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ただいま
133話 後遺症
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目が覚めて1ヶ月
傷も塞がり、一人でも生活できるようになった
ただし、足だけは回復しなかったけど
壁伝いか杖があれば歩ける程度だ
動かすことはできても体重をかけるのは負荷が大きい
リハビリは続けるけど、走れるようにはなれないかもしれない
僕はリハビリも兼ねてディンの元に行くことにした
目が覚めてから一度も行けていなかったけど、ようやく様子を見れる
まだ目が覚めてないとは聞いているから、顔を見て終わりになるだろうけど
ディンが治療を受けて眠っている部屋に着いた
ドアをノックすると、「どうぞ」という女性の声が聞こえた
部屋に入ると、ベッドの横に座っている金髪の人がこちらを見た
ディンの様な濃い紫ではなく薄紫の大きな瞳
「えっと、あなたは?」
「僕はエルシード。レイの…この人の妹だよ」
この人がエルシード?
なんでこんなところに……いや、冷静に考えれば分かる
ディンが僕を暗殺するはずだったように、この人はきっとエリーを殺す為にここに来た
でも身分を隠さないと言うことは、多分暗殺は失敗したんだろう
「あの、もしかして貴方は神子カメリア?」
「うん。最初に聞いておくけど……」
あくまで確認
でも聞かないわけにはいかない
「君は神子を殺さない?」
「っ……!もちろん。僕は、アイリスに助けられたから」
ここでエリーの名前を出した
本人に確認できる僕に名指しで教えたのならそれは事実だろう
ようやくディンに近づくと、僕はその姿を見て絶句した
ディンの左腕が無かった
……助けられなかった
こんな大きな後遺症、無事で良かったなんて思えない
これは無事じゃ無い
僕が……あの夜にディンを守ると覚悟できなったから
僕が彼を救うことを諦めてしまったから
「ごめんなさい…ディン………」
僕は未だ眠り続けるディンの姿を直視出来なかった
僕の心が強かったら、現状を直視出来ただろうか
僕の心が強かったら、ちゃんと助けることが出来ただろうか
でもそれ以上にどうしても思ってしまう事がある
「僕がいなければ、こんな事にならなかったのに………」
「そんなこと…言うなって、言っただろ………?」
掠れた力無い声
その声の主は考える間もなく分かった
「ディン…!」
「お兄ちゃん、気付いた!?」
「ん……あれ、ミリーにエル?なんで2人が…というかここはどこだ?」
……さっきの言葉は無意識だった
意識がハッキリしないまま、彼は僕に当たり前の様に言葉を掛ける
ダメだ、泣かないって決めてたのに………
僕もエルシードも栓が切れたように泣き出した
「まったく、2人とも泣き虫だな……。なんでか分からんけど、俺は生きてるぞ……って、ん?あ………」
ディンは無くなった左腕に気付いた
悲しむでも無く、怯えるでも無く、何故か微笑んだ
「もしかして、ミリーが助けてくれたのか?」
「僕は…ごめん、僕がもっと強かったら腕も無くならなかったのに」
「ん?お前が助けてくれたから腕一本で済んだんだろ。ありがとな」
当たり前の様に僕に礼を言うディンに、余計に無力さを感じた
もう僕には力が無い
余計に怖いのはきっとそのせいだ
それでも、一度は命を捨てたディンを助けることが出来て良かったと、今はそう思うべきだろう
傷も塞がり、一人でも生活できるようになった
ただし、足だけは回復しなかったけど
壁伝いか杖があれば歩ける程度だ
動かすことはできても体重をかけるのは負荷が大きい
リハビリは続けるけど、走れるようにはなれないかもしれない
僕はリハビリも兼ねてディンの元に行くことにした
目が覚めてから一度も行けていなかったけど、ようやく様子を見れる
まだ目が覚めてないとは聞いているから、顔を見て終わりになるだろうけど
ディンが治療を受けて眠っている部屋に着いた
ドアをノックすると、「どうぞ」という女性の声が聞こえた
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「えっと、あなたは?」
「僕はエルシード。レイの…この人の妹だよ」
この人がエルシード?
なんでこんなところに……いや、冷静に考えれば分かる
ディンが僕を暗殺するはずだったように、この人はきっとエリーを殺す為にここに来た
でも身分を隠さないと言うことは、多分暗殺は失敗したんだろう
「あの、もしかして貴方は神子カメリア?」
「うん。最初に聞いておくけど……」
あくまで確認
でも聞かないわけにはいかない
「君は神子を殺さない?」
「っ……!もちろん。僕は、アイリスに助けられたから」
ここでエリーの名前を出した
本人に確認できる僕に名指しで教えたのならそれは事実だろう
ようやくディンに近づくと、僕はその姿を見て絶句した
ディンの左腕が無かった
……助けられなかった
こんな大きな後遺症、無事で良かったなんて思えない
これは無事じゃ無い
僕が……あの夜にディンを守ると覚悟できなったから
僕が彼を救うことを諦めてしまったから
「ごめんなさい…ディン………」
僕は未だ眠り続けるディンの姿を直視出来なかった
僕の心が強かったら、現状を直視出来ただろうか
僕の心が強かったら、ちゃんと助けることが出来ただろうか
でもそれ以上にどうしても思ってしまう事がある
「僕がいなければ、こんな事にならなかったのに………」
「そんなこと…言うなって、言っただろ………?」
掠れた力無い声
その声の主は考える間もなく分かった
「ディン…!」
「お兄ちゃん、気付いた!?」
「ん……あれ、ミリーにエル?なんで2人が…というかここはどこだ?」
……さっきの言葉は無意識だった
意識がハッキリしないまま、彼は僕に当たり前の様に言葉を掛ける
ダメだ、泣かないって決めてたのに………
僕もエルシードも栓が切れたように泣き出した
「まったく、2人とも泣き虫だな……。なんでか分からんけど、俺は生きてるぞ……って、ん?あ………」
ディンは無くなった左腕に気付いた
悲しむでも無く、怯えるでも無く、何故か微笑んだ
「もしかして、ミリーが助けてくれたのか?」
「僕は…ごめん、僕がもっと強かったら腕も無くならなかったのに」
「ん?お前が助けてくれたから腕一本で済んだんだろ。ありがとな」
当たり前の様に僕に礼を言うディンに、余計に無力さを感じた
もう僕には力が無い
余計に怖いのはきっとそのせいだ
それでも、一度は命を捨てたディンを助けることが出来て良かったと、今はそう思うべきだろう
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