【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

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役目を終えて

108話 変わった弟 (エリー)

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父親へ罰を下す時にミリーに追い出されてしまった
何を考えているのかわかるようでわからなくって、少し離れた物陰からこっそりと見ていた

正直、少しだけだけど怖かった

離れたところまでくる血の匂い
大の大人とは思えない程の悲痛な叫び声
取り憑かれたかのように痛めつける弟


行動そのものが怖かった訳じゃ無い
ただ、少し前まで「私が守らないと」って思ってたミリーがいつの間にか知らないところで変化していた
その変化が怖かった

もう私がいなくても大丈夫なくらい強くなったんだ
なんてポジティブに考えられなかった
何がミリーを変えたのか
その対象はわかっても、実際に何があったのかはわからない
ミリーは詳細を明かしてはくれない
きっと私に心配かけたくないなんて思ってのことだろう
今わかることは、ミリーはもう前世の弟で無くなってしまったこと
それでも大切な弟であること自体は変わらない
だから、もっと私も力になりたいのに……


父親が死んだ後、私はミリーに見つからないようにそっと部屋に戻った


ミリーがしたことは半日足らずで噂になった
怯える人、称える人、心配する人、色んな人がいる
それでもやっぱり、『無情』だという声が多かった
残酷で無慈悲で無情で非道
もはやミリーを人ではなく恐れの対象、化け物のように思う人さえもいた

こんなこと聞いて、ミリーはどう思うだろう
傷つくことに慣れ、この噂程度と言うだろうか



じっとしていられなくなった私は、ジルを誘いミリーの部屋に行った
だけど、そこにミリーの姿は無い
グドがそばに居るはずだとジルに探してもらった
でも、ジルが「グドが城の外にいる」って言うから、ミリーの場所は自力で探すしか無い






おかしい
城中を探し回ったけど見つからない
人に聞いても見てないとしか返ってこないし、アスフォデルに協力してもらっても見つからない
もう、外は真っ暗なのに
ジルにもう一度グドを探してもらった
そしてようやく事態は最悪なことに気がついた

「ユグドはまだ外にいるみたいです。ただ…先程よりも遠くに、今も離れて………」
「ジル、どうした?」
「ユグドのそばに小さくもう一つのユグドの気配があります。まさか……!」

まさか、ミリーの左目?
元々それがグドのものならジルが感じ取れてもおかしくはない
ミリーは今、外にいるってこと?
なんで…それも遠くに………

いや、考えすぎてもダメだろう
たまには外の空気が吸いたくなってもおかしくないし、なんせあの後だ
気分転換の為だろう
そばにグドもいるなら大丈夫だ

もしかしたら部屋に置き手紙でもあったかもしれない
そう思った私はもう一度ミリーの部屋に入った
置き手紙は無かったけど、ミリーの荷物は知る限りでは動いてない事がわかった
何も持っていかなかったなら家出とかじゃ無いよね


なんて簡単に考えていたのが間違いだった
ミリーはいつまで経っても帰ってこない
流石におかしいと思い捜索を始めた
アズやリージュの力を借りても見つからない

結局ジルでさえ見失い、ミリーが消えてから一年が経ってしまった
アズとミリーの契約が消えていないこと
あの子が生きてることはそれでしかわからなかった
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