」
イオリに強く抱きしめられた。ゼロ距離で伝わってくる鼓動は速く大きく、焦りが嫌と言うほど伝わってくる。オレに怯えていないだろうか。オレを嫌わないのだろうか。そんな不安は全て、たった一瞬の行動で吹き飛んでしまった。
「い、いおり………ごめん、なさい。オレっ…、お前に………!」
「謝るな、最初から怒ってないから。」
オレは涙を堪えて、イオリと部屋の中に戻った。が、イオリに「血の匂いがする」と言われ、オレはすぐに風呂に入った。返り血を浴びることが目的だった以上、血は洗い流しても匂いは染み付いてしまうだろう。
風呂から上がると、いつも通りイオリはこの世界の勉強をしていた。しかし、紙や本を眺めるばかりで手は動いていない。何か分からない事でもあるのだろうか。それとも考え事をしているのか。
「イオリ、どうした?」
「………なぁ、ミカ。」
イオリは机にペンを置き、真剣な面持ちでオレの方を見た。裸眼で人を見る事を得意としないミカが、真っ直ぐと直接オレを見つめている。
「ん、何?」
「……俺が、お前を好きだと言ったら信じる?」
「え?いや………。」
いきなりどうしたのだろうか。答えなんて考える時間が無くとも分かっている。イオリは人を見た目で判断はしない。それに、オレはイオリに…人に好かれるような事を何もしていない。そもそも好かれるような事が何かも分からないけど。
「だよな…。まぁ、予想通りだ。」
「ならなんで聞いた!?」
ややこしすぎる。ほんのかけらでも期待してしまった自分が恥ずかしい。恋愛感情なんて厄介なだけじゃないか。勝手に舞い上がって勝手に落胆して。
「まさか、ホントにオレを好きだから……なんてな。そんな事ある訳無いよな。」
「………は?ある訳無い?誰がそんな事決めた。」
え?なんか…キレてる?明らかに怒っている時の声のトーンだ。イオリは大きくため息を吐くと、椅子から立ち上がり、オレのとこまで来た。ジリジリと近付くイオリの言い知れない圧に気圧され、思わず後退りしてしまった。それをイオリは逃がさないとでも言うように、オレの両手首を掴んで壁に押し付けた。
「あー、だめだ。気が変わった。」
「え、ちょ…イオリ?何キレて………」
「信じる気も最初から無しで、ある訳無いとか勝手に決めつけられて、キレないとでも?」
よくわからないが、イオリの地雷を踏んでしまったようだ。オレが思い切り振り切れば抜け出す事は出来る。出来る…筈なのに、何故か力が入らない。
「もういい、今言う。お前がなんと言おうと、信じられなくとも、俺はお前のことが好きで好きで仕方がないんだ。勝手に俺の気持ちを決めるな。」
「え?………嬉しい、よ。」
そう言われるとかなり嬉しい。それでも、受け取る事は出来ない。オレはイオリに何も出来ていないどころか、迷惑をかけてばかりだ。それに………
「オレだってイオリが好きだ。それでも、オレはお前に好かれるようなやつじゃ無いから。」
「そうやってまた自分を下げて……」
「だって!何も知らないから!何も…知られたく無いから………!好かれたいなんて思わない。でも、嫌われたく無いから…。だから、オレはイオリに嫌われる前に、知られる前に離れるんだ。」
長く生きてきて、初めて誰かを好きになって、どうすればいいのか分からずに離れることしか出来ない。だから、オレだってこの気持ちを伝える気は全く無かったのに。
初めて会ったとき「お前を落としてやる」なんて言っていたオレが、今じゃ好かれることが怖くて怖くて仕方がない。今更後悔なんて遅すぎるのに。
「………ミカ、俺のこと…恋愛的な意味で好きか?」
「好きだよ。好きで好きで仕方ないよ。でも…」
「それさえ分かればいい。」
オレの言葉を遮って、イオリはオレにそっと口付けた。はじめての、口同士のキス。たった一瞬で顔が熱くなり、羞恥でイオリの顔がちゃんと見れなくなった。蜂蜜より甘く、ワインより酔いが回る。
「知られたく無いなら隠したっていい。ただ、たとえ知ったとしてもこの気持ちが変わらない自信しか無いから。」
「………もし、変わったら?」
「そんな『もし』は考えられないな。」
さも当然のように答えるイオリ。手首を掴んでいた手は離れ、今は頬に触れている。まだ、怖い。それでもイオリの答えが恐怖すら飛び越えてくる。
いいだろうか。応えてもいいのだろうか。イオリの言葉を全て、信じても。
「ミカ、俺の恋人になってくれませんか?」
「…オレで、いいのなら。」
「お前じゃ無いと嫌だよ。出来る事ならこれから先、何年先も側にいたいから。」
悩みに悩んだことは、あっさりと答えになって口から出た。だめだ、イオリに勝てる気がしない。こんなの、断れる訳無いじゃん。
この時初めて、オレはイオリとの未来を夢見た。
3
あなたにおすすめの小説
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる