【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

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ただいま

139話 分からない

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キスの後からアズは僕に冷たくするようになった
一緒にいる時間も短くなって、会話も少なくなって、僕に触れる時に躊躇うようになっている

分からない
…アズに、僕の気持ちがバレたのかな
だから避けられてるのかな
失恋するって分かりきってて好きになるのはやっぱり苦しい
ただ気まずく感じてるのかもしれないけど、それでもどうしても不安になる



僕はディンの部屋に通うようになった
お見舞いと、片腕で不便だろうからお手伝い
力仕事は出来ないからグドに協力してもらっているけど、体を拭いたり物を取ったりは出来る
でも、やっぱりディンの失った左腕を見ると泣き出しそうになる
なんとか悟られないよう隠そうとしても、ディンには気にしてる事がバレバレだ
やっぱり、嘘とか演技とか苦手だ

でも、今日気付かれたのは別のこと


「ミリー、元気ないな」
「そう?」
「なんか寂しそうにも見えるが…なんかあったか?」

寂しそう…か
確かに、僕は寂しさを感じてる
ディンも生きてて、グドも帰ってきた
それでも僕は……アズに距離を置かれている現状を『寂しい』と感じてる


「…分からない。なんで、ちょっと前まで普通だった事が苦しいんだろう」
「あぁ、もしかして第二王子のことか?」
「っ!なんで……」
「なんか様子がおかしいって噂になってるんだと、エルが話してたよ」


余計な事言ったかな
振った相手に恋愛相談なんか絶対ダメでしょ
でも、噂って何?

「なんでも、第二王子が突然物静かになったとか。他にも、寝る暇も無くして仕事してるだとか、まぁ色々話題らしい」
「そう…忙しいんだね」
「いやちげぇだろ。なんか思い悩んでるんだろ?お前も第二王子も。動いていないと余計な事を考えそう…違うか?」

確かにその通り
悩んでしかないよ、僕は
いつまで経っても臆病で、戦いの時の行動力も判断力も無い
だって苦しいから、痛いから
体の傷なんかより余計に痛い

「僕…分からないよ。なんでアズ様は僕を避けてるんだろう。どれだけ考えても分からない」

迷惑ばっかりかけたから?
いや、アズは僕にキスをした日から僕を避け始めた
行動に後悔してるから?
僕と顔を合わせづらい?
本当なら直接聞きたいけど、上手く話せない

「つか、何があったんだ?」
「それは……その、アズ様に………」

ダメだ
思い出しただけで顔が熱い
思い出しちゃダメだ

「なんだ、抱かれたのか?」
「いや、そこまでは……」
「でもまぁ襲われたか」

襲う…そう、なのかな
確かに襲われたと言える事だった
でも、アズが僕を襲ったなんて信じられない
それこそ本当にアズが僕を好きみたいだ


やっぱり、本人に直接聞くしか無いよね
こんなに苦しいなら、いっそのこと面と向かって振られた方がまだいいかも
なんでキスをしたのか
なんで僕を避けてるのか
ちゃんと本人の口から聞かないと



「なぁミリー、お前って第二王子に惚れてるだろ?それも、俺と出会う前から」
「え?ディンと出会う前?」
「なんていうか…上手く言葉に出来ないけど、そんな気がする。だってお前、体の関係が出来ただけで惚れるようなやつじゃ無いしさ。たかがキス程度でそんなに考えるってことは、元から意識してたって事じゃ無いのか?」

……そうなのかもしれない
いや、今も分からないけど、なんとなく納得できた
いつから好きかなんて分かんないけど、きっとそう

分からないことだらけだけど、少しずつ消化していかないと
……明日、アズに会ったら早速聞いてみよう
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