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新しい生活

129話 人を超えた

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暗殺施設の最下階
このフロアに囚われていたのは……

「みんな…赤い瞳?」

殺人兵器達だ
でもおかしい
9年前に廃止されたのに、幼い子供や動物までいる
ここはずっと秘密裏に研究と開発を続けていたんだ

「兵器全てに命ずる。侵入者を殺せ!」

男がそう叫ぶと、微塵も逆らわずに全員が一斉に襲いかかってきた
なんとか経験とセンスで蹴散らすが、このままだと数の暴力に力負けする
この人数は……どの階よりも明らかに多い

「うっそだろぉ!?こんなん耐久戦じゃん!」
「グド…ごめん、僕はちょっと無茶する!」
「あーもーじゃ無いと皆んなやられるから今はいいよ!」

ドライアド戦以来に使う神子の最大の力
見た目的には服に模様が浮かぶのと、体が若干光るくらいだけど確かに許容範囲を超える力が使える
今はグドが僕の中にいないから安定させるのが難しい
けど、ガタが来る前に全部片付ける



しばらく戦って、相手の数もほんの数人まで減った
しかし僕の体力と気力も、アズの張った結界も減りつつある
グドの言う通り耐久戦だ
正直、僕ももうあと数分くらいしか力を使えないだろう
なんとか終わらせないと……

「カメリアッ!」
「え…?」

ほんの一瞬できてしまった隙
グドが僕を守らなかったら直撃していただろう攻撃
僕は無我夢中で残りの敵を斬り捨てた

「はぁ…はぁ……グド!」

僕を庇って倒れたグドは、致命傷を受けていた
どれだけ呼んでも目を開けない
人間みたいに少しずつ体温が低くなって白くなっていく
それもそうだ、グドは心臓を抉られたんだから

「……グド、命令だよ。必ず僕の元に帰ってきてね」

いったんグドの遺体から離れてディンやアズ達の元に行った
グドは必ず復活する
僕が生きてる限りは
騎士団長だった頃みたいに、また新しい体で帰ってくるはずだ

「やってくれたな………」
「流石は神子様だ。まさか皆殺しにしてしまうとは。まぁ…人外のお友達は残念だったがな」
「いや、僕は何も失ってなどない。死んでも戻ってくるようなやつだからな」

グドの存在を知らない男は冗談のように受け取っただろう
でも僕は、笑えない

「まあいい。……どうせ奴らはただの被験体。暗殺者では無い。神子よ、戦いを熟知した殺人兵器の力をその身を持って体感してみるがいい」

そう言って僕に剣を向けた男の目は、火傷の無い方の片目だけ赤くなっていた
まさか、こいつも殺人兵器……?
なんで自身も兵器なのに研究を続ける?
幼い子供や小動物にまでこんなことをして

「……いいだろう?赤い瞳は私がずっと追い求めていたものだ。私は、自ら殺人兵器になったのだ」

自分から…?
適性がなければ拒絶反応を起こして最悪死ぬような危険な薬を自分に使ったと?
狂ってる……!

人を超えた力を求めたのだろうか
そしてそれに取り憑かれている
多分、今まで会った中で1番狂った相手かもしれない

……はやく、僕が片付けないと
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