【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

キャラクターエピソード

Episode.ローズ

“初めまして、私はドライアドよ。貴女…私と異世界に行かない？”

夢の中で聞こえた声
私は二つ返事で頷いた



気が付けば私の体は変わっていた
知らないけど覚えのある記憶も追加されて
すぐにここがゲームの世界って分かったわ
ローズは、もとのこの子は辛い思いをしていた
これから王子様が迎えに来ると知らないこの子は、いっそ命を絶ってしまおうかと思ってたみたい
でも大丈夫よ
この世界は貴女の…ううん、私のための世界だから




そう、思っていたのに
この世界は私の知ってる世界じゃなかった
死んだアイリスと、入れ替わったカメリア
リージュルートは開始不可能
既にカメリアに攻略されてる王子達と神秘の騎士
カメリアもアイリスも転生者で神子
しかも中身は……


結局、私は罪人として扱われるザマ
私をこの世界に連れて来たドライアドは私を捨てた挙句に消滅
最初は納得できなかったわ
でも、この世界がカメリアのものって考えると全部通る
きっとライアは、本物のローズがこの世界を攻略しないよう私を連れて来たのね

………きっとこれは罰
身勝手にツバキに私刑を与えたから
しかも、私に都合が悪いからってたくさんの命を奪ってしまった
そうよ…その時点で私はヒロインの資格なんてない
何もかも失って、1人死んでいくのでしょう



ツバキ…カメリアに殺される覚悟は出来てた
でも私は、両目を奪い国外追放という処分になった
それも、ハルジオンと共に
力を奪った上での追放
部分麻酔だけで瞳を抉り取られ、恐怖に泣きながら罰を受けた
頬を伝う生温かい血液と鉄の匂い
取られた後は医師によって適切に処置されたらしいけど
両目の無い私には状況が分からない


それ以降はカメリアと会う事は無かった
それでも、共に国外に出たハル様が彼の話しをした
ハル様は10年以上カメリアを好きだった
でも、カメリアが欲しいあまりアイリスを殺したと
結果的には双子の入れ替わりに気づかず、盛大に振られて国外追放
ハル様は私が知ってる同性愛者のイメージと変わり無かった
でも、アイリスは…ううん、あの双子は違った
アイリスも同性愛者だけど、私の知らない種類だった
きっと、自分より他人を優先する性格だから
自分第一ならきっと間違いを犯す
そうじゃ無いからこそ、必要以上に気を使う

私も、我慢が出来る人間だったら違ったのかな
欲しいものは全て手に入れられる訳じゃない
そんな当たり前のことすら自分とは無関係だと思ってた


ごめんなさい、なんて薄っぺらな言葉で許される訳じゃ無い
けど……ごめんなさい
私、本当は知ってたの
自分の行動は間違いだって
でも見て見ぬふりしてた
そんな訳ないって思い込んで、たくさん傷つけた



私は、ハル様…ハルと一緒にいる
自分のために罪を犯した者同士、どこか似てるわ
いつ捨てられるのか分からないけど、例え見捨てられて死んだとしても…受け入れるから
しばらく迷惑をかけるわね