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新しい生活
125話 さようなら (ディン)
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最後の最期に卑怯なことをしてしまった
…あんな狡い願いを押し付けて、泣かせてしまった
いっそ、何も告げずに死にに行くべきだっただろうか
俺自身、まさかこんな簡単に人を愛するとは思わなかった
それも同性を
シソーラスは他国に比べて性にオープンで、同性間でもよくある話だった
が、自分がそうなるとは思わなかった
気を飛ばし眠るミリーは、ずっと苦しそうな顔をしていた
目の周りは赤く、時折涙を流している
起こさないように水を飲ませてから蒸しタオルを目に被せてやった
……かなり無理をさせただろう
既にうっすらと陽の光が差し始めている
自分から頼んでおいて、あまりいい思い出にはならなかった
ただ、愛しい人を泣かせただけの思い出
ミリーが起きる前にそっと家を出た
正直、目覚めた彼と合わせる顔が無い
こんな逃げ方、軽蔑されるだろうか
それとも、別れも告げずに去って泣くだろうか
どちらにせよ良くはならないだろう
……きっと、怒るのも悲しむのもミリーに限った話では無い
妹のエルも、俺が殺されればきっと泣くか怒るかその両方だ
それでも俺は、愛した人を殺せない
そんなところはよく似てると思わないか?ミリー…
外に出ると、そこには怪しいマントの男がいた
青い長髪が見えるが、体格と僅かに見える口元から男だと思われる
「早朝から外出ですか?」
この声…昨夜の訪問者か
ミリーが逃げていた相手…
神子の周辺にいるあの髪色の人物は王家の人間くらいだろう
こんなとこにいるってことは、国外追放された第一王子だろうか
いや、この魔力の量は魔法士の類い、第二王子か?
あるいはもっと位の低い人物…いや、それは無い
ミリーの手の甲で光っていたものは魔法関係だろう
恐らく、追跡することのできるもの
……何か契約でもしているのだろうか
「…お前、ずっとここにいたのか?」
「いえ、少し離れたところで野営をしていました。私の探している人を貴方は知らなくても、もう1人の方が知っているかもしれませんからね。それに、夜更けに森を歩くのは危険ですから」
「そうか。ところでその探してる人はお前とどんな関係なんだ?」
もし、命を狙うようなやつだったり、傷つけるようなやつだったらここで殺す
とはいえ第二王子に変な噂は無い
ただひたすらに『完璧』のような人物だと聞く
「どんな…不思議なことを聞きますね。…私にとって彼は主人で、家族で、最愛の人です。私の想いなど本人はまったく気付いていませんけどね」
「…そうか。ならなぜミリーはお前から逃げて酷く怯えていた?」
「っ!やはり彼を知っていましたか……。答えなさい、カメリアはどこです?」
……教えてもいいだろう
本当にただ守ろうとしているだけに見える
「今は行ってやるな。疲れ果ててまだ眠ってるんだ」
「……まさか、貴方が昨夜言っていたのは……!」
「あぁ、この家に元から女なんていない。俺が犯してたのはミリーだ」
俺みたいなやつをもう近づけないように、わざと襲ったことを伝えよう
こいつなら守ってやれるよな
それなりの立場も実力もあるのなら
「ったく、お前もあいつも案外ちょろいんだな。神子と王子が聞いて呆れる」
「なぜ私が王子だと?」
「神子と接点ある青髪なんてラディクスの王族くらいだろ?まぁいい、俺はここに用は無くなった」
その場から立ち去ろうとすると、王子に呼び止められた。振り返って顔を見てみると、静かに怒っているようだ。
「待て、一つ聞きたい。……同意の上での行為だったんだろうな?」
敬語が外れている
これが本性か?
