【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

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新しい生活

114話 変わった1日

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ディンを休ませてる間に夕食の準備をした
本当なら既に食べ終えてる頃だけど、ハプニングがあったから仕方ない

この世界に米はあるけど高価だ
滅多に食べられない
ディンはお粥の方がいいかと思ったけど用意できない
町で買ったジャガイモと牛乳でポタージュを作った
今日の夕飯はパンとジャガイモのポタージュ
僕とグドの分にはベーコン代わりに加工肉を入れて、ディンの分には小さく千切ったパンを入れた
予備として食器やカトラリーを多めに持っていて良かった
……とは言え、椅子やベッドに予備なんて無い
先にディンとグドが食べてから僕も食べることにしよう

「えー、ならミリーが俺の膝座ったら?」
「グド、流石にそれは食べづらい」
「ん……?そう言う問題か?」

確かに…
食べづらい以前の問題だ
ずっと2人でいたからディンの正論で正気に戻る
それにしてもグドから『ミリー』って呼ばれるのは慣れない
滅多に呼ばれないし

結局、僕とディンが先に食べることになった
僕が先に食べて、洗い物をしてる間にグドが食べる
その方が効率がいいってグドに言われた
いつもは談笑しながら食べてたから気付かなかったけど、グドは食べるスピードが思ってる以上に速かった
いつも僕に合わせてくれてたんだ


食べ終わって片付けも終わった頃にはディンの服は乾いてた
明日にでも着替えを買ってこようとサイズを確認してからディンに返した

「寝床だけどさ、ディンは俺のベッドを使えばいーよ」
「いや、流石にそこまでして貰っては申し訳ない。俺は椅子で十分……」
「いいから、治すことが最優先!俺は全然眠くならないし問題無いよな」

確かにグドは睡眠を必要としない
…というか、本来なら妖精に三大欲求は無いらしい
グドがその全部をするのはただの娯楽
本人にとって、楽しみの一つが無くなるだけだ

グドがボソッと「早く治して2人の時間を返してくれ」って言ってたけど、まぁそんなとこだろうなとは思った

ディンは簡単にグドに押された
ベッドに入るとすぐに眠ってた
やっぱり弱ってたんだ

僕もベッドに入ると、グドは僕のベッドの端に座った
流石に大人2人もこのベッドに入ったら狭すぎる
一緒に寝ることが選択肢にないのは残念だけど、僕は人間
睡眠欲には逆らえない
グドは僕が眠りにつくまでずっと頭を撫でていた

えっと、明日はディンの服と食糧の調達に町に行って、狩はしなくても貯蔵はある
だから洗濯と掃除だけして、ご飯は……………





ーーーーーーーーーー




カメリアは本当に優しいなぁ
こんな怪しいやつを簡単に助けちゃって、人を疑うことを全然知らない
……ちょっと悪いけど、カメリアには深く眠っていてもらおう


「起きてるだろ?ディン」
「ん?あぁ…、少し眠っていたがな」

こっちもこっちで俺たちに対する警戒心がほとんど無い
弱ってるなら尚更他人を警戒するだろうに

「本当に俺がベッドを使っていいのか?」
「いーよ。あんまここに人を置いておきたくないからな」
「なるほど、それなら回復に専念しよう。ところで…2人とも目を隠してるようだが、何があったのか聞いていいだろうか」

まぁ、気になるよなぁ…
カメリアが片目に巻いた包帯は寝る直前に外してる
特に傷を隠すためでないことは見てわかるから言い訳に使えない

「…答えることは出来ない。ただ何も言えない訳じゃない。俺たちが隠してる目は危険なものだ。最悪、命を狙われかねないし奴隷にされてもおかしくはない」

これは嘘じゃない
青い瞳はそれだけの価値があるものだ
この国はラディクスより青い瞳の価値を知る人間が多い
それだけシソーラスは『瞳』を重要視している
ま、命を狙われてもやり返せるし、捕まるほど弱くもないけどな

「そうか、悪いことを聞いたな」
「そうだな、もう何も聞くなよ。それともう一つ……」

……そう、この国は『瞳』を重要視している
それは青い瞳だけじゃない
ディン…こいつの瞳が一瞬だけ赤く見える時があった
普通の人間とは違うものを感じるし、用心するに越したことはない

「こいつに何かしてみろ、その時は…俺がお前を殺す。いいな?」
「っ!」

……どの国の人間も知らない
神に近い存在しか知らない瞳
緑の瞳が青い瞳の上位互換だって、妖精しか知らない
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