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キャラクターエピソード

Episode.ユグド

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俺にはカメリアも…ツバキも知らないヒミツがある
いや、正確には俺達…ユグドラシルのヒミツだ

ツバキは、俺が何なのか知らない
知られたくも無いけど

妖精の人格は人間の子供と同じ、過去の境遇や成長の過程で生まれる
でも、最初から神子のための枝として作られた俺達は違う
妖精と成ったその場で人格が作られた
でも、神様がいちいち自分で細かいとこまで作る?
そんなわけ無い
ユグドラシルの人格にはベースがある
そう、ラシルのベースがアヤメの幼少期であるように


俺の人格のベースは、ツバキの幼少期だ
それも、全てじゃ無いとは言え当時のツバキの記憶を有している




「グドって、なんて言うか…幼い感じがする」

そんなことを何度も言われた
でも、当たり前だ
だって俺は幼いツバキから出来てるから

「グドってポジティブっていうか…明るいね」

幼いツバキは明るかったんだ、前向きだったんだ

「グドって何で僕にそこまで尽くすの?」

だって、お前が大好きだから
ツバキはちゃんと自分を大切にして、自分を愛してたんだ

「グドといると楽しいけど落ち着くね」

そりゃあ、俺はお前だから
俺はツバキだから…

「グドってなんか、懐かしい感じがする」

昔のお前だからな
……お前が覚えていなくても



嫌だ、な
もっと俺を知って欲しい
そうすればきっと思い出す…よな
俺は誰よりも近いのに
その筈なのに…だんだんと壊れてく

俺は…ただ………!


「ツバキ、やだ、捨てないで……」

また、捨てられるのが怖い
幼さを、前向きさを、明るさを、弱さを…俺を捨てた時みたいに
ツバキは、カメリアは覚えてない
自分で忘れたんだ
自分で消したんだ
生前に全てを敵に回して絶望と恐怖に駆られた時に
何も知らなかった幼い自分を、俺を捨てた!
だから何も信じないで、全て諦めるようになった
甘え方も助けの求め方さえも忘れて

「グド……?」

………そうだ、グド
それが今の自分
いくら記憶と人格を持っていても俺はツバキじゃ無い
それでも怖いんだ
お前が必死に過去の人格を消そうとしてた時の事、俺は覚えてるから…
理不尽に責め立てられて、痛めつけられてたことも覚えてる


ツバキ…

ツバキ、ツバキ、ツバキ………

ごめんなさい
今度はちゃんと守るから
強くなるから捨てないで……!




こんなこと考えてるって、本人に知られたらどうなるんだろ
嫌われる?引かれる?怖がられる?
いや、きっとカメリアは自分を責める
だから隠し通さないと


俺はグド、ユグドラシル
カメリアの妖精だ
あるじが幸せに暮らせるように、心から笑えるように側に居て力になる
そう、それが妖精でありカメリアの一部である俺の幸せだ
だから、それ以上は望まない
他人の幸せなんかどうでもいい
ただカメリアが望むままに
カメリアのためならなんだってする
何回死んだっていいから……………



全ては、ただ俺が捨てられないように
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