それでもあいつを守ろうとしてのことなら……
「……同意…なぁ。」
俺はそれだけ言って笑った
「…貴様……、絶対に許さない。今ここで殺してやる」
「おっと、それは困るな」
ミリーに俺の死体なんか見せられるかよ
俺は振り返らず全力でその場から離れた
人を超える力を持った俺ならすぐに撒けるだろう
俺の体に埋め込まれた何かが組織までの方角を教えてくれる
ミリー…もう会うことは無いだろう
ありがとう、さようなら
…あんな狡い願いを押し付けて、泣かせてしまった
いっそ、何も告げずに死にに行くべきだっただろうか
俺自身、まさかこんな簡単に人を愛するとは思わなかった
それも同性を
シソーラスは他国に比べて性にオープンで、同性間でもよくある話だった
が、自分がそうなるとは思わなかった
気を飛ばし眠るミリーは、ずっと苦しそうな顔をしていた
目の周りは赤く、時折涙を流している
起こさないように水を飲ませてから蒸しタオルを目に被せてやった
……かなり無理をさせただろう
既にうっすらと陽の光が差し始めている
自分から頼んでおいて、あまりいい思い出にはならなかった
ただ、愛しい人を泣かせただけの思い出
ミリーが起きる前にそっと家を出た
正直、目覚めた彼と合わせる顔が無い
こんな逃げ方、軽蔑されるだろうか
それとも、別れも告げずに去って泣くだろうか
どちらにせよ良くはならないだろう
……きっと、怒るのも悲しむのもミリーに限った話では無い
妹のエルも、俺が殺されればきっと泣くか怒るかその両方だ
それでも俺は、愛した人を殺せない
そんなところはよく似てると思わないか?ミリー…
外に出ると、そこには怪しいマントの男がいた
青い長髪が見えるが、体格と僅かに見える口元から男だと思われる
「早朝から外出ですか?」
この声…昨夜の訪問者か
ミリーが逃げていた相手…
神子の周辺にいるあの髪色の人物は王家の人間くらいだろう
こんなとこにいるってことは、国外追放された第一王子だろうか
いや、この魔力の量は魔法士の類い、第二王子か?
あるいはもっと位の低い人物…いや、それは無い
ミリーの手の甲で光っていたものは魔法関係だろう
恐らく、追跡することのできるもの
……何か契約でもしているのだろうか
「…お前、ずっとここにいたのか?」
「いえ、少し離れたところで野営をしていました。私の探している人を貴方は知らなくても、もう1人の方が知っているかもしれませんからね。それに、夜更けに森を歩くのは危険ですから」
「そうか。ところでその探してる人はお前とどんな関係なんだ?」
もし、命を狙うようなやつだったり、傷つけるようなやつだったらここで殺す
とはいえ第二王子に変な噂は無い
ただひたすらに『完璧』のような人物だと聞く
「どんな…不思議なことを聞きますね。…私にとって彼は主人で、家族で、最愛の人です。私の想いなど本人はまったく気付いていませんけどね」
「…そうか。ならなぜミリーはお前から逃げて酷く怯えていた?」
「っ!やはり彼を知っていましたか……。答えなさい、カメリアはどこです?」
……教えてもいいだろう
本当にただ守ろうとしているだけに見える
「今は行ってやるな。疲れ果ててまだ眠ってるんだ」
「……まさか、貴方が昨夜言っていたのは……!」
「あぁ、この家に元から女なんていない。俺が犯してたのはミリーだ」
俺みたいなやつをもう近づけないように、わざと襲ったことを伝えよう
こいつなら守ってやれるよな
それなりの立場も実力もあるのなら
「ったく、お前もあいつも案外ちょろいんだな。神子と王子が聞いて呆れる」
「なぜ私が王子だと?」
「神子と接点ある青髪なんてラディクスの王族くらいだろ?まぁいい、俺はここに用は無くなった」
その場から立ち去ろうとすると、王子に呼び止められた。振り返って顔を見てみると、静かに怒っているようだ。
「待て、一つ聞きたい。……同意の上での行為だったんだろうな?」
敬語が外れている
これが本性か?
それでもあいつを守ろうとしてのことなら……
「……同意…なぁ。」
俺はそれだけ言って笑った
「…貴様……、絶対に許さない。今ここで殺してやる」
「おっと、それは困るな」
ミリーに俺の死体なんか見せられるかよ
俺は振り返らず全力でその場から離れた
人を超える力を持った俺ならすぐに撒けるだろう
俺の体に埋め込まれた何かが組織までの方角を教えてくれる
ミリー…もう会うことは無いだろう
ありがとう、さようなら
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