【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

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新しい生活

127話 作戦会議

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アズの魔法で転移した先は山奥
近くに小屋が見える
グドによれば、あそこが地下にある本部の入り口らしい
ディンは既に帰還してる

「グド、僕の剣は」
「直ってるよ」

神子の力を少しだけ使う
服装は神子の正装に変わり、髪は銀色になった
剣も問題なく出すことはできたし、これで戦える

「…一つ聞いても?カメリアが助けようとしてる人は…貴方を襲った人ですか?」
「そうだけど違います。そもそも僕は襲われてはいませんよ」

合意だったからね
『流された』と言うべきかもしれないけど、それでも僕は自分から身を預けた
それに……あの時間に嫌ってほど泣いたからか少しスッキリしている
少し腰に違和感があるけど

「カメリア、どう言うことか先に説明してください。勝手に城を出た件は後で聞くとして、あの男と何があったんですか?」
「ディンは神子を殺す命令を受けた暗殺者だった。けど、僕を殺さなかった。……ディンは組織に逆らって死を選んだんだ」

自分の口でいうと余計に嫌だな
酷く動揺してた僕は、自分で考えれなかったからディンの死を受け入れるしかできなかったけど
でも今は…可能性があるなら絶対に助ける

「殺さなかった?殺せなかったでは無く?」
「……バカだよね。ほんの2週間近くだよ?それだけの時間で自分より僕の命を優先するほど僕を好きになったって。…理解、出来ないよ」

それに僕が助けた命を僕のせいで失うなんてごめんだ
ディン、死んだら許さないから



それぞれ役割を決めた
僕とグドが前線に立ってアズがサポートに回る
本部が地下にある以上、魔法を使えば最悪地下が崩れて全員生き埋めだ
動けるのは接近の僕達だけ

すぐそこに見える小屋には見張りが3人
一見ただの山小屋だけど、姿が見えないようにできるグドが地下階段を確認してる
幸い小屋の中と前にしか人はいない
セキュリティが甘い気もするけど、人が多くても悪目立ちする
と考えれば、見張りもそれなりの実力者だろう
グドが小屋の中から注意を引いてるうちに僕は正面から叩く事にした

「じゃ、俺は先に行くから動き始めたらすぐに来るように」

クドは小さな姿に変わって小屋の中まで飛んで行った
アズと2人になったあと、服の裾を軽く引っ張られた

「カメリア、殺すことを躊躇わないように。こういう世界は命が何より軽いですから、躊躇えば殺されますよ」

その言葉でふと思った
アズが言った『こういう世界』は裏社会の事だろう
でも、僕にとっては『異世界』だ
元いた世界とは命の価値も殺傷の罪も違う
簡単に『殺せ』と言うアズ
そうか、僕の言動は自分で思ってた以上にこの世界だと当たり前なんだ
……そうだよね
このファンタジー世界はよほど秩序を乱さない限りは、人殺しだって大した罪にはならない
騎士や兵士なんて敵を斬る仕事だ
大切な人を守る為に殺すことは、この世界だと場合によっては正当化される
僕が悩んでたことの一つがこんなアッサリ解決するなんて

『悪役』なんて、きっと僕は自分を過大評価してたんだな
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