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新しい生活

118話 訳ありな目

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僕とディンは2人とも体に力が入らず、結局は起き上がってもその場から動けずに話していた

「で、ミリー。お前が似たようなってどういうことだ」

僕が咄嗟に言ったこと
だけどそれは嘘じゃ無い

「僕の聞いた話だと、赤い瞳を持つ人は魔法薬で体を改造された上で、人の殺し方を教育されたって。まずそれは合ってる?」
「あぁ、ざっくりだとそうだな」
「……なら、それだけなら僕も同じ。僕は小さい頃から暗殺者として育てられたから」

これは本当のこと
6歳から10年間、ずっとそう育てられたと言っても過言じゃ無い
ずっと、たった1人を殺すために育てられていた
ハルを殺すためだけに

「暗殺者、か」
「今は自由の身になってるから暗殺なんてしないけどね」

いや、暗殺自体は結局してない
堂々と殺したことはあるけど

「なるほどな、それなら赤い目に詳しくてもおかしくは無い」
「まぁ、裏社会のことは嫌でも教わるから。僕は直接体を作り変えられたわけじゃ無いけど、普通の人とは違った」

嘘は無い
僕は体を変えられたわけじゃなくて、生まれた時から普通じゃ無かった
ディンには嘘をつきたく無い
かと言って本当のことは言えない

「…隠してる目のことか?普通とは違うってのは」
「いや、これは生まれつきじゃ無い。普通じゃないのは能力の方だよ。僕は確かに人間の力を超えてる」

……妖精を殺すために
本音を言うなら、もう誰も殺したくは無い
でも既に手遅れだろう
僕の意思に関係無く、やらなければいけない時は殺す
そう、体が覚えてしまった
まさか僕がこんな人間になるだなんて思いもしなかったな


「そうか。そんなひょろひょろで動けるかどうか気になるが、そういえばお前は一人で俺を運んだんだったな」
「ひょろひょろ……人が気にしてることを……」
「おっと、悪いな」

そんなに……?
って思うけど、そんなにだった
今は半裸だから余計に見てわかる

「……って、いつまでこの体制でこの格好?」
「あっ、そうだったな……。っていうか、なんで半裸なんだ?」
「体拭いてたんだよ」

ようやくディンが退いて服が着れた
まだ痛む首が、本当に死んでいたかもしれない危険を物語っている
常に帯刀しておいた方がいいだろうか
……正直、ディンがそんなに危険に見えない
ディンが知られたく無いことを知らなければ、殺されるようなこともない
帯刀はしなくても警戒はした方がいいかもしれない
せめて、グドがいない間だけでも


「そういえば、だいぶ体が楽になってるな」
「そう?なら良かった。薬もあるから食前に必ず飲むこと。わかった?」
「あぁ、何から何まで悪いな」

ディンは謝ってばっかりだな
謝られるとこっちもなんだか申し訳なくなる

「ディン、そういう時は謝るよりも感謝して欲しいかな」
「……ありがとう、ミリー」
「どういたしまして」

なんだろう、なんだか友達ができたみたい
お互いに訳ありだけど、それでも少しずつ打ち解けられているように感じる
ディンは仕事があるから傷が治るまでしか居れないけど、それでも仲良くできそうだ
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