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新しい生活
121話 自己嫌悪
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持っている魔力の全てを使って少しでも速く家に帰った
大慌てで家に入りドアを閉めた頃にはひどい息切れと眩暈があり、そのままドアに寄りかかって座り込んだ
もう立つことすらできない
呼吸も苦しい
魔力の使い方を間違えたらこうなることくらい、とっくに知ってたのに
「おい!どうしたミリー!」
「……でぃ………」
「おい、しっかりしろ!おい!…………!」
段々と何も聞こえなくなる
それでも、頬に触れるディンの手のひらの熱だけを確かに感じる
瞼を開けることさえ出来なくなり、気を失いかけたその時、ディンは口移しで魔力を僕に移した
「……ディン?」
「間に合った…!お前、本当に死ぬかと思っただろ…」
魔力の相性が良くないのだろう
体中でディンの魔力が暴れ、内側からチクチク刺されるような感覚がある
それでも確かに意識は保たれ、五感も正常に戻った
「ミリー、一体何があった?」
「……僕を、探してる人と会った。なんで…まだ……もう、来ないでよ………!」
僕はその場で蹲って泣いた
ここまで探されるだなんて思ってなかった
これじゃあ離れた意味が無い
もう迷惑をかけたくなかっただけなのに
僕のせいで誰かが傷ついてほしく無い
もう誰も傷つけたく無い
なのに………
ディンは力無く泣き崩れる僕をベッドまで運んだ
僕には抵抗する力も気力も意思も無かった
「ミリー、大丈夫。……俺が、何があっても守る。」
「だめ…、それじゃだめ。守らないで…。いやだ、怖い……」
自分の選択ひとつで、余計に誰かを犠牲にするかもしれない
そんな恐怖があった
もう何もしたく無い
誰も巻き込みたく無い
「僕が…いなければ……こんな事にならなかったのに………!」
「……そんなこと、言うな」
ディンはずっと僕を抱きしめていた
その体温が、今にも消えそうな僕を繋ぎ止めた
良いような、悪いような
そんなことを考える程度の余裕なんて無い
声が枯れるくらい、泣き疲れた
眼帯のガーゼは涙を含んで重くなり、絞らなくても涙が垂れる
それでも外すことは出来ない
これ以上何もしたく無い
ディンまで巻き込んでしまいそうだから
「ミリー、飲め。ただの白湯だけど飲まないよりはいいだろ」
僕はただ従う
考えることを放棄してしまった
「それと、眼帯のガーゼ取り替えるからな。…見られたく無いなら目を閉じてていい」
僕は目を閉じた
もう、このまま開かなくても良いのかもしれない
そんなことを考えても、僕の命が僕1人のものでは無いと思い出してしまう
ガーゼを取り替える前に僕は目を開いてしまった
ただ、瞼の裏の闇をこれ以上見たく無かった
その結果、青い瞳がディンに見られたとしても
「ミリー…その瞳……いや、なんでもない。そんなことあるはず無い」
ディンは何故かわかりやすく動揺した
……この違和感は何?
『そんなことあるはず無い』
ディンは一体、僕に何の不安な可能性を見た?
「なぁミリー、いったい何から逃げてるんだ?」
「……全部から。僕のせいで、大切な人を傷つけたく無いから…」
「だから自分がいなくなれば解決すると思ったのか?」
力無く頷いた
現実は違ったみたいだけど
アズは僕を探してた
たった一人で辺鄙な町にまで来ていたのなら、もしかしたら本当に僕を探すためだけにシソーラスまで来たのかもしれない
本当は僕もずっと会いたかった
アズに、エリーに、ジル、リージュ、他にもたくさん
それを我慢して離れたのに……
僕はまた、間違えたのかな
大慌てで家に入りドアを閉めた頃にはひどい息切れと眩暈があり、そのままドアに寄りかかって座り込んだ
もう立つことすらできない
呼吸も苦しい
魔力の使い方を間違えたらこうなることくらい、とっくに知ってたのに
「おい!どうしたミリー!」
「……でぃ………」
「おい、しっかりしろ!おい!…………!」
段々と何も聞こえなくなる
それでも、頬に触れるディンの手のひらの熱だけを確かに感じる
瞼を開けることさえ出来なくなり、気を失いかけたその時、ディンは口移しで魔力を僕に移した
「……ディン?」
「間に合った…!お前、本当に死ぬかと思っただろ…」
魔力の相性が良くないのだろう
体中でディンの魔力が暴れ、内側からチクチク刺されるような感覚がある
それでも確かに意識は保たれ、五感も正常に戻った
「ミリー、一体何があった?」
「……僕を、探してる人と会った。なんで…まだ……もう、来ないでよ………!」
僕はその場で蹲って泣いた
ここまで探されるだなんて思ってなかった
これじゃあ離れた意味が無い
もう迷惑をかけたくなかっただけなのに
僕のせいで誰かが傷ついてほしく無い
もう誰も傷つけたく無い
なのに………
ディンは力無く泣き崩れる僕をベッドまで運んだ
僕には抵抗する力も気力も意思も無かった
「ミリー、大丈夫。……俺が、何があっても守る。」
「だめ…、それじゃだめ。守らないで…。いやだ、怖い……」
自分の選択ひとつで、余計に誰かを犠牲にするかもしれない
そんな恐怖があった
もう何もしたく無い
誰も巻き込みたく無い
「僕が…いなければ……こんな事にならなかったのに………!」
「……そんなこと、言うな」
ディンはずっと僕を抱きしめていた
その体温が、今にも消えそうな僕を繋ぎ止めた
良いような、悪いような
そんなことを考える程度の余裕なんて無い
声が枯れるくらい、泣き疲れた
眼帯のガーゼは涙を含んで重くなり、絞らなくても涙が垂れる
それでも外すことは出来ない
これ以上何もしたく無い
ディンまで巻き込んでしまいそうだから
「ミリー、飲め。ただの白湯だけど飲まないよりはいいだろ」
僕はただ従う
考えることを放棄してしまった
「それと、眼帯のガーゼ取り替えるからな。…見られたく無いなら目を閉じてていい」
僕は目を閉じた
もう、このまま開かなくても良いのかもしれない
そんなことを考えても、僕の命が僕1人のものでは無いと思い出してしまう
ガーゼを取り替える前に僕は目を開いてしまった
ただ、瞼の裏の闇をこれ以上見たく無かった
その結果、青い瞳がディンに見られたとしても
「ミリー…その瞳……いや、なんでもない。そんなことあるはず無い」
ディンは何故かわかりやすく動揺した
……この違和感は何?
『そんなことあるはず無い』
ディンは一体、僕に何の不安な可能性を見た?
「なぁミリー、いったい何から逃げてるんだ?」
「……全部から。僕のせいで、大切な人を傷つけたく無いから…」
「だから自分がいなくなれば解決すると思ったのか?」
力無く頷いた
現実は違ったみたいだけど
アズは僕を探してた
たった一人で辺鄙な町にまで来ていたのなら、もしかしたら本当に僕を探すためだけにシソーラスまで来たのかもしれない
本当は僕もずっと会いたかった
アズに、エリーに、ジル、リージュ、他にもたくさん
それを我慢して離れたのに……
僕はまた、間違えたのかな
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